FAIRY TAIL 友と恋の奇跡
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第188話 KOGUREとNANAYO
前書き
紺碧の海だZ!
今回は妖精VS銀河の戦い決着の時!そして、コグレとナナヨの意外な正体が明らかになるっ!?果たして、勝利の女神が微笑むのはいったいどっちだ―――――!?
ナレーション風に書いていきます。
それでは、第188話・・・スタート!
コ「さぁて、そろそろ始めるとするか。」
ナナ「天空と大地の、地獄の戦闘舞台芸能を―――――。」
妖精と銀河の間に緊張が走る。ナツの頬を冷や汗が伝い、リョウの喉がゴクリと鳴る。
すると、コグレが右手を、ナナヨが左手をスゥと動かし、2人同時に指をパチン!と鳴らした。すると、ナツとリョウを取り囲むように空中に無数の空気と土の球体が現れた。
コ「極悪なる空気の球体破裂ッ!」
ナナ「極悪なる大地の球体破裂ッ!」
コグレとナナヨが叫んだのと同時に、無数の空気と大地の球体が一斉に音を立てて破裂した。
ナ「ぐぁあっ!」
リョ「うぉあっ!」
ナツとリョウは顔の前で両手をクロスさせ、損害を最小限に抑えたが、球体の数が多い為、頬や腕、足などに切り傷を負った。
ナ「火竜の・・・鉄拳ッ!!」
右手に炎を纏ったナツがすぐさまコグレに攻撃を仕掛けるが、
コ「極悪なる空気の鉄壁ッ!」
鉄のように硬い空気の壁でナツの攻撃を防いだ。
ナナ「極悪なる大地の金剛腕ッ!」
ナ「うがっ!」
ナツがコグレに攻撃を仕掛けている隙に、ナナヨがナツの背後に周り込み、その無防備な背中に金剛石のように硬い土に覆われた腕で思いっきり殴る。
そのナナヨの背後に、3本の聖剣を持ったリョウが周り込むと、
リョ「3剣流・・・銀天嵐切ッ!!」
3本の聖剣を思いっきり振り下ろした。が、右手を横に広げながらナナヨが振向き、剣先が直撃する直前、
ナナ「極悪なる大地の金剛壁ッ!」
リョ「チッ。」
ナナヨの横に広げた右手の動きに添って、会場の地面が形を崩し、金剛石のように硬い壁でリョウの攻撃から身を守った。
リョウは小さく舌打ちをした後、コグレとナナヨから距離を取り、右手の親指と人差し指の間に『銀覇剣』を挟んで持ち、口に銜えていた『嵐真剣』を右手の人差し指と中指の間に挟んで持ち、左手の親指と人差し指の間に『天力剣』を挟んで持った。
そして、4本目の聖剣、幸福の花のギルドマスター・アカネから受け取り、ユリの形見である『花錦剣』を鞘から抜き取り、左手の人差し指と中指の間に挟んで持った。
リョ「な、何とっ!聖十のリョウ、4本目の聖剣を鞘から抜いたーーーーーっ!」
実況席から身を乗り出し、チャパティ・ローラが叫ぶ。
メ「抜きましたね。」
マカ「抜きましたのぉ~。」
妖精の尻尾の応援席でメイビスとマカロフが呟いた。
フ「マジかよっ!?」
ショ「4本目、か・・・あのリョウでも、聖剣3本だけじゃ勝てないって判断したんだろうな・・・・」
ル「・・・リョウ。」
フレイが驚嘆の声を上げ、ショールが苦々しく呟き、ルーシィはゆっくりと目を閉じ、胸の前で両手を祈るように組み、心底心配そうに“リョウ”の名を小さく呟いた。
リョ「(・・・悔しいけど、聖剣3本だけじゃ、コグレとナナヨには勝てねぇ。今回初めて使うし、上手く使いこなせねぇかもしれねぇけど・・・やるしかねぇんだ!)」
4本の聖剣を構える。
リョ「(力を貸してくれ、フラワー!ユリ!)」
小さく地を蹴り駆け出した。
コ「聖剣の数を増やしたくらいで、俺とナナヨは倒せねぇぜっ!」
向かい打つように、コグレとナナヨも同時に小さく地を蹴り駆け出した。
駆け出しながらコグレとナナヨは両手に空気と土の渦を纏うと、
コ「極悪なる空気の夜想曲ッ!」
ナナ「極悪なる大地の前奏曲ッ!」
