ハイスクールD×D 雷帝への道程
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世話になった
前書き
今回は前回のレーティングゲームの後始末です。
会話ばっかりでつまらないかもしれませんが楽しんで下さい。
黒歌達の両親を弔った翌日の深夜、オレ達の元に来客があった。オレは魔法で無理矢理寝かせた黒歌達を抱き、マントで覆っている。警戒は一切解くつもりはない。
「何か御用ですか、サーゼクス様」
オレ達の対面に座るのはサーゼクス様とグレイフィアだ。さすがのオレでも二人を庇いながら戦う事は難しい。だが、弱みを見せるわけにはいかない。
「……魔王として頭を下げるわけにはいかない。それにサーゼクス・ルシファーは現在、魔王会議に出席している」
なるほど、そう来たか。警戒を解く事はないが、それでも思考は切り替えて良いだろう。
「私はあのレーティングゲームの準備を行った者だ。今回のレーティングゲームの結果や色々と詳しい事情の説明にやってきている。その為にかなりの権限を預かってきている。説明に時間がかかるが構わないかい?」
「分かりました」
「ありがとう。それでは説明に移ろう。今回のゲームは非公式の物である以上公式記録として残る事はない。それにあんなこともあった以上無効試合という形になる。そもそも裏の記録からも抹消されることになった」
「それだとオレの報酬も返還するべきだろうか?」
「いや、それに関してはそのままで良い」
「そうですか。まあ、返せと言われても返せませんのでね」
「うん、そうだね。それでアウル・ダンタリオンとその眷属についてなんだけど、領地を臨検した所行方不明になっていた者や、種族的に珍しい者達の死体が綺麗に保存されていた」
「ちっ、やはりか」
「ああ、それもダンタリオン家はアウル・ダンタリオンしか居なかったんだけど、ああなってしまったからね、取潰しになる」
「何?親族が居ないのか?」
「……コレクションの一部に居た。パーティーなどには人形師の能力で誤摩化していたようだ」
「親族にまで手をかけていたのか。胸くそが悪いな。眷属達はそれを知っていたのか?」
怒りから口調がどんどん荒くなっていくのが分かる。だが、怒りが抑えられん。
「……知っているどころか、誘拐の際に協力したり、容姿が気に入った人間を攫ってきてアウル・ダンタリオンに人形にして貰って慰みものにしていたようだ」
「……もういい、これ以上聞いても腹が立つだけのようだ。いや、眷属にはどういう罰が与えられた?」
「永久凍結の刑に処した。それから黒幕の方なんだが」
「そっちはどうでも良い。罰を与える必要もない」
「いや、だが」
「次に手を出してくるのなら、オレ自らが引導を渡す!!だから今回の事は、一度だけ、流させてくれ。流させて下さい。お願いします」
頭を下げて願い出る。先の言葉の通り、一度だけは流したい。オレを狙う様な奴は数が少ない。そもそもの交流が少ないからだ。だから、少し考えれば黒幕はすぐに分かった。分かったからこそ、一度だけ流したいのだ。
「……分かった。グレイフィア、部隊を引かせてくれ」
「よろしいのですか?」
「構わない。本人がそう言っているのだから。ゼオン君、君は本当に次が起これば自分で決着を付けるんだね?」
「はい。オレが一人で全てに片をつけます」
「ならそういう風に改竄しておく。今回だけだ」
「ありがとうございます」
「それで、君はこれからどうするんだい?」
「旅に出ます。二人を連れて。それから一つお願いがあるのですが」
「今回はかなり迷惑をかけているから何でも、と言いたい所だけど黒幕の件もあるからね。あまり大した物じゃなければと言わせてもらうよ」
「オレを正式にレーティングゲームデビューさせて頂きたい」
「……あんなことがあったのにかい?」
「あんなことがあったからこそです。オレの力を周囲に知らしめて、オレの眷属を守る為に」
「その言い方だと、一人でゲームに参加するみたいだね」
「無論、その通りです。ゲームに眷属を出すつもりはありません」
「貴方はゲームを舐めすぎです!!」
「そちらこそオレを舐め過ぎだ!!オレが全ての手の内を見せたと思っているのか?だとすれば甘すぎる。雷とマントはオレの見せ札に過ぎん。ここで証明してやろうか」
