FAIRY TAIL 友と恋の奇跡
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第185話 針と糸があれば―――!
前書き
紺碧の海です!
今回は大魔闘演舞4日目のバトルパートに突入!・・・と、その前に、久々に『謎の仕事』に行ってるガジル達の事について書きたいと思います。
ナレーション風です。
それでは、第185話・・・スタート!
ガ「おい・・全然見つからねーじゃねーかよっ!」
ジュ「ひぃ!」
ガジルが噛みつきそうな勢いで傍にいたジュビアに怒鳴りつける。ジュビアは小さく悲鳴を上げ、思わず首を竦めて両手で両耳を塞いだ。
霧で辺りを覆い尽くされた崖の頂上。ここにマスター・マカロフに他言禁止の『謎の仕事』を頼まれたガジル、リリー、ミラ、ジュビア、ラクサス、カナの5人と1匹はいた。
仕事の内容はこの霧で覆い尽くされた崖の頂上にある、闇ギルド最大勢力ビゲスト同盟の1角、西の真空のギルドを見つける事なのだが・・・ガジルがさっき怒鳴ったとおり、全然見つからないのだ。
リ「こんな狭苦しい場所に建つギルドだから、簡単に見つけられると思ったが・・・」
カ「そう甘くなかったね、こりゃ。」
リリーが腕組をして小さく呟き、カナが「あちゃ~」とでも言いたげな顔をして額に手を当てた。
ラ「それに、更に謎が増えた。」
ラクサスが自分の左手を睨み付ける。ラクサスの左手には白い包帯が巻かれていた。
ミ「霧に包まれた崖と滝、滝の水から感じる謎の魔力、見つけられない闇ギルド・・・」
ミラが顎に手を当てて考えるように呟く。
ジュ「もしかして、別の場所にギルドを移転したとか?」
ガ「でも、マスターが「ここにある」って言ったんだろ?」
ラ「じぃじの奴、評議院の奴等にも聞き込みしてたぞ。」
カ「マスターが得た情報が間違ってるとは思えないけどね。」
情報は正確。
この崖のどこかに、西の真空のギルドがあるはずなのは確かなのだ。
でも、いったいどこに―――――?
リ「とにかく、捜索の範囲を広げて、引き続き捜索を続けよう。」
ミ「そうね。それに、見つけられなかった時はこの瞬間移動魔水晶を置いていけばいいんだし。」
そう言いながらミラが取り出したのは、正八面体の形をした薄紫色の魔水晶だった。
カ「ほんとっ、最近の魔水晶は便利なものばっかだねぇ。」
カナがミラの手の中にある魔水晶を覗き込みながら言った。
ガ「つーかよぉ、もし西の真空のギルドを見つけられなかったら、ここまで来て俺達は魔水晶1個置いてきた事だけになるのかよ。」
ジュ「それがどうかしたの?」
ジュビアが問うと、ガジルの額に怒りマークが浮かび上がった。
ガ「冗談じゃねぇっ!何で俺が火竜達の為にこんな所まで来て魔水晶を1個置くだけしか出来ねぇんだよっ!?」
ジュ「ひぃ!」
ガジルがまた噛み付きそうな勢いでジュビアに怒鳴りつけ、ジュビアもまた小さな悲鳴を上げ、思わず首を竦め両手で両耳を塞いだ。
リ「仕方ないだろ。マスターの人選で俺達が選ばれたんだ。」
ガ「それはまだ許せるっ!だが、どうして大魔闘演舞の出場も譲って、火竜達にやらせる仕事の手伝いをしなきゃねーんだよっ!?どーせならここまで来た俺達にやらせりゃぁいいのによぉっ!」
目を思いっきり吊り上げてリリー相手に愚痴を吐く。
あまりの勢いに、ガジルの相棒であるリリーはすぐに言葉を紡げなかった。
ミ「仕方ないわよ。西の真空は魔道士の数が多い闇ギルドで多い事で有名だし、私達だけじゃ討伐するには難しいわ。」