2人同時に空気と大地の竜巻を起こす。2つの竜巻は蛇行しながらリョウ目掛けて飛んでいく。が、リョウは2人の攻撃に一切怯む事無く、茶色がかった吊り目を更に吊り上げ、視界に2つの竜巻の動きを捉え、脳内に竜巻の動きのタイミングを見計らうと、
リョ「ふん!」
ステップを踏むような軽い動きでコグレとナナヨの攻撃をかわした。
コ「なっ・・・!?」
ナナ「かわしたぁっ!?」
コグレとナナヨは駆け出すのを止め、その場で立ち止まり戸惑い始める。リョウはそんな2人も視界に捉えると、
リョ「4剣流・・・」
右手に『銀覇剣』と『嵐真剣』、左手に『天力剣』と『花錦剣』を持った両手を横に大きく広げると、
リョ「百合一閃ッ!!!」
横に大きく広げた両手をクロスさせるように動かす。4本の聖剣の剣先の動きに添って、4本の眩い淡い白い閃光が輝き、コグレとナナヨを斬りつけたのと同時に、4本の閃光が白い百合の花の花弁になって舞い散った。
斬りつけられたコグレとナナヨの体は宙高く飛び上がる。
リョ「ナツゥ!」
ナ「おう!」
それを待っていたかのように、ナツが助走をつけて、コグレとナナヨの頭上まで跳躍した。コグレは青と赤黒い瞳、ナナヨはオレンジと赤黒い瞳を見開いた。ナツはニィッと口角を上げてほんの一瞬だけ笑うと、
ナ「滅竜奥義・・・」
握り締めた拳に紅蓮の炎を纏い、拳をコグレとナナヨに向かって勢いよく振り下ろす。その姿は竜そのもの―――――。
ナ「紅蓮爆炎刃ッ!!!」
炎を纏った拳でコグレとナナヨを思いっきり殴りつける。コグレとナナヨの体は空中から会場の地面へと真っ逆さまに落ちていき、ドガガガガガァァァン!と凄まじい音を立てて会場の床を貫いた。
ハ「うわーーーっ!」
シャ「なっ・・なっ・・なっ・・・!」
ユ「か・・会場の、床が・・・!」
ウェ「ほ・・崩壊・・・」
マ「・・す、すごい・・・!」
コグレとナナヨの体は瓦礫と共に会場の地下へと落ちてゆく。ナツとリョウも追いかけるように会場の地下へと飛び降りた。
ヤ「スさまズィ威力だったねぇ。」
ラ「何たる大騒動!ありがとうございます!」
チャ「し・・試合は続行されます!会場の皆さんは、映像魔水晶にてお楽しみ下さい。」
チャパティ・ローラの実況と共に、誰もいなくなった会場の上空に6つの映像魔水晶の地下の映像が映し出された。
コグレとナナヨを追いかけて地下へと飛び降りたナツとリョウは無事着地。地下は薄暗く、射し込む光は崩壊した会場からの太陽の光だけ。
リョ「ぅ・・くっ・・・!」
ナ「!」
突然隣で苦しそうに腹部を押さえて呻き声を出すリョウを見てナツは目を見開いた。
肩膝を着いているリョウが着ている緑色の着物の腹部辺りと、腹部を押さえているリョウの右手が真っ赤に染まっていたからだ。
ナ「お・・お前!まさか・・・傷口が開い―――――むぐっ!」
「開いちまった」と言おうとしたナツの口をリョウが血で汚れていない左手で塞ぐ。
リョ「先に言っとくが・・・俺はこのまま、戦う!」
自分の口を塞いでいるリョウの左手を剥ぎ取り、一度深呼吸をすると、
ナ「な、何言ってんだよっ!?戦って、これ以上傷口が開いたら、お前―――――・・・」
リョ「・・・・・」
ナツはそれ以上何も言わなかったが、ナツが何を言おうとしていたのか理解出来ていたリョウも何も言わず、ただ唇を噛み締めるだけだった。
ナ「と、とにかく!お前は絶対、これ以上戦うなっ!ここで大人しく休ん―――――」
コ「なる・・ほど、な・・・」
ナ&リョ「!」
「休んでろ」と言おうとしたナツを遮ったのはリョウではない。声がした方に視線を移すと、傷だらけでよろよろと立ち上がるコグレとナナヨがいた。2人とも顔を伏せており、表情がよく分からない。
ナナ「リョウ・・ジェノロは・・・怪我を、している・・・・そこを、徹底的に、狙えば・・・リョウ・・ジェノロを・・・倒せるっ!」
ナ&リョ「!!?」
顔を上げたコグレとナナヨを見て、ナツとリョウは目を見開き、言葉を失い息を呑んだ。
