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IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
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番外編『レーゲン scene1』

 
前書き
今回はラウラが隊長に任命されて間もない過去編となります。 

 
私はラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツ軍IS配備特殊部隊、シュヴァルツェ・ハーゼの……現隊長だ。
先日、シュハイク責任官より隊長に任命され、今日初めて部隊の皆に公にする。
今、私は皆が居る訓練場へと足を運んでいるのだが……


「……」


恐らくこれは緊張というものだろう、心なしか足が重く感じる。それもそうだ、スウェン隊長がこの部隊から去り、日本へと渡り部隊の皆はショックを受けていた。そんな中、私が新たな隊長となり皆の前に立つ。
いくらシュハイク責任官と上層部の推薦とはいえ、元々私は落ちこぼれだ。快く思っていない事も少なからずあるだろう。そう考えるとまた足が重く感じる。


「ラウラ隊長、そんなに固くならずともいいのですよ」

「はい……」


そんな私を見かねたのか、クラリッサ副隊長は笑みを浮かべながら言う。私の口から出たのは覇気の篭っていない応答だけだ。





そして訓練場


「本日よりスウェン隊長に代わり、シュバルツェ・ハ-ゼの新隊長に任命された、ラウラ・ボーデヴィッヒであります。隊のために全身全霊をかけて尽力していく所存でありますので、これから……改めてよろしくお願いいたします」


そのまま頭を下げる。しかし私は頭を上げることが出来なかった。皆と顔を合わせるのが怖い、どのような眼で私を見ているのか想像もしたくない。だがそんな私の思いを裏腹に、微かに笑う声が聞こえた。


「なるほど、スウェン隊長の後任はラウラだったか」

「スウェン隊長が居なくなって、この隊はどうなるのか心配だったけど」

「ラウラが隊長なら安心ね」

「え……?」


ふと顔を上げると、部隊の皆は笑顔で私のことを見てくれていた。この時、心の中にある雲は一気に晴れていった。


「しかしあのラウラが隊長ね~」

「わからないものだな」

「こらこら、新隊長になんて物言いだ。それにこれから訓練があるんだから気を引き締めろ」


クラリッサ副隊長は一歩前に出てそう言うと、皆は表情を変える。そしてクラリッサ副隊長こちらに視線を移し


「それではラウラ隊長、指示を」

「は、はい!」


一息置き


「これから訓練を行う。まあ訓練はいつも通りだが、スウェン隊長の教え、向上心忘れる事無かれを忘れずに行って欲しい。それでは始めてくれ」

「「「はっ!」」」


そして皆は敬礼の後、訓練に向かった。


「ふふ、隊長らしさがでてきましたね」

「か、からかわないでください……」

「これは申し訳ありません、ラウラ隊長。あ、この後グレーデュント夫妻のところへいきますのでお忘れなく」

「わかりました」

「それでは少し私は席をはずしますので」


そういい残すと、クラリッサ副隊長は隊舎の方へ向かった。
グレーデュント夫妻……。スウェン隊長の義理の両親で、ストライクの……ストライカーシステムの開発者。私が呼ばれたということはつまり……


「ラウラ」

「?」


不意に呼ばれそちらを向く。そこに居たのは赤髪を型まで伸ばした隊員……


「ヴェッター……」


『ヴェッター』。シュバルツェ・ハーゼの実行部隊、『(ヴィント)兵士(ソルダート)』と呼ばれるチームに所属している。ヴィント・ソルダートとはスウェン隊長、クラリッサ副隊長の推薦で選ばれた三人で構成されてる。


「あたしは認めない!」

「?」


ヴェッターは体を震わせ


「あんたがこの部隊の隊長だなんて絶対に認めない!!」

「ヴェッター……」


怒りの感情がはっきりわかる表情で、何処かへと歩いてくヴェッター。
ヴェッター、一体なぜ……ん?