ガ「でも、戦力だと俺達の方が上じゃんかっ!」
カ「マスターは後先の事を考えてんだよ。こんな崖のところで倒されでもしたら、二度と妖精の尻尾で酒が飲めなくなっちゃうからね。」
ラ「それはお前だけだろーが。」
カナの発言にラクサスが冷静にツッコミを入れる。
ジュ「とにかく、もう少し探してみましょう。」
ジュビアが話を逸らし、ガジルは「ちっ」と舌打ちをしながらも西の真空のギルドを探す為5人と1匹は再びバラバラに捜索し始めた。
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チャ「それでは早速、大魔闘演舞4日目バトルパートに参りましょう!」
気合の入ったチャパティ・ローラの声が会場に響き渡る。
チャ「第1試合、青い天馬、レン&イヴ!!VS幸福の花、サクラ&スミレ!!」
会場に2頭の天馬と可憐な2つな花が放たれた。
チャ「美男と美女!これは何とも素敵な絵になった!」
ヤ「面スろそうなバトルになりそうだねぇ。」
ラ「とっても楽しみです!ありがとうございます!」
観客席からは女性達の黄色い声援が右へ左へ飛び交っている。
ジェ「レンく~ん、イヴく~ん、頑張ってね~♪」
ヒ「どんなバトルになるんでしょうかね?先生。」
一「うむ。それはあの2人の戦い方次第だ。レン君、イヴ君、君達の熱い香りを見させて頂くよ。」
一夜が変なポーズを決めながらレンとイヴにエールを送る。
パ「お母さん、サクラ姉とスミレ姉、勝つかな?」
ア「さぁ、どうどすかねぇ?でも、あの2人が悔いの残らないバトルの花を咲かせてくれる事には、まず間違いないはずどす。私達は、その花が開花する瞬間を見届けるどすよ。」
アカネは会場にいる自分の娘―――サクラとスミレ―――の燐とした立ち姿を真っ直ぐ見つめた。
チャ「第1試合、開始ッ!!」
チャパティ・ローラの実況と共に像の上にいる男が銅鑼をゴォォォォォン!!と力強く叩いた。
レ「ちっ、相手は女かよ。戦い辛いな・・・」
イ「こんな美しい花々を傷つけるなんて、僕には出来ないよ。」
サ&イ「・・・・・」
試合が始まったというのに、まるでお約束事のように口説き始めるレンとイヴ。サクラとスミレは何の反応も示さない。
ル「思いっきりスルーされてるわね。」
ショ「逆にあの2人が反応した方が驚くよ。」
ハ「ルーシィだったら反応しそうだね。」
ル「しないからっ!てか何で私ィ!?」
ショ「ルーシィ、顔が赤いよ。」
ル「・・・・・」
ショ「・・・ハッピー、リョウには内緒だからな?」
ハ「あい。」
妖精の尻尾の応援席ではハッピーの発言にルーシィがツッコムが、ショールに「顔が赤い」と指摘され言葉に詰まり黙ってしまう。それを見たショールが小声でハッピーに耳打ちをした。
ス「傷つけたくないならば・・・」
スミレが横笛を、サクラが『御魂の桜扇』を懐から取り出すのが同時だった。
サ「大人しく、私達に遣られて下さい!」
スミレが横笛を口に当て、サクラが『御魂の桜扇』をバッと開くと、
サ「緑の御魂よ、敵を襲え・・・!」
ス「♪~ ♪~ ♪~ ♪~ ♪~
♪~ ♪~ ♪~ ♪~ ♪~」
地面から太くて長い蔦が生え、横笛の音色に合わせるかのように蔦がレンとイヴに襲い掛かる。レンとイヴはその場で高く跳躍し、サクラとスミレの攻撃をかわした。
イ「植物ってのが残念だったかな。雪魔法、白い牙ッ!!」