そこにいるのは間違いなくコグレとナナヨだった。が、2人は傷だらけなのに一切血を流していなかった。頭からも腕からも、頬からも、足からも・・・一滴たりとも、流していなかったのだ。代わりに傷口から流れていたのは―――――、
―――――刺激臭のする機械油。
それだけじゃない。
よく見ると、コグレとナナヨの傷口から皮膚みたいな色合いをした破けた樹皮、銅線、カラーケーブルの端がちらりと傷口から覗いていた。
チャ「な・・ななな・・・何だあれはーーーーーっ!?コグレ選手とナナヨ選手の体から、妙な物が出ているーーーーーっ!!?」
チャパティ・ローラは目を丸くして実況をする。
エ「な・・何なんだ、あれは・・・?」
グ「気味悪ィな。」
ト「ど・・どう見ても考えても、可笑しすぎますよ・・・」
人間の体内には絶対に存在しない物が、コグレとナナヨの体内にはある。
この事から連想出来る事は、ただ1つ―――――。
ナ「お、お前等は・・・人間じゃない、のか・・・・?」
人間じゃないコグレとナナヨから目を離す事無く、ナツは瞬き一つせず小さく呟いた。
コグレは口、ナナヨは頬から流れている機械油を手の甲で拭いながら、赤黒く染まった両目でナツとリョウを見つめ、口を三日月のような形にして不気味に微笑んだ。
キ「コグレさんとナナヨさんは、銀河の旋律のギルドマスター・シルファさんが造った“究極の魔道士アンドロイド”、KOGUREとNANAYO。」
カ「シルファさんは、恨みがある妖精の尻尾の最強チームの方達に復讐をする為、手始めにKOGUREとNANAYOを造り上げた。そして、シルファさんは天才的な頭脳を誇る発明家。」
レ「でも、“シルファ”は偽名で、本名は―――――、ジョニー・メカ。」
カ「ジョニー・メカは妖精の尻尾の最強チームの方達に復讐する為に、銀河の旋律のギルドマスターと成りすまして、復讐の時を窺っていた。」
キ「俺達銀河の旋律の魔道士は、ジョニー・メカの言いなりになってただけなんだ。確かに、実力も妖精の尻尾と並ぶけど・・・でも!「妖精の尻尾を潰したい」という感情は誰一人として持っていない!これも全て・・・ジョニー・メカの仕業なんだっ!」
まだ驚きを隠す事が出来ないナツとリョウはその場に呆然と立ち尽くしている事しか出来なかった。
コ「その通り。俺とナナヨは人間じゃねぇ。天才的な頭脳を誇る発明家、ジョニー・メカ様によって造られた“究極の魔道士アンドロイド”さ。」
口から機械油を流しながらコグレが言う。
ナ「ジョニー・メカ・・・あれ?どっかで聞いた事があるようなないような・・・?」
ナツは首を傾げ、頭を掻きながら記憶を手繰り寄せるが思い出せないようだ。
リョ「闇ギルド、科学の世界のギルドマスターだ。お前が戦った相手だろ?何で覚えてねぇんだよ。」
ナ「おぉそうだっ!アイツ、マヤの魔力を奪おうとしたんだ。だぁーーーーーっ!あのぐるぐる眼鏡野朗!思い出しただけでめちゃくちゃ腹が立ってきたーーーーーっ!!」
リョウの言葉でようやく思い出したナツは、マヤの魔力を奪おうとして卑怯な手ばかり使ったジョニー・メカの顔を思い出して口から炎を出しながら怒鳴る。
リョ「落ち着けよナツ。で、お前等2人はジョニー・メカに造られた“究極の魔道士アンドロイド”って訳か。恐らく理由は、あん時の復讐の為だな。」
リョウは腹部の傷口を押さえながら立ち上がる。
ナナ「その通り。そこまで分かっているなら話は早いわ。復讐の内容は、『妖精の尻尾の最強チームの人間を殺す』。だから、まずはあなたから殺してあげるわっ!」
コ「おらァッ!」
リョ「ぐぁあっ!」
ナ「リョウ!」
コグレの飛び蹴りがリョウの傷口に直撃し、リョウは口から血を吐き出す。
ナナ「極悪なる大地の大剣ッ!」
リョ「ああああああっ!」
ナナヨの手に巨大な土の剣が握られ土の剣を振り下ろされリョウの左肩から血が噴出す。
ナ「おいぃ!何でリョウばっか狙うんだよっ!?俺も最強チームの1人だっ!」
ナツは拳に炎を纏いナナヨに殴り掛かるが、横から入って来たコグレに空気を纏った両手で受け止められ邪魔される。
