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久遠の神話

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第百九話 戦いが終わりその五

 二人で樹里の家に行ってそうしてパーティーの用意をした。父はその二人を見て首を傾げさせて尋ねた。
「あの、何をしているんだい?」
「えっ、パーティーの用意だけれど」
 樹里は鍋の湯を見つつ父に答えた。
「それだけれど」
「いや、それはわかるけれど」
「それでもなの?」
「何人分作るんだい?」
 父が問うのはこのことだった。
「一体」
「そうね、六人分。いえ」
「いえ?」
「お父さん達も入れて八人ね」
「それはまた多いな、というかお父さん達もか」
「うん、食べる?」 
 こう言って誘うのだった。
「一緒にね」
「本当にそうしていいのか?」
「いいわよ、お祝いなんだから」
「何のお祝いなんだ」
「ちょっとね」
 上城の顔を見てだ、樹里は微笑んでから父に答えた。
「いいことがあったのよ」
「上城君とか?」
「上城君によ」
 くすりと笑っての言葉だった。
「いいことがあったのよ」
「?昇段審査に合格したのか?」
 父の今の言葉に樹里も上城もはっと気付いた、確かに上城は二段だが二段になったのは彼が一年の時だ。
 しかしだ、樹里はここは笑ってこう言った。
「まあそんなところよ」
「そうか、上城君よかったな」
「あっ、はい」
 上城は戸惑いを隠しながら樹里の父に答えた。
「有り難うございます」
「やっぱり段があがるといいよな」
「そうですね、努力の介があったといいますか」
「それがあるからな」
「僕もそう思います」
 彼にしても、というのだ。
「本当に」
「そうだな、ではな」
「お父さんもお祝いで飲む?」
「ああ、そうさせてもらう」
 娘の誘いにだ、父も笑顔で乗った。
「そもそもそれが夕食だな」
「そうよ、そのことも考えて作ってるから」
「だからだな」
「一緒に食べてね」
 そのパーティーのご馳走を、というのだ。
「お酒もあるから」
「ワインだな」
「そう、ワインも飲んでね」
「何か本当に凄くいいことがあったんだな」
 また上城を見てだ、樹里の父は自分の娘に話した。
「何かわからないにしても」
「とにかく今日はお客さんも来るから」
「その人達ともか」
「仲良くしてね」
「そうさせてもらう、しかしお父さんもな」
 ここでだ、父はふとしみじみとした口調になってだった。娘にこんなことを言った。
「再婚しようか」
「あれっ、どうしたのよ急にそんなこと言って」
「いや、ずっと樹里には家事をしてもらってるからな」
「それはお父さんも同じじゃない」
「お父さんは洗濯とかだけだからな」
 だからだというのだ。
「樹里は料理とかもしているからな」
「それで私の負担になってるっていうのね」
「ああ、だからもうそろそろと思うんだがな」
「別に。苦労もしてないから」
「いいのか?」
「私に気を使っての再婚とかいいから」
 そうした理由での再婚はいいというのだ。 
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