コールド=ローズ
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第四章
第四章
「それをお渡しする訳には」
「それはいけませんか」
「申し訳ありませんが」
そうだというのであった。
「御容赦下さい」
「そうですか、それでは」
「はい、しかし」
ここで話が変わった。
「他のことならいいですから」
「左様ですか、それでは」
こんな話をしながらパスタとワインを楽しんでからであった。
その部長がだ。こう言ってきたのだった。
「それではです」
「そうですね。それでは」
課長もそれに合わせて言う。
「我々はこれで」
「そうするとしましょう」
店を出る時に二人で言っていた。
「では。後は」
「君達で楽しんでくれ」
こう言って侑布と雄二だけを残したのであった。そのまま何処かに消えていく。観れば行く先は球場の方であった。侑ふはその行く先を見て言った。
「そういえば今日は」
「今日は?」
「広島対阪神の試合だったけれど」
そのカードだというのだ。
「課長広島出身で広島ファンなんですよね」
「うちの部長もですよ」
雄二もここで話す。
「広島生まれで」
「そうなんですか」
「はい、それで僕は阪神ファンなんで」
雄二は笑顔で彼女にこのことを話す。
「そこでは色々とあります」
「私も。実は阪神ファンで」
「若葉さんもですか」
「はい、実は」
こう彼に話すのだった。
「昔から」
「成程、同じですね」
「藤川投手が好きで」
選手の好みについても言及した。
「それで」
「僕は金本ですね」
「兄貴ですね」
「元々は広島の選手ですけれど」
何気にここでまた広島の話も出る。
「それでも。大好きなんですよ」
「金本選手ね。確かにいいですよね」
「はい、とても」
雄二の顔が笑顔になる。
「それじゃあなんですけれど」
「それじゃあ?」
「行きます?今度」
雄二の方からだった。
「試合に」
「そうですね」
一呼吸置いてからだった。侑布は静かに答えたのだった。
「私でよければ」
「一緒に来てくれますか」
「はい。阪神の試合なら」
それならばというのだ。彼女は生粋の阪神ファンである。それならばだ。球場に誘われてそれで行かないというカードはなかったのである。
「行かせてもらいます」
「それじゃあ」
「ただ」
「ただ?」
「その試合に勝てばいいですね」
そのことは微笑んでの言葉だった。
「阪神が」
「確かなことは言えませんからね」
「それが阪神ですから」
雄二は今は困った笑顔になっていた。
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