| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百九話 戦いが終わりその十

「いい食べっぷりだよ」
「はい、食うことは好きです」
「いや、それは誰でもだよ」
 食べることが嫌いな人間はいない、これは絶対だ。
「けれど君のその食べっぷりはね」
「そんなにですか」
「いいよ、体格もいいし」
 長身ですらりとしているが引き締まっていて筋肉質だ、そうしたところも見ての言葉だ。
「スポーツをしているのかな」
「剣道をしています」
「ああ、じゃあ上城君と一緒だね」
「はい、そうなんです」
「では上城君とうちの娘とは剣道で知り合ったのかな」
「はじめはそうでした」
 中田はこのことは包み隠さず話した。
「それで今も仲良くしてもらっています」
「いえ、僕達の方こそ」
「何かとお世話になってるのよ」
 上城と樹里は樹里の父にこう言った。
「中田さんには何かと」
「助けてもらってて」
「いやいや、助けてもらったのはこっちだよ」
 中田は上城達だけでなく聡美達も見て笑顔で述べた。
「何かと」
「つまりお互いにってことだよね」
 樹里の弟がここでこう言った。
「つまりは」
「ははは、そうなるな確かに」
「中田さんも上城さんもそれでお姉ちゃんも」 
 弟は樹里も含めてそうだと言うのだった。
「それにこちらのお姉さん達も」
「ああ、俺は本当に助けてもらったよ」
 感謝を含んだ言葉だった、これ以上はないまでに。
「お陰でまた楽しく暮らせる様になったよ」
「それはいいことだよ」
 樹里の父は素直に述べた。
「君が今幸せならな」
「そうですね、じゃあ初対面ですけれど」
「これからもね」
「宜しくお願いします」
 中田はこう樹里の父に挨拶をした。
「娘さんにもお世話になっています」
「それは何よりだよ、ただね」
「ただ?」
「君彼女はいるのかい?」
 こう上城に問うのだった。
「悪いが樹里はね」
「ああ、彼女ならもういますんで」
 今は既にというのだ。
「何も気遣いなく」
「そうか、それなら何よりだよ」
「というか中田さん彼女いたんですね」
 上城は目を瞬かせて彼に問うた。
「そうだったんですね」
「あれっ、言ってなかったか?」
「いないとか聞いた記憶が」
「そうだったか?まあ今はな」
「おられるんですね」
「ああ、そうだよ」
 こう笑顔で上城に話すのだった。
「有り難いことにな」
「それは何よりですね」
「もう俺もな」
 中田は満ち足りている笑顔でこうも言った。
「人並みにな」
「幸せに、ですね」
「家族も戻ってきたしな」
 彼が愛するその家族達がというのだ。
「だからな」
「普通の人としてですね」
「暮らしてな、楽しく」 
 そうしてというのだ。
「やっていきたいからな」
「そうですね、僕も」
「そうだろ、これからはな」
「ですよね、普通に」
「ああ、それでな」
「それで?」
「今度稽古しないか?一緒に」
 中田からだ、上城に対して笑顔で提案したのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