『拝啓:復讐少女が呼んだのはとんだ気まぐれ魔王でした』
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『少女は復讐を誓いました。敬具』
それは今から八年前の話。
フール歴と呼ばれた私たちの世界はその日を境に突如、混沌と化した。
どこからか現れた魔王とその配下達が世界を蹂躙し始めたのでした。
人々は儚い反抗を続けていたが、いつしかその反抗も息を潜め、人々は魔族達の奴隷となって行った。
「ママ!パパ!」
これは私。八年前の魔族の襲撃は私たちの村も例外なく襲った。
「出て来ちゃダメだ!早くお家へ!」
父さんは必死に私に叫んだ。でも、私は歩みを止めなかった。
いや、止めることができなかった。
「くそっ!」
父さんは私を抱きかかえ、家の中に入った。
そして私をタンスの中に入れこう囁いた。
「これを持ってなさい。父さんと母さんの大事なものだ。お前を守ってくれる」
そう言うと手の中に小さな欠片を渡した。
「パパとママは?」
「直ぐに戻ってくる。心配するな」
父さんと母さんはそう言いながら笑った。
私はその笑顔を見て安心した。
「それじゃね、サキ」
そして、母さんの最後の言葉を聞いた。
私の記憶があるのはここまでだ。
どうやら母は私に魔法をかけていったらしい。
次に目を開けたのは私を助けに来た救護隊の人々がタンスをあけてくれた時だった。
「ねえ、パパとママは?」
父さんと母さんが生きているのを信じていた。
私はそう尋ねた。
「えっ?あ、それは……」
救護隊の人が慌てたのが分かった。
私は嫌な予感がして、救護隊の人を跳ね除けた。
「う……そ……」
そこにあったのは変わり果てた父と母の姿だった。
身体はほぼ無くなっており、顔が何とか形を保っていた。
「なんで死体を片付けなかった‼︎」
後ろで救護隊の人が何か叫んでいるのが聞こえる。
でも、何を言っているのか全く分からなかった。
「……してやる」
「えっ?」
その時私は誓ったんだ
「殺してやる……」
魔王を
「この手で魔王を……」
殺してやるって
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