コ「コイツはすでに怪我を負っててボロボロだ。先に片付けておいた方が楽なんだよ。」
ナ「てめェ等ァッ!!」
ナツの堪忍袋の緒が切れ、足に炎を纏いコグレの鳩尾に蹴りを食らわせようとするが、
コ「極悪なる空気の領域ッ!」
ナ「うぎゃっ!」
ドーム型をした見えない空気の領域に囲まれ閉じ込められる。
ナ「いてて・・・こんなモン、ぶっ壊してやるっ!」
そう言いながら右手に炎を纏う。が、ふしゅぅと音を立てて炎が消えた。
ナ「なっ!?」
コ「領域の中では魔法は使えねぇよ。だから、リョウ・ジェノロが死ぬまで、お前はそこから出る事は出来ねぇんだよ!」
ナナ「極悪なる大地の金剛爪ッ!」
リョ「ぐぉああぁあぁぁあああっ!」
ナツが身動き出来ない中、ナナヨは金剛石のように硬い土の爪でリョウの体に傷を刻む。
コ「極悪なる空気の砲撃ッ!」
ナナヨに続くようにコグレも、空気の渦で出来た大砲を構え、巨大な空気の砲弾を撃つ。
傷だらけで血を流し、足元がふらついているリョウは受け止める事はもちろん、かわす事も、聖剣で砲弾を刻む事も出来ず、
リョ「うぐぁぁあああぁぁあぁあああああっ!」
まともに食らう事しか出来ないのだ。地下の柱を5~6本破壊しながら傷だらけの体には傷が刻まれ血を流し、遠くまで吹っ飛ぶ。
コ「羽をもがれた妖精の辿り着く場所は、暗黒に包まれし地獄の世界だっ!」
コグレは笑い叫びながらナツにそう言い残すと、ナナヨと共に遠くまで吹っ飛ばされたリョウを追いかけて行ってしまった。
ナ「くっそォ・・・!」
ナツはただ、身動きが取れない場所で眺める事しか出来ないでいた。
映像魔水晶で試合の様子を見ている観客の間では、もう歓喜も興奮も冷めていた。
映像に映るのは傷だらけで血を流し、荒く呼吸をしている、ボロボロになってしまった醜い妖精の姿―――――。
ル「もう止めてぇっ!リョウが・・・リョウが、死んじゃう・・・・・」
茶色い瞳から大粒の涙を流しながら、ルーシィは地下に向かって叫ぶ。
マ「こらァナツ!そんな所で何やってるのっ!?早くそこから出て、コグレとナナヨを倒してよっ!じゃないと、リョウが死んじゃうじゃん!」
医務室のベッドから起き上がり、夕日色の髪の毛を揺らしながらマヤが映像に向かって叫ぶ。
グ「情けねぇな。お前等2人がそう簡単にへし折れてどうすんだよっ!」
ウェ「まだ終わってません!最後の最後まで、戦って下さい!」
エ「ナツ!リョウ!お前達は、仲間の期待を裏切るつもりかっ!」
フ「アンドロイドなんかに負けんじゃねーよっ!」
ト「リョウさん!意識をしっかり、聖剣を構えて下さい!」
ハ「ナツー!炎が空気になんか負けたらダメだよーーーっ!」
シャ「もしも私達仲間の声が聞こえてたら、きちんとそれに応えなさいよっ!」
ユ「お願い!!ナツ!リョウ!」
ショ「皆見てるっ!仲間が・・・見守っている!」
思い思いの言葉を紡ぎ、妖精の尻尾の現ギルドマスター・マカロフが手を動かした。それを見た仲間達も一斉に手を動かした。
右手の親指と人差し指だけを立て、人差し指を天に指す―――――。
まるで、それぞれの想いをナツとリョウに届けるように―――――。
リョ「ハァ・・・ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・ハァ・・・・」
瓦礫に背中を預け、荒く呼吸をしながらリョウは意識を保つ。
コ「しぶてぇ命だな。あんだけ魔法を食らったら、普通はもう死んでるはずなのに・・・」
ナナ「だんだん、私達の魔力も少なくなってきてるから、そろそろ死んでくれればありがたいんだけどね。」
コグレとナナヨも魔力をかなり消耗したのか、肩で大きく息をしている。
リョ「・・・・・・か・・・」
ナナ「え?よく聞こえなかったわ。」
コ「別に良いじゃねぇか。もうすぐ死ぬ人間の言葉をわざわざ聞かな―――――」
リョ「殺せるのか?って聞いたんだ・・・ハァ、ハァ・・ハァ。」
