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世にも不幸な物語

作者:炎花翠蘇
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第三章『御説教』

               ~数日後~

 ○月□×日水曜日、天気は晴れ。
 輝は三途の河を渡る舟の上で空を見ていた。
 初めてここに来たとき、三途の河にも晴れがあるとは思わなかった。
 小町に拉致・・・もとい連れられてから早数日。
 まさか三途の河で船頭することになるとは、夢にも思わなかった。
 正確に言えば、生前船頭だった屍を操っているにすぎないが。
 小町は何をしているのかと言うと・・・木の上でお昼寝中。
 小町曰く、怪しい奴が来ないか見張っているらしい。
 船頭の仕事を輝にすべて押し付けて。
「はぁ~、いい天気だな~」
 一人呟き、後ろを見た。
 後ろには無数の魂がいて、舟の最後尾には屍船頭がいる。
 魂を見たときは驚きて引いていたが何回も行き来しているせいか慣れてしまった。
 今こうして見てみると、なんだか面白い風景だ。
 三途の河はもっと暗くて怖いイメージがあったが、とても和やかな風景だ。
 空はいい天気で河は綺麗で澄み切っていてとても静か。
 舟の上はというと、賑やかに見える。なぜなら、魂たちが喋っているような動きをしているからだ。
 初めはただふよふよと浮いているかのように見えていた二つの魂を見ていたら、片方だけが動いていたり、止まっていたり、すごいときはぶつかり合ったりする。
 小町に聞いてみたが、喋っている、と答えた。なんで喋っているなんて分かるんですか?と聞き返したら。よくあたいと喋っているから、と答えた。流石死神、と輝は納得した。
 賑やかに見える魂を見て、自分も喋れたらいいな、と輝は胸中で呟く。
 暫くしたら舟が遅くなり、岸に到着した。
 ここの岸には辺り一面に彼岸花が咲いている。
 ここに初めてきて輝がぼんやりと見えていた赤い花だ。
 この岸に連れてこられた時、輝は流石三途の河と思ってしまった。
「さてと、仕事仕事」
 先に降りて魂の誘導を始めた。
 降りた場所には生前警備していた屍を二体出している。
「一人ずつ降りて一列になって誘導に従って進んで下さい。慌てなくても平気ですよ。そこ、二列にならないで下さい」
 この作業は、遠くまで続いている彼岸の花畑で作っている道をただ誘導するだけのこと。
 今となっては魂を誘導する作業も板についてしまった。
 悲しくなる。
 一通り魂の誘導を終わらせて小町を呼び(起こし)に行く。



