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万華鏡

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第八十話 本番その八

「うちの学校のマラソン大会基本全員完走らしいのよ」
「あっ、そうなの」
「うん、ゴールした時先生達がちらっと話してるの聞いたけれど」
「参加したら」
「そう、怪我でもしない限りね」
 それでリタイアしない限りは、というのだ。
「全員完走させるらしいのよ、意地でも」
「意地でもなの」
「意地でもなのね」
「そうみたいよ」
「つまり意地でも単位取らせるのね」
 マラソン大会で貰えるそれをだ。
「学校側としては」
「だって学校にしてもね」
「学校にしても?」
「留年してもらったら迷惑だから」
「迷惑なの」
「生徒はちゃんと三年で卒業してもらわないと」
 入学したなら、というのだ。
「四年もいてもらったら面倒よ」
「まあ留年したいって人そうはいないけれどね」
「色々とあるからね」
 最早無意識で避けると言っていい、高校生達は。
「三年で卒業しないとね」
「それが学校の方も同じなのよ」
「三年でさっさと卒業してもらいたいのね」
「そうなの、あちらにしてもね」
「だからなのね」
「意地でも完走してもらってね」
 そして、というのだ。
「卒業してもらいたいのよ」
「成程、そうなのね」
「そう、誰でもね」
「シビアな話ね」
「だから追試もね」
 赤点だった場合のこれもだ。
「何度も何度も受けさせられるのよ」
「補習もよね」
「高校生活は基本三年よ」
 ほぼ絶対に近い三年だ。
「三年以上いてもらったら迷惑なのよ」
「それが現実なのね」
「誰も高校生活四年なんて嫌なのよ」
 生徒にしても教師にしても、だ。
「ましてや何処かのゲームのね」
「ああ、あの」
「そう、二十歳の高校生」
 某格闘術の後継者にしてその背中に日輪を背負っている高校生だ。その技は紅蓮の炎をまとう。何と詩人でもある。
「あの人みたいなのはね」
「リアルだと迷惑なのね」
「戦ってる場合じゃないのよ」
 学校にしてみればだ。
「もうね」
「さっさと卒業しろって話なんだな」
 美優もここでこう言ってきた。
「要するに」
「そう、誰にとってもね」
「本当にシビアな話だな」
「だからこのマラソン大会もね」
「強引に単位取らせるんだな」
「意地でも完走してもらってね」
 そうして、というのだ。
「病気でもない限りは出させられるし」
「若し風邪とかひいたらどうなるのかしら」
 この疑問を言ってきたのは彩夏だった。
「その場合は」
「ああ、その場合はね」
「どうなるの?」
「適当な日の放課後にね」
「あらためて走ってもらうのね」
「ええ、そうなの」
 そうして、というのだ。
「意地でも走ってもらうのよ、怪我したなら仕方ないけれど」
「それ以外の理由でリタイアしても」
「日をあらためてね」
 その放課後に、というのだ。 
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