| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百七十話 信長と信玄その八

「今は休め、よいな」
「はい、それでは」
「夜襲に気をつけたうえで」
「そうさせてもらいます」
「今は」
「そうせよ、そして日の出と共にじゃ」
 まさにだ、その時にだというのだ。
「攻めるぞ、よいな」
「それで御館様」
 ここで言ってきたのは穴山だった。
「織田家の陣形ですが」
「うむ、横に長いのう」
「北から南に」
「しかも分厚くな」
 そうした陣形を組んでいるのだ、織田軍は。
「前には鉄砲と槍を置きな」
「そしてその槍はです」
「長槍じゃな」
「相当に」
「織田家の槍は長い」
 信玄もよく知っている、鉄砲と並ぶ織田家の武器だからだ。
「そう容易にはな」
「攻められぬかと」
「しかも弓矢も多い」
 これもあった、織田家には。
「中々攻められrぬかと」
「わかっておる、ここはじゃ」
「御館様がですか」
「わしに考えがある」
 だからだというのだ。
「ここは任せてもらおうか」
「わかりました、それでは」
「さて、楽しみじゃ」
 信玄はにやりとも笑った。
「織田信長と戦うか」
「相当な戦上手だとか」
「聞いた話ですと」
「間違いなく上手じゃ」
 戦はだというのだ。
「さもなければあそこまで勝ち進むことは出来ぬ」
「一向宗にも勝ちましたし」
「三好にもですな」
「浅井、朝倉にも」
「そして今川にも」
 美濃のこともだ、信長は間違いなく戦上手だ。
「戦は強いですか」
「その兵は弱いですが」
「それでもあの者は戦がわかっていますか」
「そして強いのですな」
「そうじゃ」
 間違いなく、と言う信玄だった。
「だからじゃ、その戦ぶりも見せてもらう」
「徳川の時と同じく」
「そうされますか」
「それ故に楽しみじゃ」
 そうだというのだ。
「明日がのう」
「では明日ですな」
「織田家と戦いますか」
「我等の戦を織田家に見せ」
「織田家も見せてもらいますか」
「おそらくじゃが」
 信玄は信長を見ていた、実際にその目には信長の馬印がある。そこに信長がいることは明らかである。
 その信長を見てだ、信玄は言うのだ。
「あの者はわしの左腕になれる」
「越後の龍が右腕で」
「尾張の蛟龍が左腕ですな」
「虎の両腕は二匹の龍じゃ」
 己の通り名を虎と知っていての言葉だ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