  小町いる場所は、舟から降りた所から少し離れた木の上にいる。
 よく寝ている。
「はぁ~・・・。また寝てるよ」
 初めのころは、寝ている小町を見てムカついて怒鳴って起こしたが、この数日間で小町に就いて分かったことは、よく仕事をサボり、よく寝ることが分かった。
 良くこんなに寝られるなと呆れる位寝ている。
 今までよく問題にならなかったな、と輝は思った。
「小町さ~ん、起きてくださ~い」
「・・・・ん?もうそんな時間かい?」
「早く朝飯食べましょ~よ~」
「そんなに慌てなさんな」
 小町は木から飛び降り、背伸びをした
「ん~~~はぁ、いやぁよく寝たぁ」
 寝すぎだ。
「アキ、もう少し仕事しても良かったのに」
「残念でした。時間切れです。」
 時間切れと言うのは、屍のことである。
 この数日間で屍を操る能力のことがだいたい解かってきた。
 屍を出せるのは四体まで、無理に五体目を出すと体力がすごく削られ三~五分も持たない。屍を出して操れる時間は二十分、二十分たつと自動的に屍たちは地に帰っていく。その後は、どんなに頑張っても屍を出すことはできない。五分たてばまた使えるようになる。
 今まで使ってこなかったから自分の能力を知る上ではいい勉強になっている。
「アキ、もう少し時間を延ばすこと出来ないかね?」
「無理です」
「あっさり言うねぇ」
 小町は輝の即答にやや呆れている。
「どんなに頑張っても二十分が限界なんです」
「男なんだから、その限界を超えて見ようとは思わんかい?」
「何でそんな暑苦しい話になるんですか。もし超えられたとしても、絶対に伸ばしません」
「なんでだい?」
 不思議そうに訊ねた。
「あなたの寝る時間が増えるからです」
「寝ているとは失礼だね」
「涎、垂れていますよ」
「!?」
 小町は慌てて口元を拭いた。
 これでも一応死神なんだよな、と思いなが彼岸の花畑を眺めていた。
 輝は小町が持ってきたおにぎりを一口食べて考えていた。
 この道の先は何があるのだろう。
 ここが三途の河だから閻魔様がいる所なのだろう。
 一様小町に聞いてみることにした。
「小町さん」
「ん?」
「この道の先にあるのは、閻魔様がいる所ですか?」
「なんだいいきなり。まぁ、アキが言うようにこの道の先は映姫様がいる所だが」
 聞きなれない名前が出できて輝は聞き返してしまった。
「えいきさま?」
「閻魔様の名前」
「へぇ~」
 閻魔様にも名前があるのか、と輝は驚いた。
「で、なんでそんなこと聞くんだい?」
「挨拶に行かなくてもいいのかな~、て思って」
「え!」
「なんで驚くんですか」
「い、いや・・・なんでもないよ」
 そう言いながら、小町は輝から目を逸らした。
「目線逸らしながら言っても説得力ありませんよ」
「でもなんで挨拶に行こうと思うんだい?」
「だって、挨拶とかなくちゃ失礼かなと思ったから」
「そ、そんなことしなくていいよ」
「・・・・」
 小町の反応を見るとなんか怪しく感じる。
「なんだい、その目は」
「なにか・・・隠し事していませんか?」
「!」
 その時、小町の顔が一瞬引きつった。
「やっぱりなんか隠してる!」
「いやいやいや、なんにも隠してない」
「そんじゃ行きましょうよ」
「今日は体の調子が・・・」
「ついさっきまで涎を垂らして寝ていたのはどこのどなたでしたっけ?」
「うっ!」
 小町の反応からにして絶対に輝のことを閻魔様に報告していない。
 それもそのはず、輝を使って仕事をサボっているのだから。本来小町がするはずの仕事を外から来た人間にその仕事をさせているのだからに見つかったら、ただではすまないだろう。
 今この数日を思い返すと、不審な点があった。
 輝に寝袋を貸しここで(彼岸の花畑で)寝るよう指示し、ご飯は朝昼晩小町が持ってきたおにぎり二つに漬物少々、最初の頃は気にもしなかったが今となっては不自然すぎる。
「なんで合わせてくれないんですか?」
「・・・・・え―――い!ごちゃごちゃ言っているとこうだ!」
 小町がそう言って輝が持っている最後のおにぎりを奪っていった。
「あ――――!俺の唯一の食料――――!!返して下さい!」
 抵抗も虚しく、おにぎりは食べられてしまった。
「くそ――――!おにぎりの仇――――!」
 輝の食料は、小町が持ってくるおにぎりと漬物しかないためかなり貴重な食料である。
 おにぎり二つでぎりぎり腹が持つのに、まだ一つしか食べていない輝は小町に襲い掛かった。
「あたいに襲い掛かるとは、千年早い!」
 輝の攻撃をするりとかわし、輝の後ろを取りヘッドロックを掛けた。
「ぐげ!」
 直ぐ解こうとしたが力が強くて解けなかった。
 しばらく抵抗していると、輝の後頭部になにやら柔らかいもがあたっている。
(まさか!)
「こ、小町・・・さん」
「なんだい、もうギブアップかい?」
「む、胸が・・・・」
「胸がどうしたって言うん・・・・はは~ん」
 小町は不適な笑みを浮かべていた。
 もしかして小町の胸が輝の後頭部にあたって慌てているのを見抜かれてしまったか。
「アキって案外、初心なんだねぇ」
 見抜かれていた。