コ&ナナ「!!?」
今度はハッキリと聞こえたリョウの声にコグレとナナヨは耳を疑い、目の前にいるリョウに視線を移す。リョウは聖剣を支えにしながらゆっくりと立ち上がる。傷だらけでもう立っているだけでも辛いはずなのに、リョウの両足は一切ふらつかず、しっかりと地面を踏みしめてその場に立っていた。
リョ「もう一度聞く。俺を・・・いや、俺達を殺せるのか?」
淡々とした声でリョウがもう一度問い掛ける。呼吸も大分落ち着いたようだ。
コ「と、当然だろ。特にお前、こんなボロボロになった人間1人殺せないようじゃ、俺達の名誉が傷つくからな。」
ナナ「大丈夫。殺すのはあなただけじゃない、妖精の尻尾の最強チームの人間全員だから。1人残らず殺―――――」
リョ「言ったはずだぜ。」
コ&ナナ「!!?」
「殺すから」と言おうとしたナナヨの言葉を遮り、リョウは口元に笑みを浮かばせると、右手で器用に5本目の聖剣、『妖魔剣』を鞘から抜くと口に銜えた。
リョ「“銀河は、羽を広げた妖精には勝てねぇ”ってな。」
『妖魔剣』を銜えたまま、白い歯を見せてリョウは笑った。が、すぐに笑みを消し、両手に持った4本の聖剣を構えると、
リョ「5剣流・・・怪魔神切ッ!!」
邪悪な雰囲気を纏った聖剣を振りかざす。
コ&ナナ「極悪なる空気と大地の城壁ッ!!」
空気と大地が合わさった城壁でリョウの攻撃から身を守る。
コ「いくら聖十大魔道でも、そのボロボロな体では俺達を倒す事は出来ねぇぜっ!」
ナナ「早く死んだ方がましよっ!」
コグレとナナヨは得意げに言う。が、リョウはニィッと口角を上げて笑うと、
リョ「別に倒す必要はねぇ。俺は今、お前等の足止めをしてるだけだっ!」
コ「は?」
ナナ「何言って―――――!」
背後から気配を感じたコグレとナナヨは咄嗟に後ろを振向いた。が、遅かった。2人の目の前には体全身に炎を纏ったナツが自分達目掛けて飛んで来る直前だった。
ナ「火竜の・・・剣角ッ!!」
コ「イギィイッ!」
ナナ「キャアァァアアッ!」
2人の無防備だった背中に強烈な一撃を食らわせた。コグレとナナヨは無様に吹っ飛び、瓦礫の山に突っ込んで行った。
ナ「領域だっけな?魔法は使えないけど、使わなかったらパンチ100発くらいでぶっ壊れたぞ。」
鼻の下を擦りながらナツは得意げに言うと、傷だらけで今にも倒れてしまいそうな状態であるリョウの元に駆け寄った。
ナ「おいリョウ、大丈夫か?」
リョ「大丈夫・・・って言いてぇとこだが、その真逆だ。正直、もう限界を超してんだ・・・・アハハハ・・・いてて。」
リョウは必死に笑みを浮かべようと頑張るが体全身に響く痛みで顔が引き攣り上手く笑えていない。
リョ「本当は、お前なんかにやらせたくなかったけどよ・・・こんな状態じゃ無理だからな。ナツ、アイツ等に止めを刺すのはお前に任せる。」
ナ「言われなくても最初からそうする気だったぜ、俺は。」
リョ「ひでぇな、おい。」
返ってきたナツの返答にツッコミながら引き攣った苦笑いを浮かべる。
リョ「ただし、止めを刺す前に、俺に一撃食らわさせろ。アイツ等に仕返ししねぇと、気が済まねぇんだよ。」
傷と血だらけの手で、聖剣をギュッと握り締める。
ナ「んじゃあ、その時になったらお前の事呼んでやるから、それまで気絶とかしたりすんなよ。」
リョ「お前こそ、その事忘れて1人で倒すんじゃねぇぞ。」
ナ「おう!」
そんな会話をしている間に、コグレとナナヨは瓦礫の下から這い出て来ていた。傷は更に増え、機械油が傷口から溢れ出し、銅線とカラーケーブルが切れてしまっている。
コ「・・こ、こんな・・・ところ、で・・・負け、て・・たまるか・・・よ・・・・」
ナナ「ジョ、ジョニー・メカ・・様に・・・合わせる、顔が・・なくなっ・・・ちゃう。」
ジジジと電気が帯び始めている。
コグレは右手、ナナヨは左手に空気と土の渦を纏うと、10mほど離れたところに立っているナツ目掛けて駆け出し、拳を大きく振り上げた。
