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保育園の先生

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第三章


第三章

「交際、ですか」
「はい、御願いします」
 こう彼女に言うのだった、
「僕でよかったら」
「貴方とですか」
「是非。御願いします」
 彼にとっては断わられることは頭の中になかった。まさに闘牛の牛の如く突き進む。やはりこれも若さ故のものであった。
 しかしそれがだ。この時は功を奏した。先生はにこりと笑った。そうして。
「はい」
「いいんですか」
「私でよかったら」
 これが先生の返答だった。
「こちらこそ御願いします」
「そうですか」
「驚いていますけれど」
 ここでは苦笑いになる先生だった。
「それでも」
「それでも。いいんですね」
「だって。私のこと好きなんですよね」
「はい」
 淳博は焦ったような顔で頷いた。
「その通りです」
「それならです」
 また笑顔で話す先生だった。
「宜しく御願いします」
「よかった・・・・・・」
 酷薄が受け入れられてだ。淳博は思わずこう言った。
「感無量です」
「そんな、大袈裟ですよ」
「いえ、本当に」
 泣きそうな顔になって言葉を返す。
「僕、死んでもいいです」
「そこまで、ですか」
「はい、そこまでです」
 淳博は言った。
「本当に嬉しくて」
「それじゃあですね」
 そんな淳博に対してだ。先生は落ち着いたものだった。この辺りに年上の女の人の余裕があった。その余裕のまま彼に話す。
「まずはですね」
「はい、まずは」
「携帯のアドレス教えてくれますか?」
 まずはそこからだった。
「それとメールも」
「それですか」
「はい、それで連絡を取り合いましょう」
 穏やかな笑顔での言葉だった。
「いいですか、それで」
「あっ、はい」
 ここで現実に戻った彼だった。
「そうですね。それじゃあ」
「まずはそれからですから」
 連絡を取れるようにならないとどうしようもない。そういうことだった。
 こうして二人はお互いの携帯のアドレスとメールアドレスを交換し合った二人の交際はここからはじまりまずは穏やかなスタートであった。
 少なくとも先生はそうだった。だが淳博は。
「やったやった」
「まだ喜んでるのかよ」
「あれから三日だっていうのによ」
「そんなに嬉しいのかね」
「ああ、嬉しいよ」
 実際にそうだというのだった。クラスで友人達に対してはしゃいでいた。
「彼女ができたんだぜ」
「彼女なら俺もいるぜ」
「俺もな」
「俺もだ」
 周りの言葉はクールなものだった。
「同じじゃないのか?」
「そうだよな」
「彼女がいるからな」
「それでも違うんだよ」
 彼はあくまでこう主張するのだった。
「それがな」
「何処がどう違うんだよ」
「俺達とどう違うんだよ」
「そこんところはどうなんだよ」
「凄い美人さんなんだよ」
 ここが違うというのだった。
「もうな。奇麗で可愛くて胸も大きくて小柄で髪の色も長さもヘアスタイルもさ」
「つまり全部こいつのツボにはまってるのか」
「そういうことだな」
 周りは彼ののろけからそれを悟った。
「しかしここまでいくか」
「もう完全にお熱だな」
「体温計りたいな」
「あんないい人いないぜ」
 周りの言葉をよそにのろけ続けている。
 
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