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ソードアート ・オンライン 〜鋼鉄の城に輝く星々〜

作者:びーの
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エピソード8 〜食事会とパーティ結成!?〜

第61層の主街区《セルムブルク》は華奢な尖塔を構えた城塞都市でその市街は白亜の花崗岩で作られた家が並び、その風景は綺麗の一言に尽きる。
そして、この街はそれなりに店が豊富でここをホームにしているプレイヤーも少なくない。
だが、どの部屋もとんでもなく高額なためここに住んでいるのは、相当額稼いでいるハイレベルプレイヤーということになる。

四人が転移門をくぐり、ここに着いた時は既に日が暮れかかっており、夕焼けがなんとも綺麗だった。

「う〜ん、ここは広いし人も少ないし、開放感あるなぁ」

「確かに空気が澄んでいて、いいところだな」

「なら君達もここに引っ越せば?」

「金が圧倒的に足りません」

「じゃあ、リョウト君とユウカちゃんは?」

「私はフローリアにホームがあるから、そのから引っ越すのは流石にねぇ〜」

ユウカの口からフローリアという単語を聴いた途端、大きく目を見開いて驚きを露わにするキリトとアスナ

「あはは、見事におんなじリアクションだね、二人とも」

ユウカの言葉に顔を真っ赤にする二人

「と、ところでリョウト君はどこにホームがあるの?」

「俺のホームはサンクリアってところにあるぞ。気候はいいし、人も少ないしいいところだぞ。」


「………そりゃそうと、大丈夫なのか?さっきの…」
とキリトが遠慮気味にアスナに訊ねる

「…………」

「「…………」」

しばしの沈黙の後、先頭を歩いていたアスナが振り返る

「……私一人の時に嫌なことがあったのは確かだけど、護衛なんて行き過ぎだわ。要らないって言ったんだけど……ギルドの方針だからって参謀職の人たちに押し切られちゃって…」

「昔は団長が一人ずつ声をかけて作った小規模ギルドだったんだよ。けど、どんどん人数が増えて、メンバーが入れ替わったりして………最強ギルドなんて言われ始めたころからおかしくなっちゃった。」

少し物寂しそうに語るアスナ

「そうか…俺らはソロだからギルドのとかはわからない。けど、悩みがあるなら相談してくれ、きっと力になる。……キリトが」

「俺かよ!?」

「ふふふ、ありがとう。そうさせてもらうね。」
沈んでいた表情が一転し、晴れやかになるアスナ

(少しは元気になったか?)

「さぁ、早く行こう。じゃないと、日が暮れちゃうよ。」

再び四人は街路を歩き始める。





「お、お邪魔しま、「早よ、入れ!」ぐふっ」

玄関先まで来て今だ戸惑っているキリトを蹴り入れるリョウト

「お邪魔しま〜す」

「どうぞ」

中に入るとリビング兼ダイニングがあり、明るい色を基調とした家具が配置されており、アスナのセンスの良さがうかがえる。

「着替えてくるから、二人とも適当な所に座ってて。行こう、ユウカちゃん」

「はーい」

早々に女子二人は着替えるために部屋を出てってしまう。

「なぁ、これいくらぐらいかかってると思う?

着替えるために装備ウィンドウを操作していたら、即物的な質問をしてくるキリト

「ん〜、内装込みで四千kぐらいだろ」

「マジか…俺もそのくらい稼いでるはずなんだが…」

「まぁ、無駄遣いも程々にな」

そんな会話をしていたら、着替えにいっていたアスナとユウカが戻ってきた。アスナは簡素な白いチュニックに膝丈のスカート、ユウカは水色のTシャツとショートパンツという格好になっていた。

「それで、キリト君はいつまでその格好なの?」

アスナの指摘に慌てて武装を解除し、黒色のシャツと同色のズボンになる。
リョウトはいつの間にか雪の結晶があしらわれていた着物から簡素な紺色の浴衣に着替えていた。

「へー、リョウト君は浴衣か。意外だね。」

「まぁ、リアルでも浴衣とかで過ごしていたからな。楽でいいぞ。」

全員がラフな格好になったところでキリトをアイテムウィンドウを操作し、〔ラグー・ラビットの肉〕をオブジェクト化し、テーブルに置く。

「これがS級食材かー。で、どんな料理にする?」

「シェ、シェフのお任せコースで…」

「うーん、私も二人に任せるよ。」

「「ん?二人」」

アスナとキリトが二人揃って首を傾げる。

「え、俺もやるのかよ。」

「「リョウト(君)も料理するの!?」」

「なんか傷つくぞ…おまえら…」

(アスナはともかく、キリトには何回か食わせてやったことがあるんだがな。)

「え…リョ、リョウト君、スキルはどのくらい習得してるの?」

「完全習得だが」

「いつ?」

「一年前くらい」

ま、負けたと言って落ち込むアスナ。

(あー、そういえば、『先週、完全習得したわ』とかドヤ顔で言ってたな…)

「さて、メインはアスナに任せるから、俺は付け合わせとデザートを担当するぞ。」

「……そ、そうだね。ちゃっちゃと始めちゃおうか…」

少し涙目になりながら、調理を開始するアスナ。

アスナはラグー(煮込む)という名に従って、煮込み料理のシチューにする模様。リョウトはアスナが用意してくれた食材を使って、簡単にサラダを作り、それが終えるとデザートに取り掛かる。