コ&ナナ「消え失せろっ!ナツ・ドラグニルゥゥゥッ!!」
2人の拳がナツの後頭部に当たる直前、ナツは頬を膨らませながら振向くと、
ナ「火竜の・・・咆哮ッ!!」
口から炎の息を噴出した。
コグレとナナヨの体は炎に包まれ再び10mほど吹っ飛んで行った。
ナ「やられた分はキッチリ返さねぇとな。」
そう言ってナツは左手の親指以外の指に炎を灯し、「COMEON」の文字を作ると、
ナ「俺1人で十分だ。2人まとめて掛かって来いっ!」
1対2宣言を出した。
コ「1人で・・・十分、だぁ?」
この宣戦布告に立ち上がったコグレとナナヨの怒りは急上昇する。
コ「舐めやがって・・・!」
ナナ「私はアンタに興味なんてないわ。聖十のリョウとやらせなさい。」
ナ「さっきまで十分やり合ったじゃねーか。つーか、攻撃も防御もしぶとさも、俺はリョウには敵わねぇ。リョウを倒す為には、まずは俺を倒してからじゃねぇと無理だぜ。」
ナナ「己ェ・・・!」
コグレとナナヨは握り締めた拳に空気と土を纏うと、
コ「極悪なる空気の刃ッ!」
ナナ「極悪なる大地の弾丸ッ!」
鋭く尖った刃のような空気と、一斉に放たれた無数の弾丸のような土の塊が雨のようにナツに降り注ぐ。が、ナツは走ったりバク転したりしながらコグレとナナヨの攻撃を全てかわし、2人の目の前まで来ると、
ナ「右手の炎と、左手の炎を合わせて・・・」
両手に纏った炎を合わせる。コグレとナナヨは一瞬の出来事に怯んでしまって動けない。
ナ「火竜の・・・煌炎ッ!!」
コグレとナナヨの体に当たって爆散した紅蓮の炎がコグレとナナヨを包み込む。が、
コ&ナナ「まだまだァァッ!!」
炎を掻き分けながら紅蓮の炎の中から飛び出し、コグレは左足、ナナヨは右足に空気と土の渦を纏うと、ナツの顔面目掛けて蹴り上げようとするが、ナツの顔面に頭に直撃する前に受け止められた。
ナ「火竜の・・・翼撃ッ!!」
コ「うぐぁああぁぁあああっ!」
ナナ「うわあぁあぁぁあああっ!」
アンドロイドであるコグレとナナヨの体は、もはや人間でもロボットでもないくらい、ボロボロになっていた。ナツの鼻を刺激するのは機械油の臭いだけ。リョウ以上に傷だらけでボロボロになっても、コグレとナナヨは倒れはしなかった。
ナ「まだ戦えるなら・・・来いよ。」
手をちょいっと動かしてナツは挑発をする。
コ「らああぁぁあぁああああああああっ!」
ナナ「やあああぁあぁぁあああああああっ!」
コグレとナナヨは我を忘れてしまったかのように声を上げ、闇雲に空気と土の塊をものすごい速さで投げつける。が、ナツはその攻撃を全てかわしたり受け止めたりするばかりで全然効いてなどいなかった。
コ「俺とナナヨは、ジョニー・メカ様によって造られた、“究極の魔道士アンドロイド”だーーーーーーーーーーっ!!」
ナナ「ジョニー・メカ様の為に、私達は妖精を潰すんだーーーーーーーーーーっ!!」
コグレとナナヨは叫ぶ、投げる、叫ぶ、投げるを繰り返し続ける。
ナ「そうか。だったら俺は、傷つけられた仲間の為に―――――」
ナツの脳裏に浮かぶのはコグレとナナヨによって傷つけられた仲間―――マヤ、ルーシィ、リョウ―――の姿だった。
ナ「全力で、お前等を倒す。」
マ「・・・ナツ。」
医務室にいるマヤが、映像に映るナツを見て嬉し涙を一筋流した。
そう言うとナツは、コグレとナナヨの顔を鷲掴みにし、体を後ろに倒してコグレとナナヨの体を投げ飛ばした。
ナ「リョオオオオオオオオオオッ!」
まるで雷のような竜の雄叫びが会場の地下に木霊する。
リョ「待ちくたびれたぜ。」
傷だらけでありながらも、その場にしっかりと立っているリョウの右手の親指と人差し指の間には『銀覇剣』、人差し指と中指の間には『嵐真剣』、中指と薬指の間には『妖魔剣』が握られており、左手の親指と人差し指の間には『天力剣』、人差し指と中指の間には『花錦剣』、そして、中指と薬指の間にはリョウが契約してる6本の聖剣の中で最強の『竜風剣』が握られていた。