「お前たち……」

「おはよう、ラウラ」

「朝から難儀ね」


茶色の髪に、頬にソバカスがある隊員と、腰まで伸ばした黒い髪の隊員。この二人もヴェッターと同じくヴィント・ソルダートのメンバー、『レーレ』と『シュトース』だ。


「シュトース、レーレ……」

「まああの娘の気持ちも解らなくもないわ。ヴェッターだってラウラと同じでスウェン隊長のお陰で変われて、ここまでこれて、尊敬以上の感情を持ってる」

「そんなスウェン隊長が突然居なくなって悲しいだと思うよ。しかもラウラがいきなり隊長だなんて、心の準備もできてなかったんだよ」

「そ、そうだろうか……」

「こればかりはヴェッターと話合うしかないわね。まあゆっくりとやっていけばいい」

「そうそう、焦る事なんてないんだよ」

「ありがとう、シュトース、レーレ」


やはりシュトースとレーレは優しい、こんな仲間と共に居れて、同じ隊に居れて私は幸せだ。











「ここが夫妻の……」


グレーデュント夫妻が居るであろう研究所へとやってきた。すると研究員の一人が私の下にやって来る。


「ラウラ・ボーデヴィッヒさんですね」

「はい」

「お待ちしておりました、それではこちらへ」


研究員に言われるとおりにその後を追う。この研究員は日本人か、顔つきがそうだからな。


「こうしていると昔を思い出しますよ」

「昔?」

「ええ、昔こうしてスウェン君を案内したことがあるんですよ」

「そうですか……」

「……あ、すいません、嫌なこと思い出させてしまいましたね」


そう謝ったが、私は別に……


「いえ、気にしていません」

「そうですか、よかった……さて、つきました、この部屋に博士たちが居ますので」

「案内ありがとうございます。それでは」


私は一瞥しその扉をくぐった。そこは機材が散らばっており、少しほの暗い。その先には一人の男性が機器の前に居た。あの方がスウェン隊長の義父、Drロイか。足元に気を配りながら男性に近づく。


「Drロイ」

「ん?」


Drロイはこちらに気づいた。


「えっと、君がラウラさんだね」

「はい」

「よく来てくれたね、歓迎するよ」


Drロイは笑いながらに言う。すると


「こうして直接話をするのは初めてになるね。君の話はスウェンから色々聞いてるよ」

「た、隊長から?」


肯定を示すようにDrロイは頷く。


「とても素直で、真面目で、何時も自分について来てくれた自慢の部下だって言ってたよ」


そんな……隊長がそんな事を……気づけば私は口元が緩んでいた。いかんいかん……。


「しかし……」


Drロイは少しこちらに近づき顔を覗き込んでくる。


「本当にリズの生き写しだねぇ」

「リズ? 確かDrロイの」

「うん、娘だよ。ラウラさん……リズの生き別れの姉って事はないよね」

「違います」


思わず即答した。そんなに似ているのか? そのリズという娘に……


「おっとごめん、こんな詰まらない話をしに来た訳じゃないんだよね。準備は出来てるよ」

「ではもう完成が?」

「うん」


Drロイは近くの機器へと歩み寄る。


「これが君の専用機になる、SPP02/NS。『シュバルツェア・レーゲン』だ」


ライトが灯るとそこには黒を基調とした装甲に二対の非固定ユニットを装備したISが鎮座している。これが……。


「ストライクの戦闘データを元にし、ストライクのように背部直接装備ではなく、非固定ユニットにストライカーを装備することが可能となった試作機だ。見た目と名前は違うけど、れっきとしたストライクの兄妹機になるね。あとこれ」


Drロイはブック型の端末を手渡す。


「それにレーゲンのデータが入ってる。しっかり目を通しておいてね」

「はい、これ程までのISを私に託してくださり感謝します」

「いいんだよ、君にこれを託すのは僕達の意思だ。スウェンが信頼している君にならこれをしっかりと使いこなしてくれる。僕はそう信じている。

「Drロイ……」


託された。私はこの言葉が胸に響く。
そうだ、私は託されたんだ。シュハイク責任官や皆から誇りを、Drロイ達には信頼を。
私は立派な隊長になって見せる。スウェン隊長が安心してこの部隊を戻って来れるように、部隊の皆が正しい道へ進めるように、私は……頑張らなければならないんだ。ヴェッター……私は……


 
 

 
後書き
この番外編の続きは本編が少し進んでから投稿しようと思います。

この作品のレーゲンはストライカーパックを非固定ユニットへと装備することが可能となった試作機となっております。ストライクの時代では、非固定ユニットへの装備がままならなく、直接背部に装備することでしか機能しないものとなっております。

次回「呼ばれる由縁」。お楽しみに! 
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