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美しき異形達

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第十六話 黒蘭の力その二

 そのクラブで接近戦を挑む、怪人はそのクラブの攻撃を受けつつ言った。
「今度はそれか」
「そうよ、どうかしら」
「新体操というものはよく知らないが」
「いいスポーツよ」
 黒蘭は闘いつつ答える。
「戦いにも使えるね」
「そうしたものの様だな」
「私はどの距離でも戦えるわ」
 接近戦も中距離戦も遠距離戦もだというのだ。
「新体操の道具でね」
「そうだな、それに」
 ここで怪人は黒蘭が今打撃で使っているクラブを見た、すると。
 そのクラブにも黒い気があった、その気を見て言うのだった。
「それが貴様の力だな」
「気付いたのね」
「リボンにもフラフープにもあったな」
「この黒い気がね」
 それこそがだというのだ。
「私の力よ」
「そうだな」
「ええ、闇よ」
 それが、というのだ。
「それが私の力よ」
「闇か」
「ええ、闇の力は」
 それは、というのだ。
「光とは逆、けれど邪ではないわ」
「闇と邪は違うか」
「少なくとも私は悪ではないわ」
 つまり邪悪ではない、黒蘭は怪人と接近戦を繰り広げながら言う。
「もっとも善でもないけれど」
「では何だ」
「知りたいだけよ」
 それだけだというのだ。
「ただそれだけよ」
「知りたいのか」
「ええ、そうよ」
 こう怪人に言うのだった。
「私達が何者かをね」
「そのことか、知りたいのは」
「貴方は知っているかしら」
 怪人のその赤い目を見て問う。
「私達のことを」
「俺はただ貴様を倒すだけだ」
「何処から出て来たのかも」
「知らない、気付けば貴様の前にいてだ」
 そして、というのだ。
「闘っている」
「姉さんと私を倒そうということは本能から思うことね」
「そうせずにいられない」
 殺意に燃える目でだ、怪人は答えた。
「だからだ」
「そう、そのことはわかったわ」
「そうか、とにかくだ」
「怪人が知っていることはないと言っていいわね」
「俺達にとってはどうでもいいことだ」 
 自分達自身のことを、というのだ。
「貴様達を倒すことだけを考えている、それだけだ」
「そのことは察していたわ、ではいいわ」
「もう聞くことはないか」
「何も」
 ないとだ、はっきりと答えた黒蘭だった。そしてだった。
 またリボンを出してだ、怪人に告げた。
「もう聞くことはないわ」
「俺に倒されるか」
「逆よ、また言うけれど」 
 倒されるのではなく倒すというのだ。
「覚悟はいいわね」
「自信家だな、だが俺にはどうでもいいことだ」
「闘うだけだから」
「そういうことだ、では死んでもらう」
 こう言ってだった、怪人は。
 また目を光らせた、そのうえで。 
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