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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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ゼロ魔編
  028 ≪竜の羽衣≫のあれそれとカレとカノジョの関係


SIDE 平賀 才人

「本当に零戦は要らなかったの? ……睡眠入ったよ」

「ああ。ぶっちゃけ、使い道が判らなかったし。……おk、把握。直ぐにタルG置く」

宝探しから学院に戻って来た日の夜。ユーノが部屋に訪ねて来た。ユーノと──ユーノは二人きりなので前世の口調で、地球で買った携帯用ゲーム──PSPっぽいモノでユーノと協力プレイをしながら四方山話をしていると、いきなりユーノが思い出した様に訊いてきた。

ユーノの言う通り、俺は零戦を貰わなかった。あの時の事を思い出す。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……纏めると、サイトの母親は東方──ロバ・アル・カリイエ出身で、サイトがこれ──零戦を知っているのはサイトの母親が持っていた書物に〝これ〟が載っていたからなのね?」

「Exactly(その通りにございます).」

俺はとりあえず、ルイズが纏めた様に嘘と真実を交えつつ皆──ユーノを除く皆を丸め込んだ。

「で、この≪竜の羽衣≫はロバ・アル・カリイエの乗り物で、そこの学院のメイドちゃんが言っていた通り、これを使えば空を飛ぶ事が出来ると?」

「燃料さえ有れば──とは注釈は付くけどな。状態が良いから〝ガソリン〟さえ有れば直ぐに飛べるよ」

「………俄には信じられない」

ルイズの纏めにキュルケはいつぞやの様に捕捉し、タバサが零戦へと胡乱気な──されど興味有り気な視線を向ける。

「その〝ガソリン〟って?」

空気になり掛けて、セリフの少なかった──セリフが無かったモンモランシーが、何かの琴線に触れたのか訊ねてくる。

「ガソリン…まぁ、とりあえずは〝これ〟を飛ばすエサの様な物だと思っておいてくれ──あ、そういえばこの前にコルベール先生が授業で言っていたな」

「あ、確か…油と火で動力を得る機関でしたっけ?」

「ああ。零戦は〝あれ〟の延長線上にあるモノだ」

そう考えるとコルベール先生の奇妙な〝あれ〟は、魔法が絶対視されていて、科学技術の進歩が芳しくないこのハルケギニアでは、かなりのオーバーテクノロジーだと云える。

閑話休題。

「≪竜の羽衣≫。在ったには在ったけど、流石になぁ……」

「それもそうよね……」

俺とキュルケは落胆する。この村の大切な物なら頂戴する訳にはいかない。……“魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)”が有れば、移動の〝足〟には困らないし、使い道も無いし場所をとる──否、〝倉庫〟に入れればの無問題(モーマンタイ)だが、零戦とはお別れする事になった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーッッッ!!!』』

今ユーノとやっているソフトは多人数で巨大なモンスターを狩るゲーム。……設置した爆弾を爆発させたら討伐対象のモンスターが猛々しい断末魔を上げながら息絶えた。

「……そういえば、ボク達が揃って死んで〝シュウ〟はどう思ってるかな」

ユーノは何かを探る様に訊いて来る。

「……さぁな。でも、後悔してるかもな。多分だが」

「〝シュウ〟だけ来れなかったもんね。あの時」

……姫川 秋夜(ひめがわ あきや)。本人の望み通りに、〝シュウ〟と呼んでいた。シュウは俺とユーノが中学生に上がった時に初めて会った男で、俺の当時の外見と口調から、俺の事を不良だと思ったのか出会った当日に絡まれた。そして色々あって──喧嘩とか喧嘩とか喧嘩があって、ついぞ意気投合してしまった。何故か。

「シュウとの出会いは強烈──と云うか、前時代的だったな」

「ああ、最後は黄昏時の川原の土手で殴り合ったんだっけ?」

「昭和のヤンキーか!? って突っ込まれたもんな」

……そこで気付く。未だに過去──前世を吹っ切れてない事に。それも、俺だけで無くユーノも前世を吹っ切れて無いようだ。

「止めようか」

「そうだね」

俺とユーノはほぼ同時にPSP──っぽい携帯ゲーム機をスリープモードにする。同時に前世の話についても栓無き事と知っているので中断する。……最早、俺とユーノの間では前世の話は暗黙の了解となっている。

……因みに電気については、“魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)”でコンセントの差し込み口が有って、カロリーを電気に変えられる──そんな〝魔獣〟を創った。トリスタニアに在るバレッタさんの家も──バレッタさん本人の許可の許、色々と魔改造してある。

閑話休題。

「……話は変わるけどさ、ボクに──ううん、ボクとルイズに女性的な魅力って無い?」

(……つい来たか…)

ユーノは目を仄かに潤ませながら訊ねてくる。……俺が一人部屋になってから数週間。夕食後、ルイズかユーノが交代で消灯時間まで入り浸っている。

……正直、ルイズやユーノが時折そんな目で見ているとは知っていたし、いつかはこんな事を訊いてくるとは思っていた。

「……有るか無いか言ったら有る」

爵位──はルイズの取り計らいで〝シュヴァリエ〟になった以上、理由としては使えない。……とある理由からルイズがこの学院を卒業して、俺の身分がフリーになったらかな~~~りエグい状態になるし。

(……あれ? 何でバレッタさんには手を出したんだ?)

