美しき異形達
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第十五話 白と黒の姉妹その十一
「力持ってるかもな」
「その可能性は高いと思うわ」
菖蒲も薊のその読みを否定しなかった。
「私も」
「やっぱりそうだよな」
「けれどね」
「決め付けることはな」
それは、というのだ。
「駄目だからな」
「決め付けてはそれで終わりよ」
「先入観が出来るからだよな」
「ええ、だからね」
決め付けてはならない、菖蒲は薊に忠告した。そして実際にだった。
薊は疑ってはいても決め付けなかった。黒蘭のことはそう考えるのだった、そのうえでこの日の学園生活も過ごした。
そして部活の帰りに裕香と合流して寮に戻る時にだ、不意に。
後ろから気配がした、殺気に満ちたその気配に振り向くと。
怪人がいた、今度は半魚人を思わせる白い怪人だった。
魚そのままの顔を見てだ、裕香が言った。
「ピラニアよね」
「ああ、鋭い歯一杯あるしな」
見れば魚の口からそれが出ていた、小さいがナイフの様に鋭い。
「間違いねえな」
「そうだよ、僕はね」
怪人の方からも言ってきた。
「ピラニアだよ」
「やっぱりそうか」
「そう、ただね」
「ただ?」
「ピラニアに人間の力も合わさっているから」
だからだというのだ。
「強いよ」
「強いのはわかってるさ」
薊は七節棍を出しつつ怪人に応えた。
「そういうことは」
「そうだね、君達も戦ってきているからね」
「ああ、それじゃあな」
「戦いをはじめようか」
「魚が水の上から出ると」
どうかとだ、薊は七節棍を構えつつこうも言った。
「普通は丘の上がった、だけれどな」
「そうだね、けれどね」
「あんたは違うよな」
「人間の力も合わさっているからね」
その通りだとだ、怪人も答える。
「陸でも平気だよ」
「そうだよな」
「魚に人間の力が合わさる」
それこそは、というのだ。
「強い証だよ」
「だよな、けれどな」
怪人の強さは認める、しかしだった。
薊は不敵な笑みを浮かべてだ、怪人に七節棍を構えつつこうも言ってみせた。
「あたしも強いんだよ」
「ではどちらが強いかね」
「確かめようか」
「今からね」
怪人は声に笑みを含めて返した、そうしてだった。
薊に対して水かきのある手に出した何かを投げてきた、それは平たく鋭い三角系に近い形のものだった。三角だが先が丸まっているそれは。
「薊ちゃん、あれは」
「鱗だよな」
「投げてきたってことは」
「手裏剣かよ」
その鱗が薊の心臓のところに来た、だが薊はその鱗を棒で叩き落として言った。
「これは」
「そうね」
「その通りだよ、僕の鱗は手裏剣になるんだよ」
怪人も鱗を投げてから答える。
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