右手に魔力を集めて、それを消滅の力へと変換する。
「躱せよ!!ラディス!!」
一声をかけてからグレイフィアに向かってラディスを放つ。グレイフィアはオレの忠告からか、それとも消滅の力に近い滅びの力を傍で見続けてきた経験からか、受けようとは考えずに回避の一択を選ぶ。そして、オレの右手が翳された一角が何も無かった様に消滅する。
「これはバアル家の!?」
「いや、これは似ているが違う」
「ああ、こいつはバアル家の滅びの魔力じゃない。オレ自身が構築した消滅の魔力だ。結果は見ての通りだ。ああ、一応今のは威力を一番最低まで落とした物だ。やろうと思えば前回のゲームの時に使っていたテオザケルと同じ位の規模の物を連射出来る。これでもゲームを舐めていると?」
無論ハッタリだ。テオラディスなんて万全の状態で撃っても2発撃てれば良い方だ。テオザケルなら100は撃てるんだろうが、相性が悪い。理論を構築出来なかったからファジー機能に任せっぱなしだからな。
「威力に関しては過剰すぎるね。ゲーム中でも即禁止されるだろう。それにゲームは戦術や戦略も試される。一人ではそれも出来ないと思うけど、その点はどうだい?」
「確かにそうではあるが、オレには式髪がある。禁止にすると言うのなら使い魔の使用も禁止であるべきだ。オレは自分の力を分けて数を増やしているんだ。そうあるべきだ。それに、ゲームに勝つ気はそれほど無い。ただオレの力を振るう機会が欲しいだけだ。アウル・ダンタリオンとのゲームでの収穫はオレの力をそこそこ発揮する事が出来た事だ。オレは途中まであのゲームが楽しかった。オレを化け物と見て遠ざけるのではなく、オレを調べ、対策を練って戦いを望んで来たアウル・ダンタリオンとのゲームが」
式髪だったとは言え、感覚はリンクしている。あの時、式髪が思った力を振るえる歓喜は本体であるオレも共有した事だ。
「なるほど、力を振るう機会が欲しいか。意外と子供らしいんだね」
「実際、子供だ。それに昔から自分の魔力と雷への適正が高い事は本能で分かっていた。だから、逆に周囲の事を考えて力を振るえなかったんだ。我慢してたんだよ。それをしなくていい環境を求めて何が悪い。だが、またあのアウル・ダンタリオンの様に精神的に傷を負わせようとする奴が居ないとも限らない。だから、オレ一人でレーティングゲームに参加する」
「そう考えるのは妥当だね。まあ、いいだろう。少しでも大人の世界の厳しさを知れるのなら。レーティングゲームの参加を許可しよう。最も、シーズンが始まったばかりだから来年からの参加になるし、最初は下位の大会にしか出せないよ」
「それで構わない。すぐに上まで上り詰めるだけだ」
オレの自信に満ちた言葉にサーゼクス様は不敵な笑みを浮かべた。
「そうかい、旅に出るんか」
「ああ、今まで世話になったな」
「かまへんよ。どうせ、この工房も余っとるもんやさかい。それでもたまにはこっちの方に来てラーメン食わせてんか?」
「ああ、それ位構わないさ」
「ほなら工房の鍵は渡したまんまにしとこか。ほんで、最初は何処目指すんや?」
「不良退魔師に誘われていてな、あいつが居候している屋敷にしばらく滞在させてもらう予定だ。何でも、妖怪屋敷らしいからな。黒歌達に友達を作ってやりたいからな」
「話を聞く限り、しばらくはゆっくりと心の傷を治したらなあかんやろな。あんなこんまいのに苦労ばっかりで、あんさんも辛い目に負うて」
「オレはまだ良い。ある程度、覚悟はしていたから。だが、黒歌達は本当に辛い目にあわせてしまった」
「そう思うんやったら、絶対に二人を放すんやないで。あんさんにまで放されてしもうたら壊れるで」
「分かっている。絶対に二人は放さないさ。というか手放したくない。オレ自身の為にも」
「せやな。あんさんも苦労ばっかりで、ゆっくり休むとええわ」
しばらくすると荷物を纏め終えた黒歌達がやってきたのでマントで抱き上げる。ここから不良退魔師が居候している場所までは距離があるから、空を飛んでいく予定だ。
「すまんな、銀術士。世話になった。またな」
「ああ、またや」
銀術士に別れを告げ、オレ達は京都を目指す。
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