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勘違いもここまでくると

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第二章

「じゃあ同性愛の漫画とか小説は?」
「普通に歴史上の人物がそうした趣味だったりよね」
「そんなことは公にはなのね」
「書けないわよ」
 まさにだ、絶対のタブーだったからだ。
「日本じゃ普通に書き残してるけれど」
「日記に書き残してるお公家さんもいたし」
 しかも女役になったことで『不敵、不敵』とさえ書き残している。本人も楽しんでいたことが伺える文章である。
「徳川綱吉さんは美少年のハーレム作ってたし」
「凄いわね」
「それで死刑になった人一人もいないわよ」
「捕まった人もよね」
「ええ、一人もね」
 実際に、と言う紗栄子だった。
「いないわよ」
「それがいいのよ。それじゃあ」
 ここまで聞いてだ、マリアンヌはその整った美女まさにインテリのパリジェンヌといっていい顔をうっとりとさせて紗栄子に語った。
「日本では今も男同士の恋愛が普通に」
「普通にじゃないわよ」
「けれどそれで罪に問われたりしないわよね」
「そんなことは全然ないけれど」
 それでもと言う紗栄子だった。
「普通じゃないわよ」
「嘘でしょ」
「嘘じゃないわよ、男同士のカップルとか街にいないから」
「普通にいちゃいちゃしてないの?」
「してないわよ」
 紗栄子はこのことを全力で否定した。
「それは流石に漫画や小説だから」
「そうなの?」
「そうよ、日本でもそんなことないから」
「いやいや、そこまで同性愛に寛容なら」
 マリアンヌは紗栄子の話を認めようとしなかった、それであくまでこう言って退かないのだった。
「きっとね」
「だからあんたの中の日本って何よ」
「自由戀愛の国よ」
 同性愛がだ。
「美少年のハーレム、上司と部下、先輩と後輩の禁じられた愛」
「えらく美化されているわね」
「貴公子同士の恋愛もあったのよ」
「あるにはあったわ」
 このことも歴史にある、平安時代では同性愛のもつれから政争にまで至ったことすらあった。
「ついでに言えばその痴話喧嘩から敵討ちになったりとかもね」
「そうした国だからよ」
「街を歩けばっていうのね」
「特にお寺よね」
 マリアンヌは研究熱心だ、だから論文も高く評価されている。それで日本の同性愛が仏教の寺から来ていることも知っているのだ。
「僧侶同士の」
「あのね、確かに全部歴史的事実だけれど」
 それでもとだ、粘って言う紗栄子だった。
「それ全部ないから」
「今の日本には?」
「そうよ、そこまで言うのならね」 
 それならというのだった。
「日本に来てみる?」
「その目で見てっていうのね」
「そうして確かめたら?自分で」
「そうね、旅行も兼ねてね」
 観光旅行のついでにとだ、マリアンヌも乗った。
「行ってみるべきね」
「貴女そもそも日本に行きたがってたわよね」
「ええ。東洋史専攻だし」
 それだけに余計にだった、マリアンヌは日本に行きたがっていたのだ。そして実際に紗栄子に誘われてだった。
 日本に行こうと思った、紗栄子はそのマリアンヌにさらに言った。
「私も丁渡ね」
「帰国するのね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「一緒にいてガイド役もするから」
「悪いわね、気を使ってもらって」
「いいのよ、それじゃあね」
「ええ、日本に行ってね」
 実際にその目で確かめることになった、日本が同性愛がおおっぴらであるかどうか、紗栄子はそのマリアンヌを日本のあちこちに案内することになった。 
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