イヴが会場に吹雪を起こす。すると、レンとイヴに襲い掛かってきた蔦が青々とした緑色から薄い黄色に色褪せ始めた。
サ「植物が・・・」
ス「枯れ―――うっ!」
サ「ぁ・・ぁぁ・・・!」
「枯れていく」と言おうとしたスミレが突然首を掴み、苦しそうに呻き声を漏らした。すぐその隣でサクラも同じように首を掴み、呻き声を漏らす。よく見ると、スミレとサクラを囲うようにドーム型の浅黒い膜が張られている。
レ「お前等、隙ありすぎなんだよ。」
レンが小さく呟いた。
チャ「どうやらイヴが植物を枯らしている間に、レンがスミレとサクラの周りの酸素を薄くしたみたいですね。」
ヤ「いい連係だねぇ。」
ラ「植物を操るサクラとスミレは不利ですね。ありがとうございます!」
そこはお礼を言う場面ではない。
ユ「空気を操られたら、人間も植物も何も出来ないからね。」
頬杖を着いてユモが独り言のように呟く。
エ「これは、勝負アリだな。」
エルザの声が合図だったかのように―――――、
イ「レン!」
レ「分かってるっての!」
レンが止めの一撃を放った。
レ「エアリアルフォーゼ!!」
空気の渦がスミレとサクラに襲い掛かる。
ス「キャアアアアア!!」
サ「ヒャアアアア!!」
スミレとサクラが宙高く吹っ飛ばされ、ドドスゥン!と音と砂煙を巻き上げて落下した。もちろん立ち上がる事はない。
チャ「幸福の花ダウーーーーーン!勝者、青い天馬!!10ポイント獲得です!」
ヤ「いいバトルだったねぇ。」
ラ「植物に雪に空気、とても美しかったです!ありがとうございます!」
チャ「それでは引き続き第2試合に参りましょう!第2試合、月の涙、セイン&シプ!!VS白い柳、シェナ&チルチル!!」
会場にシプを負んぶしたセインと、手を繋いだシェナとチルチルが集った。
ナ「な、何だあれ?」
リョ「兄妹とか、姉弟っていう関係じゃねぇ・・よな?」
グ「あれを見てそう思っても、可笑しくねぇと思うぜ。」
余談だが、シプはセインの事を“兄”のように慕っており、チルチルはギルド内では“弟”のような存在であり、特にシェナに可愛がられているのだ。
セインがシプを地面に下ろすのと、シェナがチルチルの手を離したのが同時だった。4人共その場で身構えた。
チャ「第2試合、開始ッ!!」
チャパティ・ローラの実況と共に像の上にいる男が銅鑼をゴォォォォォン!!と力強く叩いた。
シ「透明魔法。」
シェ&チ「!!?」
小さく呟いたシプが突然姿を消した事にシェナとチルチルは驚き目を見開いた。
シ「油断、禁物!」
チ「うわっ!」
シェ「チルチル!?あぐっ!」
姿を消し、シェナとチルチルの背後に忍び寄ったシプがチルチルの背中に飛び蹴り、振り向いたシェナの鳩尾に拳を1発決めた。
ユ「シプ、すごい。」
グ「以前戦った時よりめちゃくちゃ強くなってるじゃねぇか。」
シプとの対戦経験があるグレイとユモが感心したように呟いた。
ナ「セインの奴、全く動かねぇぞ。」
一切動きを見せないセインを見てナツが首を傾げる。
リョ「ありゃたぶん、わざとシプ1人で戦わせてんだろうな。」
ユ「え、何で?」
エ「シプはまだ幼い。だが、魔道士としての腕を上げていくまでの時間はたっぷりある。少しでもシプにそういう時間を与える為に、セインも自分なりの手助けをしているんだと思うぞ。」
エルザはそう言いながらセインを見つめた。
腕組をしているセインの黒縁の眼鏡越しから見える緑色の瞳に映っているのは、姿を消しているシプの姿。当然姿を消している為、シプの姿は一切見えないのだが、セインはまるでシプの姿を追っているかのように、緑色の瞳をキョロキョロ動かしている。