リョウの前方からコグレとナナヨが吹っ飛んで来た。茶色がかった吊り目を更に吊り上げ、視界に2人の姿を捉え、脳内で攻撃のタイミングを見計らうと、小さく地を蹴り駆け出した。
リョ「羽を広げた妖精の辿り着く先は、光と仲間の温かい心に満ち溢れた、想いを育む場所だぁぁぁっ!」
あの時のコグレの声は、遠くまで吹っ飛ばされていたリョウの耳にも聞こえていたらしい。
ル「・・・すごい。」
涙を拭いながらルーシィが嬉しそうに小さく呟いた。
リョ「6剣流・・・」
6本の聖剣が金色の光に包まれ煌々と輝き出した。
リョ「妖精の光ッ!!!」
ほんの一瞬の攻撃で、コグレとナナヨ、共に6回ずつ斬りつけた。6本の聖剣はまだ金色の光に包まれたまま。
そして、リョウが攻撃するのが終わったのと同時に、右手に炎、左手に雷を纏ったナツが飛び出した。
エ「モード雷炎竜・・・」
ハ「いっけーーーっ!ナツーーーーーっ!」
フ「全魔力をぶつけろーーーーーっ!!」
エルザが呟き、ハッピーとフレイが声援を送る。
ナ「滅竜奥義・・・・・」
グ&ユ&ショ「いっけェェェェェェェェェェッ!!!」
ナ「改ッ!!」
ウェ&シャ&ト「やああああああああああァァァッ!!!」
マ「ナァァツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
ナ「紅蓮爆雷刃ッ!!!」
ドゴォォォン!と凄まじい音を立ててドムス・フラウの壁が崩壊した。
チャ「す・・すごい地響きで映像魔水晶の映像も砂煙ばかりで何も見えません。会場の皆さんはしばらくそのままお持ち下さい!」
しばらく経ってもゴゴゴゴゴ・・・と地響きは続き、映像魔水晶の映像が復旧するのを黙って待つ事しか出来なかった。
チャ「おっと!映像魔水晶の映像が復旧したみたいです!」
映像に視線が集まる。
砂煙が徐々に晴れていき、2つの黒い影が揺れている。
ナナ「(・・こ、こんな・・・展開、信じる・・訳・・・)」
コ「(コ・・コイツ等・・・ば、化けモン・・だ・・・)」
チャ「こ・・こここ・・・これは・・・・・!」
ドッ、ドサッと音を立ててコグレとナナヨが倒れた。
チャ「立っているのは、ナツ・ドラグニルとリョウ・ジェノロ!!」
観全「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」
大歓声が沸き起こったのと同時に、ランキングの順位がピッと入れ替わった。
1位 妖精の尻尾 64
2位 銀河の旋律 62
チャ「勝者妖精の尻尾-----!!ここにきて、遂に1位に躍り出たーーーーーーーーーーっ!!!」
医務室ではマヤがベッドの上で立ち上がり大きく飛び跳ね、応援席では両手を空に突きつけたり者、手を取り合ったり者、ガッツポーズをしたりする者がいたり、待機場所ではグレイ、エルザ、ユモが顔を見合わせて頷き合ったりしていた。
チャ「これにて大魔闘演舞4日目終了ーーーーー!1日休日を挟んで、明後日に最終戦が行われます!最終戦は何とっ!メンバー全員参加のサバイバル戦です!」
蛇姫の鱗が、青い天馬が、四つ首の猟犬が、幸福の花が、月の涙が、海中の洞穴が、白い柳が、気楽な禿鷹が最終日の標的を変えた。
チャ「果たして、優勝するのはいったいどこのギルドか!?皆さん、お楽しみにーーーーーっ!!!」
ラ「ありがとうございます!!」
一向に冷める気配を見せない観客達の歓喜と興奮。
だが、興奮しているのは観客達だけと思ったら大間違いだ。
ボ「もう、マカロフちゃんトコの若い子達はほんとっ、元気で良いわねぇ~♪」
ゴ「相変わらず、“流石”・・・の言葉しか似合わねぇな。」
オ「面白くなってきたじゃないか、ふふふっ。」
青い天馬のギルドマスター・ボブ、四つ首の猟犬のギルドマスター・ゴールドマイン、蛇姫の鱗のギルドマスター・オーバが口々に言う。
マカ「誰でも構わん!来いっ!!」
打倒 妖精の尻尾!!!
