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保育園の先生

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第六章


第六章

 それでどう言っていいかわからずだ。こう言うしかなかった。
「それならですけれど」
「それなら?」
「待ってくれます?」
 顔を正面にやっての言葉だ。
「ここは」
「待って欲しいのね」
「はい」
 先生に対して告げた。
「少しだけでいいですから」
「それからなのね」
「結婚するかどうか」
 十四だ。だがそれでも真剣に考えて述べた。
「決めさせて下さい」
「いいわよ。それじゃあね」
「必ず返事しますから」
「ええ、じゃあ次に会うその時にね」
「御答えします」
 今はこう言うことしかできなかった。しかしである。
 彼はそれから友人や両親にあれこれと相談した。まず友人達はこう言うのだった。
「また随分な話だな」
「いきなり結婚か」
「交際からか」
「こんなのはじめてだよ」
 彼は戸惑いながら友人達に話した。
「俺は十四で先生は二十一でな」
「七歳上な」
「ちょっとばかり離れてるよな」
「俺が十八になったら先生は二十五か」
 その時の年齢も話す。
「どうなんだろうな」
「年齢差もだけれどな」
「結婚まで言うか」
「何か凄いな」
「どうすればいいんだ?」 
 彼は腕を組んで言った。
「結婚してくれっていうのはな」
「どうなんだろうな」
「そうだよな」
 友人達はだ。ここまで話を聞いても戸惑うばかりだった。
 それでだ。結果として彼等はどう答えていいのかわからなかった。彼に対してこれといったアドバイスをすることはできなかった。
「まあここはな」
「考えたらどうだ?」
「なあ」
 こんな返答だった。
「御前結婚したいか?」
「それはどうなんだ?」
「そりゃ将来はな」
 淳博にしてもこう答えるしかできなかった。
「けれどその将来ってな」
「遠い未来だよな」
「そうだよな」
「ずっと先だよな」
「ああ、先だよ」
 実際そうだと答えた。
「そんなのな。先って考えてたよ」
「それじゃあ交際止めるか?」
「別の相手と」
「けれどそれもな」
 こう言われてもだった。彼も返答に窮した。
 それでだ。彼は言葉を選びながら述べた。十四という若さだがそれでもだ。
「そうだな」
「どうするんだ?」
「それで」
「じっくり考えるよ」
 これが今の彼の返答だった。
「ちょっとな」
「じっくりか」
「考えるっていうのか」
「ああ、今はな」
 こう言うしかできなかった。
「そうとしか言えないし考えられないしな」
「けれど次に会う時にだろ?」
「返答するんだろ?」
 だが友人達はこのことを指摘してきた。
「その時に」
「そうなんだろ?」
「ああ」
 その通りだと。淳博は頷いて答えた。
「そうなんだよな」
「じゃあどうするんだよ」
「もうすぐだろ?」
 友人達の言葉はかなり身が入っているものになっていた。
 
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