……そもそも、地球側で中3の頃に、俺は2つ年上のオネーサン〝達〟に〝喰われて〟いる。バレッタさんにも手を出している。ルイズにも手を出しそうになった。……それならば、何故ユーノには手を出そうとしないのか──

(……あっ)

「……ルイズもね〝サイトが貴族になったのに手を出して来ない〟って、落ち込んで──」

「ユーノ」

「…たよ? ……ん?」

〝サイトが貴族になったのに手を出して来ない〟……短慮なルイズの思考回路に突っ込みたくはなるが、それよりは今対面しているユーノに言わなければならない事──謝らなければならない事がある。

「ユーノ、君に謝らなければならない事がある。……割と下衆な事を言うかもしれない」

「……とりあえずは聞くよ」

「ユーノが──いや、円が中学生に上がる前。……ユーノならここまで言えば判るよな?」

「……やっぱり気が付いていたんだね。……思ってたんだ。人の感情の機微に鋭かったサイトが──真人君なら気付かないはずが無かったって。……まぁ、これは死んで生まれ変わって、落ち着いてから客観的に考えたから判った事なんだけどね。恋は盲目って云うけど本当によく言ったモンだよねぇ」

本当に可笑しそうに笑うユーノ。

「わっ!? ……サイト?」

俺はそんなユーノを自分でも気が付かない内に、強く──されど、ユーノが痛みを感じない様な力の塩梅でユーノの事を抱き締めていた。

「怒って…ないのか?」

「……怒るも何も、普通に考えて男が男に〝好き〟って言われてもリアクション取れないでしょ」

カラカラとユーノは笑う──本当に気にしていない様に笑う。

「でもね」

そう言い、ユーノはブラウスのボタンを1つ1つ──また1つと上から順に外していく。俺は堪らず目を逸らそうと──

「駄目。今だけはボク──ううん、〝私〟──ユーノ・ド・キリクリを見て下さい。……サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ、私は貴方を愛しています。なので、私を〝女〟にして下さい──私をサイトだけの女にして下さい」

目を逸らそうとしてユーノにそれを阻まれる。煌々と煌めく双月の光を反射させる金髪。ブラウスの半分以上がはだけていて、そこから見える着痩せしているのか目測より数センチ大きなバスト。目を潤ませながら仄かに染められた頬。これらを全てひっくるめたら、それはかとなく扇情的で蠱惑的な格好だと云える。

「……ん…」

一つ屋根の下にうら若き二人きりの男女。時間帯は地球ではあり得ない双月が煌々と輝く時間。そこまでなれば、最早言葉は不要。ユーノの唇を強引に奪い、そのまま情事へと縺れ込んだ。

……こうして、俺にとってのユーノ・ド・キリクリは〝トモダチ〟から、〝愛しい人〟になり大切で大事な存在へと相成った。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「あ~、ルイズにはなんて言い訳しようか?」

〝栗の花の様な〟匂いが充満していたので、窓を開けて風の魔法で空気を循環させながら換気する。……幾分か〝それ〟特有の匂いが緩和された時、ユーノは胸元から下をシーツで隠しながらそんな事を呟いた。

ベッドのシーツに赤い〝シミ〟の様な物は軽くスルーしておく事にした。……それよりはユーノの口調が気になった。

「あれ? 口調は?」

「う~ん、口調についてはどっちも〝ボク〟でどっちも〝私〟だと思うんだよね。まぁ、サイト以外の前だと丁寧語なのは変わらないけどね。……それよりルイズだよ。一体、どうやって説明するの?」

「……ルイズの親ってさ、もしかしたらだけど、その…かなり──」

「うん、憚らずに言うと親バカだね。……でも何で知ってるの?」

「バレッタさんの店に次女を治してくれとの書簡が届いていたんだ。あれなら少なくともトリスタニア中には届いていただろう」

「成る程……」

「そこで1つラ・ヴァリエール公爵に持ち掛けるつもりだ。……ルイズを抱く云々はそれからだ」

「それはアリだね。……それよりも、どうしてあんなに〝巧い〟のかなぁ~?」

ユーノは鷹揚に頷くが、突っ込まれることには突っ込まれた。

SIDE END 
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