リ「グレイ、今年こそお前には絶対に負けん!」
ジュ「リョウ殿、楽しみにしてますぞ。」
蛇姫の鱗ではリオンとジュラが早くもグレイとリョウに目を着ける。
ハル「ユモスと戦えるといいな。」
イ「そうだね。」
海中の洞穴ではハルトとイレーネがユモと戦う事を望んでいる。
ウ「妖精女王、エルザ・スカーレット・・・か。」
白い柳で最強の魔道士であるウララが興味津々のようにエルザの名を呟いた。
一「今年も存分に楽しもうではないか、ナツ君。」
青い天馬の一夜が目をキラリと輝かせた。
キ「コグレさんとナナヨさんが・・・」
カ「妖精の尻尾に・・・」
レ「負けた・・・」
銀河の旋律の待機場所にいるキース、カオリ、レヴルの3人は信じられないものを見たように大きく目を見開いていたが、3人揃ってすぐに目を少し細め、口元に小さく笑みを浮かべた。
歓喜と興奮が一向に収まらない観客席の1席に、妖精の尻尾の最強チームに復讐を誓い、銀河の旋律のギルドマスター・シルファとなりすました、天才的な頭脳を誇る発明家、ジョニー・メカがいた。
ジョ「(妖精の尻尾・・・最強チーム・・・やはりアンドロイド如きに倒れるほど軟弱ではなかったか・・・ひょっひょっひょっ。)」
心の中で特徴的な笑い方をすると、羽織っている白いロングコートの右ポケットから掌サイズの黒いリモコンを取り出した。リモコンには赤いボタンが1つあるだけの至ってシンプルなデザインのリモコンだった。
ジョ「(なかなかの傑作品だったんじゃがな・・・)」
どこか悲しそうな目で赤いボタンを見つめる。そしてゆっくりと目を閉じ、またゆっくりと目を開けると躊躇なく赤いボタンを押した。
ジョ「(さらばじゃ。KOGURE、NANAYO。)」
戦いを終えたナツとリョウはうつ伏せに倒れているコグレとナナヨに視線を移す。
リョウは1本ずつ聖剣を鞘に戻しながら、
リョ「やっと、終わったな・・・」
ナ「・・・あぁ。」
ナツの返答を聞き、最後の1本を鞘に戻したリョウはそこで力尽きたようにガクンと膝から崩れ落ちるように気を失った。
ナ「お、おいリョウ!」
慌ててナツがリョウの体を支えたその時―――――、
『KOGURE、NANAYOノ爆発マデ、後30秒』
ナ「!?」
機械のような女の声が聞こえた。ナツは振向くが誰もいない。
ナ「な・・何だよっ、爆発って・・・?」
コ「言葉通りの意味だ・・・」
ナナ「私達と戦って、言語の意味が分からなくなったのかしら・・・?」
ナ「!」
ナツが戸惑っていると、気を失っていたはずのコグレとナナヨがゴロンと仰向けになりながら言った。ナツは驚きのあまり言葉を失った。
コ「妖精の尻尾の最強チームの人間を殺せなかったら、爆発するっていうお約束なんだ。」
ナ「・・・な、何だよ・・それ・・・・」
『爆発マデ、後15秒』
ナナ「ここにいたら、アンタも爆発に巻き込まれるわよ。聖十のリョウを連れて、早くここから離れて。」
『爆発マデ、後10秒』
ナ「で・・でも・・・」
コ「早くしろっ!死にてぇのかお前はぁっ!?」
『7・・6・・』
戸惑うナツだったが、気を失ったリョウを背中に背負うと足早にコグレとナナヨから遠ざかった。
コ「・・・それで良い。」
ナナ「ゴメンね・・・」
最後に、コグレとナナヨの声が聞こえたような気がしたのは気のせいだったと信じたい。
『3・・2・・1・・・』
カウントダウンが終わったと同時に、ドガァァァァァン!と凄まじい音と灼熱の炎を上げて爆発した。幸い、ナツが逃げたところには爆発の被害は来なかったが、小さな瓦礫の破片が飛んで来たりした。
ナ「っ~・・・!」
ナツは歯を噛み締め、目が潤んでくるのを必死に抑えた。
後書き
第188話終了致しました!
勝利の女神が微笑んだのは妖精の尻尾ーーーーー!!そして、まさかのジョニー再登場!?コグレとナナヨの最後は残念でしたが・・・
次回は休日を有意義に過ごす最強チームの様子を書いていこうと思います。
それではまた次回、お会いしましょう!
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