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原罪

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第五章

「俺はボクサーだぜ、ボクサーはスポーツマンなんだよ」
「だったらな」
「相手を傷付けるつもりでスポーツする奴なんてスポーツマンじゃないだろ」
「その通りだよな」
「俺だってそのことがわかってるつもりさ」
 言葉使いは荒いがそれでもだ、彼はスポーツマンである。そう強く思っているからこそホーナーにもすぐに答えたのだ。
「当然な」
「だったらな」
「こうしたことはか」
「怪我はあるんだよ」
 どうしても、というのだ。
「倒れることだってな」
「だから気にするな、か」
「まあ難しいけれどね」
 気にしないことはだ、それでもだ。
「友達を傷付けて平気な方がどうかしてるさ」
「それでもか」
「原罪になんか思わないことだよ」
 そこはしっかりして欲しいというのだ。
「さもないと無理に辛くなるだけだよ」
「そうか」
「まあ彼はね」
 ジョーンズはとだ、ホーナーは前を見つつデービスに話した。
「俺の見たところ大丈夫だよ」
「倒れただけか」
「気絶しただけさ」
 それでだ、昏倒しているだけだというのだ。
「明日になれば朗報が入って来るよ」
「だといいがな」
「じゃあ賭けるかい?若し大丈夫だったら」
「その時はか」
「俺にコーラ一本でどうだい?」
「随分安いな」
「俺は欲がないからね」
 ホーナーは運転しつつ笑ってみせた。
「それも当然だよ」
「そうか」
「ああ、じゃあ彼が大丈夫だったら」
「コーラ一本な」
「それじゃあな」
 ホーナーと話していてだ、そうしてだった。 
 デービスは少し不安が和らいだ、だがそれでもだった。
 不安はかなり強いままだった、シャワーを浴びて夕食を口にしても中々眠れなかった、ジョーンズのことと自分がしてしまったことがどうしても頭に残って。
 寝られなかった、どうしても。その疲れきった顔でジムに来ると。
 ホーナーにだ、微笑んでこう言われた。
「寝られなかったんだね」
「ああ、どうもな」
「そうだろうね、けれどね」
「それでもか」
「大丈夫だよ、まあとりあえずはね」
「とりあえずは?」
「ホットミルクを入れるよ」
 それをだとだ、ホーナーはデービスに微笑みのまま言った。
「それを飲んで少し寝て」
「それからか」
「軽くトレーニングをしようか」
「ランニングとかをだな」
「寝ないでトレーニングをしたらよくないよ」
 疲れが溜まっている、だからだ。
「だからね」
「少し休んでだな」
「そう、トレーニングをしよう」
「それじゃあな」
 ホーナーの言葉に従うことにした、そうして。
 彼はホーナーが入れてくれたホットミルクを飲んだ、それで仮眠しようとしたところで。
 ジムに電話がかかってきた、ホーナーが出た。そして電話を聴き終えてからだった。
 デービスにだ、笑顔でこう言ったのだった。 
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