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5部分:第五章
第五章
「後で食べる」
「またなの?」
「いいから」
夜もこの言葉を出した。
「本当にいいから」
「それじゃあいいのね」
「うん、いい」
こう言うだけだった。
「だから」
「だったらいいけれどね」
彼女はそれでその場を退いた。雪はまた一人になった。
その次の日である。そのまま一人で夕食になって部屋を出て風呂に入る。するとである。
「ねえ」
「えっ?」
「ちょっと御免ね」
こう言うとである。風呂に誰かが入って来た。今雪は湯舟の中にいる。その彼女が見たものは。
「レイちゃん?」
「顔見るのは久し振りね」
紛れもなく彼女だった。長い髪を後ろで上に団子にしてまとめておりその表情は明るい。赤い奇麗な唇とやや切れ長の目をしている。スタイルは胸は普通だが腰が大きい。背は一六五で結構高い。その背もあってかなりいいスタイルに見える。その彼女が全裸で風呂に入ってきたのである。
そうしてであった。笑顔で湯舟の中の雪に言ってきたのである。
「いいかな」
「いいかなって?」
「私もお風呂に入って」
笑顔でこう尋ねてきたのである。
「それで」
「いいってもう入ってるじゃない」
「じゃあいいのね」
「もう入ってるから」
湯舟の中で顔を俯けさせて言う彼女だった。
「仕方ないわ」
「じゃあそれでいいのね」
「いいわ」
こう返すしかない雪だった。
「一緒にね」
「有り難う。じゃあね」
こうしてレイラニも一緒に風呂に入ることになった。彼女はそのまままずはシャワーを浴びて身体を洗いはじめた。その身体を白い泡に包ませながらそのうえで雪に声をかけてきた。
「ねえ」
「何?」
「何か暗いね」
こう彼女に言ってきたのである。
「何かね」
「そうかな」
「気のせいかな。雪ちゃんと会うのは久し振りだけれど」
こう言ってからの言葉である。
「それでもね。前はもうちょっと明るかった気がするけれど」
「そうかな」
「そうよ。あのね」
ここでさらに言うレイラニだった。
「明日だけれどね」
「明日?」
「私アルバイト休みなのよ」
こう雪に言ってきた。身体を洗いながらである。
「それでね」
「それで?」
「明日何処かに行かない?」
明るく笑いながらの言葉である。
「何処かにね」
「何処かに」
「そう、何処か外にね」
「いいわよ」
雪はレイラニのその誘いをすぐに断った。
「そんなの」
「そんなのって?」
「そんなのいいから」
そしてまた断りの言葉を告げた。
「本当に」
「いいってどうしてなの?」
「何処にも行きたくない」
こう言ってしまった。
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