「だったらもっと、こうしてやる!」
 小町はよりいっそう力を入れた。
 そしてより後頭部にあたる柔らかい感触も増した。
「ぐ!」
 小町は首を絞める力を入れたより、輝を自分の胸に押し付ける力を強くしている。
 輝は顔が赤くなる感覚が自分でも分かるぐらい赤面していた。
 なんかもう色々とヤバイ。このままだと鼻血を出しかねない。
「ほらほら、どうした~☆」
 小町は面白がっている。
 ああ、以前闇風が純粋で真っ白、と言った意味がやっと理解した。
「もう・・・げんか・・・・・いだ」
 輝は鼻血を堪えるに限界がきて出しかけたその時。
「随分と楽しそうね、こ・ま・ち♪」
 女性の声がした。
 女性が小町の名前を呼んだ途端小町は硬直し、輝は小町から簡単に逃げ出すことが出来た。
 小町から離れて輝はすぐさま自分の顔を冷ました。
 輝は顔を冷ましながら声がした方を向いた。
 その女性は、髪は黄緑色で肩まで伸ばしている。背は輝より低い。服はどっかの民族みたいな服だ強いて言うなら昔の中国の服に似ている。手には閻魔様が持っている棒を持っている。もしかしたら、この人が閻魔様なのかもしれない。
 女性は仏頂面で小町を睨んでいた。
「映姫様!何でここにいるんですか!?」
 どうやらこの人が閻魔様らしい。
「何でじゃないわよ!」
「ひ!」
 流石閻魔様、怖い。
 小町もえらく怖がっている。こんな小町を見るのは初めてだ。
「アンタが珍しく仕事していると思ってみたら!何なのこれは!!」
 怒鳴りながら輝を指差す。
「何で外の人間がここにいるの!!」
「えっっと・・・・あたいが・・・寝ている間に・・・・やってきた・・・」
「小町!!」
「はひぃ!」
 あまりにもの恐ろしさに声が裏返っている。
「小町、私を誰だと思っているの?」
 閻魔様はずかずかと小町に近づきながら言っている。
 小町の顔は青ざめていた。
「部下の嘘も見破れないで閻魔なんてやれる訳ないでしょうが!!」
「ひぃぃぃぃぃぃ」
 確かにその通りだ。
 嘘を見破れない閻魔様なんておかしいにもほどがある、と思った。
 そのあともクドクドと小町に説教をしている。
 しばらくしたら輝の方を向き、輝に近づいてきた。
 近くで見るとやはり背が低い。
 閻魔様は見上げるように輝を見ている。少し屈もうと思ったが怒られそうなのでやめた。いくら背が低かろうと相手は閻魔様なのだから、そんなことしたらどうなるか分かったものじゃない。
「所であなたの名前は?」
「え?あ、輝です」
 突然聞かれて少々驚いてしまった。
「アキラね」
「はい、輝くと書いて輝です」
 閻魔様は、再確認するかのように輝の名前を言った。
「あの~、あなたの名前は?」
「あ、まだ名前言って無かったわね。私の名前は、四季映姫・ヤマザナドゥ。よろしく」
「はい、よろしくお願いしっ    」
 バァコォンッ!!
 ます、と言い終える前に映姫が持っている棒でおもいっきり頭を叩かれて、輝は宙を舞った。輝は飛んでいる時間を長く感じながら地面に落ちた。地面に落ちても叩かれた勢いが止まらずゴロゴロ転がり小町の所まで転がった。
「いっっってぇぇ―――――――!!」
 映姫に叩かれた場所は尋常じゃないほど痛かった。血が出ていないのが奇跡としか思えない。
 映姫は輝を叩いた棒で、肩を叩きながら近づいてきている。
 叩かれた場所を手で押さえながら小町に手を貸してもらい起き上がった。
 そして、映姫は輝と小町の前に立った。
 訳が解からない位に混乱していた。
 何で何時も俺ばっかりこんな目にあうんだ。何で?どうして?なぜこうなった?もう何がなんだか解からない。
 その時、輝の中で言いようの無い怒りが芽生え。
 そして
「いきなり何をするんですか!人の頭を叩いて!!」
 爆発した。
 小町は輝の行動に目を丸くした。
「いくら閻魔様でもやっていい事と悪い事ぐらいあるでしょ!!」
 怒鳴り続ける。
「人が挨拶している最中に頭を叩きますか?ありえないでしょ普通!?それに    」
 尚も怒鳴り続ける。
 その後の内容は、さっきのこととは関係の無い事を言っていた。
 自分でも、このなんだか分からない怒りを止めることができなかった。今までの不安や怒りをぶつけているに等しい位に怒鳴っている。例えぶつけている相手が閻魔様だろうと・・・。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
 息が上がるまで怒鳴っていた。
 始めてだった、人に向かってこんなに怒鳴ったのは。
 息を整えたら頭の血が下がってきて、今自分が何をしたか今になって後悔した。
「落ち着きましたか?」
 映姫が心配するでもなく聞いてきた。
「・・・・・」
 言葉が出てこなかった。
 輝は死を覚悟して映姫を見た。
 溜息をついて輝のことを真直ぐ見て言葉を放った。
「あなたが言いことはよく解かったわ。でもね」
 宥めるように言ってきたのは、慰めて言ってきたのか、哀れみで言ってきたのか分からない。
 だけど、なんだかほっとした。もしかして慰めてく      
「怒鳴りたいのは、こっちよ!!!」