シ「ていっ!」
チ「うぁあっ!」
シ「やーーーっ!」
シェ「イギィィッ!」
シプが連続でチルチルとシェナに蹴りや拳を食らわせ、それと共にチルチルとシェナの体に傷が増えていく。
シェ「(ま・・不味い、わね・・・このままじゃ、私もチルチルも・・・何も、出来ないまま、シプだけに、やられちゃう!)」
シェナは顔の前で腕を交差して防御しながら頭の中で思考を回転させる。
シェ「(でも、姿は見えなくても、気配は感じる・・・!こういう時って・・確かウララ曰く、目で追ったらダメなのよね。)」
シェナはゆっくりと目を閉じる。
シェ「(音・・・動き・・・集中・・・集中・・・・・!)」
閉じた目をカッ!見開いた。
シェ「見切ったぁっ!」
シェナが叫んだのと同時に、シェナの長い金髪が雷を帯びて、ある1点目指して伸びてゆく。
シ「へっ?」
シェナの金髪が伸びる先でシプの小さな声が聞こえた。シェナの攻撃がシプに当たると、誰もが思ったその時―――、
セ「無杖!」
シプと金髪の間にセインが滑り込んで来て、無杖を振るとシェナの金髪が力なくパサッと地面に落ちた。
セ「俺がいる事を忘れるなよ?」
シェ「別に忘れてた訳じゃないわ。」
チ「僕は忘れてた。」
チルチルは完全にセインの存在を忘れていたようである。
透明魔法を解除したシプがセインの背後からひょこっと顔を出す。
シ「お姉さん、私の姿、見えた?」
シェ「見えてないわ。」
シ「じゃあ、どうして分かったの?」
シプが首をこてっと傾げる。シェナは小さく微笑むと、右手の人差し指だけを立て口元に当てると、
シェ「女の鋭い勘よ。」
シ「?」
言い終わったのと同時にウィンクをする。が、まだ9歳の幼い少女にはシェナの言ってる意味が分からなかった。
シェ「さぁチルチル、反撃開始よっ!」
チ「うん。」
シェナとチルチルが小さく地を蹴り駆け出した。
シェ「髪しぐれ、鬼腕!」
シェナの金髪が雷を帯び、頭に2本の角がある鬼の姿になった。
シェリ「“髪の毛”が鬼になった!」
ユウ「“髪”が。」
トビ「“髪”が・・・!」
ジュ「やかましい。」
蛇姫の鱗の魔道士、シェリア、ユウカ、トビーの発言にジュラがムッとした表情で制止の声を出す。ジュラのスキンヘッドの頭がキラリと光ったのは余談だ。
セインは慌てる素振りも見せずに無杖を戻し、代わりに雷杖を手に取ると、
セ「雷杖!」
右斜め上から左斜め下へと大きく振るった。雷杖から雷が発し、シェナの雷を帯びた金髪が激しくぶつかり合い、ドゴォォォン!と爆発を起こした。
ル「ケホッ!ケホッ、ケホッ。」
ショ「す・・すごい、威力・・・」
ハ「うぅ、目が痛いよぉ~。」
ルーシィは顔を背けて咳き込み、ショールは片目を瞑り左手で口元を覆いながら小さく呟く。ハッピーは煙のせいで目が痛くなり、何度も何度も擦っていた。
煙が晴れると、セインとシプの目の前からシェナとチルチルの姿が消えていた。
セ「あ・・あれ?」
シ「消えた?」
セインとシプが辺りを見回すが、シェナとチルチルの姿はどこにも見当たらなかった。その時、
カリ「セインさん、シプ、上!上ェェェッ!」
セ「えっ?」
シ「上・・・?」
月の涙の待機場所からカリンが叫び、カリンの言うとおりに上を見上げてみると―――――、
シェ「隙ありぃ!」
セ「うわっ!」
シ「ひゃわぁ!」
