久遠の神話
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最終話 あらたなはじまりその一
久遠の神話
最終話 あらたなはじまり
その日は休日だった、上城は朝早く起きた。
そうして家のリビングに出るとだ、両親がもういた。父はテーブルの自分の席に座っていて母は朝食を作っている。父は我が子の顔を見て言った。
「ああ、早いな」
「うん、ちょっとね」
「今日は部活があるのか?」
「いや、今日は休みだよ」
休日も部活があることが多いが今日は、というのだ。
「気楽なものだよ」
「そうか、じゃあゆっくり寝ていればいいだろ」
「ちょっとね。外に出る予定があるから」
上城は父に笑ってこう答えた。
「だからもう起きたんだ」
「そうか」
「村山さんとなの?」
朝食を作りながらだ、母が彼に問うてきた。
「それって」
「まあね、一緒にね」
「村山さんに迷惑かけたら駄目よ」
「かけないよ、そんなの」
上城は自分の席に着きながら母に答えた。
「そうしない様にしてるから」
「それならいいけれどね」
「それに今回はね」
今は、と言う上城だった。
「村山さんと一緒でも」
「デートじゃないのね」
「そんなのじゃないよ」
間違っても、と言う彼だった。
「二人で大学の道場に行ってね」
「八条大学の?」
「そこで稽古をつけてもらうから」
「だから今日は行くのね」
「そうなんだ」
「結局剣道なのね」
母は娘の話を聞いて言うのだった。
「今日も」
「まあね、そうなるよ」
「じゃあしっかり食べてね」
そして、とだ。母は我が子にだった。
最初に朝食を出した。それはトーストにベーコンエッグ、それとサラダにホットミルク。そうしたメニューだった。
「まずはあんたからよ」
「おいおい母さん、最初にか」
「何か悪いの?」
「ずっと大樹にばかりだな」
「当たり前でしょ、今日あんた予定は?」
「野球場に行ってな」
そしてとだ、父は自分の妻に答えた。
「阪神を応援しに行くんだよ」
「そうでしょ、けれど大ちゃんはね」
「剣道の稽古に行くからか」
「そう、だからよ」
それでだとだ、妻として夫に言う。
「あなたは後よ」
「やれやれだな」
「阪神勝つことをお願いしてくるのね」
「ちょっと勝利を祈願に神社にでも行くか」
「そうしたら?そろそろ正念場だしね」
「そうだな、今はトップでもな」
それでもだと言う父だった、結構真剣な顔で。
「ちょっと油断すると落ちるからな」
「そうでしょ、だからね」
「何なら母さんも一緒に行くか?」
父は笑顔で妻に言った。
「何なら」
「甲子園ね」
「ああ、久し振りにどうだよ」
「まあね、私今日予定ないし」
「ならいいだろ」
「家に一人いても仕方ないから」
それでだというのだ、母も。
「それならね」
「よし、じゃあ二人で行くな」
「あんた鍵持ってるわよね」
夫とのデートの話を決めてからだ、母は息子に問うた。
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