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久遠の神話

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第百八話 最後の戦いその十一

「その人達と戦えば。若し君が勝っても」
「傷つくのは」
「そう、君だから」
 それで、というのだ。
「だからね、絶対にね」
「私に傷付いて欲しくないから」
「そう、もう止めて欲しい」
 切実な声だった、これ以上はないまでに。
「この戦いは。これで」
「けれどこれで止めれば」 
 セレネーは声の方を振り向いた、そしてだった。
 必死に訴える顔でだ、彼女自身の恋人に言った。
「貴方と私は」
「確かに僕も君と一緒にいたいよ」
 エンディミオンはそのセレネーに答えた。
「確かにね」
「それなら」
「けれど。もう」
「私がこの戦いを続けることは」
「そして君が傷つくのなら」
 それならばというのだ。
「もういいから」
「・・・・・・では貴方は」
「永遠の命は欲しいよ」
 愛する女神と共に永遠にいられるからだ、エンディミオンもそのことは否定しなかった。彼にもそうした気持ちがあると。
 だがそれでもだ、彼はこうも言うのだった。
「それでも。誰かを犠牲にしてまで手に入れるということは間違っていると、長い間眠りながら考えているうちにわかって」
「そのことにも」
「彼等は罪を犯したけれど最初の生だけでだったから」
「魂は同じでも」
「そう、その時だけだったから」
 もう罪を理由に戦わせることも、というのだ。
「それもないから」
「だからなの」
「そう、もうね」
「そして私も」
「僕の為に傷つかないで欲しいんだ」
 身体も何よりも心が、というのだ。
「絶対にね」
「だから」
「そう、もう終わろう」
 この剣士の戦いを、というのだ。
「そうしよう」
「それが貴方の願いなのね」
「そうだよ、そうしよう」
「私は貴方と共にいたいわ」
 掴む、まさに海の中で一本の綱を掴む様にしてだ、セレネーはエンディミオンに対して言った。
「何があろうとも」
「では戦うの?」
 センディミオンはその掴もうとするセレネーに問い返した。
「彼女達と」
「それは・・・・・・」
「実の妹とさえ思っていて。大切に想い合ってきた彼女達と」
 こうセレネーの心に問うのだった。
「そう出来るのかな」
「私はそうしても」
 こう言ってだ、何としてもという顔になってだった。
 セレネーは聡美達に向き直った、三人の女神達は武器は手にしていても構えていない。それどころか自分を心から案ずる顔で見ている。
 その顔も見るとだ、余計にだった。
 セレネーは揺らいだ、だがそれでも。
 弓矢を構えようとした、その手を動かそうとする。
 しかし手はどうしても動かなかった、それでだった。
 動かすことを諦めた、震えてどうしても動かないその両手を。
 そのうえでだった、両目を閉じそこから涙を流しながらだ。首を横に振って答えた。
「私には・・・・・・」
「そうだね、君は」
「貴方と共にいたい、けれど」
「戦えないね」
「アルテミス達とは」
「それなら彼等のこともわかるね」
 エンディミオンはセレネーにさらに問うた。 
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