宙高く跳躍していたシェナの金髪が着地寸前で下にいるセインとシプの体に巻きついた。幸い、シェナの金髪はまだ雷を帯びていない。
セ「うっ・・ほ、解け、ない・・・」
セインの右手には雷杖が握られているが、雷ではシェナの髪の毛から逃れる事は出来ない。
シ「セ、セイン・・・あ、あれ・・・」
シプも視線の先を追いかけると、上空に黒い点が見える。その黒い点の正体は大きな黒い布。その黒い布の4隅を掴んだチルチルがゆ~らゆら~と下りてきた。
グ「アイツ、どこにあんな布隠し持ってたんだよ・・・?」
リョ「つーか、飛んで、る?」
ナ「う・・うぷ・・・」
エ「ナツ、あれは乗り物なのか?」
ユ「いや・・・どう見たって、違うと思うよ。」
ユモの言うとおり、あれはどう見たって乗り物ではない。極々普通の“布”だ。
チ「よっ、と。」
着地寸前でチルチルは布から手を離し地面に降り立つと、カーキ色のオーバーオールの胸ポケットから銀色の縫い針と白い糸を取り出し、手際よく縫い針の小さな穴に糸を通した。
そうしてる間に、黒い大きな布はゆら~りゆら~り落ちてきて、シェナの金髪で身動きが取れなくなっているセインとシプの体をすっぽりと包み込んだ。
※ここからの出来事はほぼ超人的な行動だという事を予めご理解下さい。
チャ「な、なな、ななな、何とぉっ!チルチルが、セインとシプを包み込んだまま黒い布を地面に縫い付けているーーーーーっ!!?」
チャパティ・ローラの驚嘆の声が会場に響き渡る。
会場中の視線がチルチルに釘付けになった。チルチルは黒い布の端をセインとシプを包み込んだまま地面に縫い付けているのだ。それも、ものすごい速さで・・・
ハ「な・・何だありゃーーーーーっ!!?」
ル「えぇぇぇっ!?」
ショ「・・・・・」
ハッピーとルーシィが驚嘆の声を上げ、ショールは驚きすぎて言葉を失っている。
ユ「な、何あれ・・・か、怪奇現象!?」
エ「す・・すごい・・・!」
ユ「感心してどうするのっ!?」
ナ&グ&リョ「おいおいおいおいおい!ちょぉーーーっと待てぇーーーーーいっ!!こんなのぜってぇに有り得ねーだろーがっ!!!」
エルザの発言にユモがツッコミ、ナツ、グレイ、リョウが同じ事を叫ぶ。いつも同じ事を言ったら3人共喧嘩をするのだが、今の状況を目の当たりにして喧嘩をする場合でもないのだろう。
「怪奇現象」「有り得ない」と思っても、目の前でそれが起きているのだから全て現実なのだ。
会場中が大騒ぎになってる最中でも、チルチルは針を動かす手を一切止めようとしない。
セ「えっ・・ちょ、ちょっと・・・」
シ「あわわわわぁ・・・」
縛られて縫い付けられて真っ暗な状況にいるセインとシプは何も出来ずにただその場で立ち尽くしたままだった。
ア「ダハハハハ!相変わらずだなぁチルチルは。」
タ「針と糸があれば、アイツはどんなものでも縫い付けちまうからな。ある意味怖い奴だ。」
白い柳の待機場所ではアチュールとタクヤが面白そうにチルチルの様子を眺めていた。
ウ「得意技をあんな風に活かすなんて、チルチルもやるわね。」
ウララは感心したように呟いた。
チ「ふぅ~。シェナ、終わったよ。」
チルチルはほんの数分で地面と布を縫い付けてしまった。ご丁寧に、セインとシプの動きを封じてるシェナの金髪だけ地面に縫い付けていなかった。
シェ「それじゃあ、これで最後ね。」
シェナの金髪に雷が帯び始めた。そう、シェナの金髪はまだ雷を帯びていなかった。
シェ「髪しぐれ、雷爆発!!」