「なんか、リョウトが料理って意外だな…」

「そうかな、あの見た目だから、そんなこと思わなかったよ。」

「あ〜、確かに。リョウトは中性的な服着たら絶対に男ってわからないからな。」

割と失礼な言葉を発してる外野にナイフが数本投げられたのは言うまでもない。

それから、数十分後料理が出来上がり食卓に並べらる。
キリトとアスナ、リョウトとアスナが向かい合って席に着き、食事が開始される。
うまさと豪華さが合間って一言も言葉が発せられないまま、食事を完食した。




「あぁ……今までがんばって生きてきてよかった…」

アスナの言葉に同感と頷く三人。

「不思議ね………。なんだかこの世界で生まれてずっとくらしてきたみたいな。そんな気がするの。」

「……俺も最近、あっちの世界のことをまるで思い出さない日がある。俺だけじゃないな……この頃は、クリアだ脱出だって血眼になる奴が少なくなった」

「攻略のペース自体おちてるわ。今最前線で戦ってるプレイヤーなんて、五百人もいないでしょう。危険度のせいだけじゃない……みんな、馴染んできてる。この世界に……」

「そりゃそうだろう…こっちの方が生きてることを実感できる。向こうで代わり映えのしない生活を送るより、こっちで多少危険でもスリルのある生活の方が楽しいのは確かだ。」

「でも、私は帰りたい。」

「そうだね…向こうでやりたいことはたくさんあるからね。」









「「「「・・・・・・・・」」」」

話がひと段落して、誰も喋ろうとせず、気まずい雰囲気が支配していた。
沈黙に耐え切れなくなったのか、それともこの場の雰囲気を変えるためかアスナがソロ三人組へと話題を切り出す。

「ねぇ、君たち、ギルドに入る気はないの?」

「「「え………」」」

「ベータ出身者が集団に馴染まないのはわかってる。でもね、七十層を超えたあたりから、モンスターのアルゴリズムにイレギュラー性が増してきてるような気がするんだ」

確かにと頷く三人

「ソロだと、想定外の事態に対処できないことがあるわ。いつでも緊急脱出できるわけじゃないのよ。パーティーを組んでいれば安全性がずいぶん違う」


「安全マージンは十分に取ってるよ。忠告はありがたく頂戴しておくけど……ギルドはちょっとな………それに…」

「それに?」

「パーティメンバーってのは、助けより邪魔になる方が多いし、俺の場合」

キリトがそう言った瞬間、鼻先に二本、首筋に一本ナイフが突きつけられる。
それを見たキリトは表情を引きつらせて、降参のポーズをとった。

「………わかった、あんた達は例外だ」

「「「そ」」」

三人はナイフを戻し、指先で弄ぶ。
すると、アスナがとんでも発言をしてくれる。

「なら、しばらくわたしたちとコンビ組なさい。ボス攻略のパーティーの責任者として、君たちがウワサほど強い人なのか確かめてみたいし。約一名にはわたしの実力も教えて差し上げたいし。あと今週のラッキーカラー黒だし」

「なんだそりゃ!?」

「え?私も!?」

「約一名って俺!?あ、俺のテーマカラーは青色なので「リョウト君もね。」……はい」

キリトとユウカがおどろいたような声をあげて、一人逃げようとしたリョウトはアスナに目がまったく笑っていない笑みをむけられ、強制参加させられる。

そして、キリトはまだ納得していないのか反対材料を探す。

「お、お前ギルドは」

「うちはべつにレベル上げノルマとかないし。」

「じゃ、じゃあ護衛は?」

「置いてくるし」

魅力な誘うを断るネタがなくなり、時間稼ぎのつもりかティーカップを口元に運ぶがすでに中身は空だった。アスナが澄まし顔でそれをひったくり、ポットの熱い液体を注ぐ。それを受け取り、口をつけるが表情は優れないキリト。そして…

「………最前線は危ないぞ」

という言葉が響いた瞬間、アスナの右手のナイフが持ち上がり、今度はライトエフェクトを帯び始めた。それを見たキリトは慌てて頷き事なきを得た。
そして、半ば強制的にパーティー結成を約束させたアスナは最後に全員に言った。

「じゃあ、明日朝9時に74層のゲート前に集合ってことで。」

その言葉に対し、首を横に振る者はいなかった。





流石に女性の部屋に夜遅くまでも居るべきではないので、豪華な食事会はお開きになり、キリト、リョウト、ユウカの三人は帰ることにする。そして、アスナが階段を降りたところまで見送りに来てくれる。

「今日はご馳走様。」

「まぁ、こっちも料理する手段が無かったからな。助かったよ。」

「今度は俺がご馳走するよ。」

「ふふっ。楽しみにしてるね。」

そうして、四人は名残惜しそうに空を見上げるが夜の暗闇に星の明かりは呑まれ存在しない。鉄の蓋に閉ざされた空を見上げていたキリトがポツリとつぶやく。

「……今のこの状態、この世界が茅場の作りたかったものなのかな……」

しかし、その呟きに答えられるものはこの場にはいなかった。 
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