 れるわけなかった。
「あなたたちおかげで今地獄がどんだけ大変なことになっているか解かる!!?」
「大変なことになっている、てどんなことになっているのですか?」
 小町が聞いた。
「あんたはそれでも死神か―――――――――――!!」
「すみませぇ―――――――――ん」
 確かにそうだ。
 毎日帰っているのなら異変に気付いてもおかしくない。
「魂たちで溢れ返っているのよ!」
「本当ですか!?」
 驚いて思わず聞いてしまった。
「嘘言ってどうするのよ!!」
「すいません」
 当然の如く、怒鳴られてしまった。
 映姫が魂たちで溢れかえっている、と言っていたが地獄でもそんなことが起こるのかと正直信じられない。
 実際に、閻魔様である映姫がこんなに怒っているのだから本当の事なのだろう。
「サボるのは何時もの事だけど、まさかあなたがこんなミスをとは・・・」
 額に手を置きながら溜息をついた。
 映姫の様子を見て輝は何だか罪悪感を感じた。
 小町に言われた通り魂を運んでいたから何にも考えずにやっていたらまさかこんな事になるとは思いもよらなかった。
 輝は素直に謝って罰を受けようと決心した。
 謝ろうとしたら、ふと小町が言ってきた。
「映姫様」
「なによ?」
「お言葉ですけど、魂を運んだのはあたいでは有りません」
「「?」」
 小町の言っていることがよく解からなかった。
 一拍して小町は信じられないことを言った。
「魂を運んでいたのは・・・・。アキです!」
 人差し指を輝に向けて、堂々と言った。まるで探偵が犯人に指を差すかの用にビシッ!とポーズを決めていた。
「たしかにあたいは仕事をサボり木の上で眠っていた」
 推理を述べている探偵のように語り始めた。
「だけどおかしくありません?」
 あんたのほうがよほどおかしいよ。
「あたいは木の上で眠っているのになんで魂が運ばれるのですか?」
「!」
 またしても嫌な予感がした。
 幻想郷に着てから嫌な予感が的中しているから輝は外れていることを神に祈った。
「もう気付かれましたか。そう、犯人は」
 神よ!
「お前だ!アキ」
 またポーズを決めていた。
 これで何回目だろう、嫌な予感が当たったのは。そして、神は恨みでもあるのだろうか?
 小町は完璧な推理を言ったかのように顔は清々しかった。
「クックックッ・・・・・・・ハッハッハッハッハッハ」
「何が可笑しい」
「ハッハッハ・・・・・・ふぅ」
 一息つき。
「ふざけるなぁ―――――――――――!!」
 輝、全力のノリツッコミ。
「なぁ――にが『犯人はお前だ!アキ』ですか!」
 いくらなんでもツッコミを入れる。このまま犯人にされたら堪ったもんじゃない。こっちだって被害者なのだから。
「言わせてもらいますけど、小町さんの説明のしかたが悪いのではないですか!」
「なんであたいのせいになるんだい!」
「小町さんは『適当に魂を舟に乗せてここに運んできてあたいは木の上にいるから』しか言ってませんよ!」
「あたいが何時そんな適当な説明をした!」
「言いましたよ!」
「言ってない!」
「絶対に言いました!」
「絶対に言ってない!」
 このあとも輝と小町は罪の擦り合いを続けた。
 その光景を見て、今まで黙っていた映姫は痺れを切らし。
 そして
「だまりなさいッッ!!」
「「!」」
 映姫の鶴の一声で輝と小町は黙った。
 輝と小町はゆっくりと映姫の方を向いた。
「二人の言いたいことは解かったわ・・・」
 ゴクン
 輝と小町は互いに唾を飲み込む音がハッキリ聞こえる位、その場が静まり返った。
「二人仲良くお説教ね☆」
 映姫はニッコリと笑っていない笑みで言った。
 初めて笑っていない笑みを見た。これほどまでに恐ろしいものとは、しかもその笑みをしているのは閻魔様なのだから恐ろしいことこの上ない。
「たッッッぷり5時間お説教してあげるから覚悟しなさい」
 5時間もお説教するのか、相当ご立腹なようだ。
「言っておくけどまだ温い方だから、5時間」
 まだ温い方なのか、5時間お説教。
 輝がそんなことを考えていたら小町が不審な行動をとっていた。
 それを見て透かさず小町の腕を掴んで逃げないように捕らえた。
「アキ、何をするんだい?」
「一人で逃げようなんて、そうはさせませんよ」
「裏切る気かい?あたいを」
「お相子です」
 一人で映姫のお説教を聞くなんて絶対に嫌だ。一体何をするか考えただけで恐ろしくてたまらない。
「でかしたわ。輝」
 今の状況だと褒められても嬉しくも無い。
「さぁ、早く地獄に行きましょう」
 映姫は歩きながら言い。少し行った所で
「たっぷりお説教してあげる♪」
 振り向きながら楽しそうにいった。
「「い~~~~~~~や~~~~~~~!!」」

その後、輝たちはたッッッぷりと5時間映姫のお説教を受けたのであった。
 
 

 
後書き
自分が思ってる地獄の設定にしてみました(汗)
色々と違和感があると思いますけど、多めに見てください m(_ _)m 
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