黒い布の内側から金色の光が洩れた、と思った瞬間、バコォォォォォン!と凄まじい音を立てて爆発した。辺りが黒い煙で覆い尽くされた。
カイ「セイン・・・!」
リキ「シプ!」
月の涙の待機場所からカイとリキが身を乗り出す。
煙が晴れると、会場には黒い煤と傷だらけになって倒れているセインとシプ、「ケホッ、ケホッ」と咳き込むシェナとチルチルがいた。
チャ「月の涙ダウーーーーーン!勝者、白い柳!!10ポイント獲得です!」
ヤ「いやぁ~、驚きの連続だったねぇ。」
ラ「すごいものを見させて頂きました。ありがとうございます!」
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妖精の尻尾専用医務室では、マヤ、フレイ、ウェンディ、シャルル、トーヤが映像魔水晶で第2試合を見ていた。もちろん、3人と1匹と1羽も驚きすぎて言葉を失っている。
ト「こ、こんな戦い方も、あるんですね。」
最初に口を開いたのはトーヤだった。トーヤの視線は、まだ映像魔水晶に釘付けだった。
シャ「地面を縫い付けるなんて・・・見かけによらず、恐ろしい奴ね。」
フ「同意見だな。」
シャルルとフレイの額に冷や汗が浮かんでいた。
ポ「世の中にはもっと恐ろしい魔道士がいるんだ。もしかしたら、大魔闘演舞に参加してるかもしれないからね。」
ポーリュシカが薬の調合をしながら呟いた。
ウェ「マヤさん、皆さんならきっと、勝ってくれますよね。」
マ「当ったり前じゃん!ナツ達はそう簡単に折れやしないよ。納豆みたいにめちゃくちゃ粘るからね。あいたたた・・・!」
シャ「例え方がどうかと思うけど、確かにその通りね。」
マヤの例え方にシャルルはすぐツッコミを入れるが納得した部分もあったみたいで頷いた。
マ「それに、妖精の尻尾の魔道士達が、仲間を酷い目に合わせられて黙ってるはずがないもん。それが例え、めちゃくちゃ強敵だとしても、恐ろしい奴だろしても、顔見知りでもね。」
ト「そうですね。」
フ「アイツ等なら、マヤの仇、必ず取ってくれるはずだ。」
ウェ「その為に、私達も応援頑張りましょうね。」
マ「もっちろん!だからポーリュシカさん、怪我が早く直る薬とかないですか?」
マヤがポーリュシカの背中を気体に満ちた瞳で見つめる。
ポ「そう言うと思って、予め準備しておいた薬がたった今完成したところだ。」
ト「おぉ!」
シャ「さっきから作ってたのは、その薬だったのね。」
マヤ「さすがウェンディのお母さん!」
ウェ「さすがグランディーネ!」
ポ「ウェンディのお母さんでもないし、その名で呼ぶんじゃないよ。」
ポーリュシカがマヤとウェンディの言葉に否定しながら、薬とコップに入れた水をマヤに手渡す。
マ「よぉ~し!早く良くなれぇ~!」
そう言いながらマヤはすぐさま薬を飲み水で流し込んだ。
ポ「言っておくが、その薬にはものすごい苦い薬草を使っているか―――――」
マ「苦----------っ!!」
口からナツのように炎の息を放ちそうな勢いでマヤが叫んだ。
後書き
第185話終了です!
地面を縫い付けるって発想・・・可笑しいですよね。注意書き(?)を※で表しておきました。
次回は大魔闘演舞4日目バトルパートの続きです。第3試合(と、たぶん第4試合)です。
それではまた次回、お会いしましょう!
ていうか、今回のサブタイトル可笑しすぎる・・・
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