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保育園の先生

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第二章


第二章

「そうだったんだな」
「そうか?」
「だって相手完全に年上だぞ」
 彼等は中学二年である。それに対して保育園の先生となれば誰がどう考えても年上である。このことは最早絶対のことですらあった。
「それでか」
「幾つ位年上かな」
「俺達が十四だろ」
 中二としての年齢である。
「それで向こうは最低短大、それか大学出てるからな」
「二十一、それか二十三」
「もっと上かもな」
「かなり年上か」
「それでもいいのかよ」
 少し真剣な顔で彼に問うのだった。
「七か十離れていてもな」
「奇麗だよな」
 これが彼の返答だった。
「それでも」
「ああ、奇麗だよな」
「そりゃ歳の差は気になるさ」
 それはだというのだった。
「けれどそれでもな」
「気になるか」
「ちょっと行って来る」
 しかも急にであった。彼はこんなことまで言い出してきたのだった。
「ちょっとな」
「行って来るってまさか」
「あの人と話してくる」
 まさに思い立ったら、であった。彼は止まることはなかった。
「それじゃあな」
「本気かよ」
 友人はそんな彼の横顔を見て呆れた顔になっていた。
「本気で今から行くのかよ」
「あんな奇麗な人いないだろ」
 こうした時に多くの人間が言う言葉だ。
「だからな」
「やれやれ、何か凄い展開になってきたな」
「それじゃあ行って来る」
 もう淳博は止まらなかった。そうしてだった。
 保育園の中に入ってだ。彼は校庭の方に向かった。
 丁度先生達は整地を終えて校舎に戻ろうとしているところだった。そこでだ。
「あの」
 彼はその先生の前に来た。近くで見るとそれ程大きくはなかった。背は大体一五五程度だった。一七〇ある淳博と比べて小さかった。
 しかし胸は大きい。シャツの上からはっきりと浮き出ている。だが彼は今はそれをあまり見ずにそのうえで彼女と正対して言ったのだった。
「いいですか」
「ふえ?」
 これがその先生の言葉だった。
「私ですか?」
「はい、貴女です」
 何処か固まっている言葉だった。
「いいですか」
「何でしょうか」
 周りにいる他の先生達は目に入っていなかった。今はその先生だけだった。
「あの、御名前は」
「和久井清里愛です」
 彼女は彼に問われるまま名乗った。
「この保育園で先生をしています」
「和久井先生ですね」
「はい」
 彼の問いにまた問われるまま答えた。
「それが何か」
「僕は大広淳博といいます」
「大広さん?」
「はい、よかったら」
 最早勢いだった。若さ故の蛮勇と言ってもいい。
「僕と交際して下さい」
「ふえ!?」
 先生はまたこの言葉を出してきた。
 
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