久遠の神話
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第百八話 最後の戦いその十
「お姿を表されましたね」
「ええ、ずっと見ていたけれど」
「私達と戦うとなると、ですね」
「姿を出さなくてはならないから」
さもなければ戦えない、それ故にというのだ。
「そうしました」
「ではお姉様は」
「戦います」
絶対に、というのだ。
「そうしてでも」
「あの人とですか」
「共に。永遠に」
いるというのだ。
「その為にも」
「そうですか、では」
聡美は息を飲んだ、そしてだった。
その手に持っている弓矢を構える、智子と豊香もまた。
武器を構えてセレネーと対峙する、その聡美よりも強い月の美貌を持っている彼女に。今まさに戦おうとしていた。
だがここでだ、急に。
誰かの声がした、それは今この場にはじめて聞こえてきた声だった。声は若い張りのある輝かしい男の声だった。
その声がだ、セレネーに言うのだった。
「もういいよ」
「その声が」
「うん、僕だよ」
「エンディミオン・・・・・・」
声のした方に驚愕の顔を向けてだ、セレネーは声の主をこの名で呼んだ。
「まさか、貴方はまだ」
「まだ。眠ってはいるよ」
「その筈よ、けれどどうして」
「僕はずっと見ていたんだ」
「ずっと、それじゃあ」
「眠っていても。心は起きていたから」
だからだというのだ。
「ずっと見ていたんだ」
「そうだったのね・・・・・・」
「君は僕の為にずっと動いてくれていたけれど」
それでもというのだ。
「もういいよ、誰かを犠牲にしないで」
「剣士達を」
「そう、最初は僕も彼等がタルタロスに落ちるべき悪人だからいいと思っていたよ」
彼等を駒としてお互いに戦わせることを、というのだ。
「けれど。彼等を何度も生まれ変わる中で戦わせて」
「そうして貴方を神とする力を集めることが」
「もういいよ、彼等を犠牲にしないで」
こうセレネーに言うのだった。
「そして君も戦わなくていいよ」
「けれどそうしないと」
「僕はもういいんだ」
構わないというのだ。
「人間のままでいたいから」
「けれど私は」
「君は僕の為に掛け替えのない人達と戦うの?」
聡美達と、いうのだ。
「そうするの?」
「いえ、それは」
そう問われるとだ、声もだった。
口ごもる、そして言うのだった。
「それでも」
「戦いたいの?君は」
そのセレネーにだ、エンディミオンはさらに問うた。
「彼女達と」
「そんな筈がないわ」
俯いてだ、そうして言うのだった。
「私は戦いは好きではないわ、ましてやアルテミス達と」
「戦いたくないね」
「妹みたいなものよ、皆」
聡美達だけでなくだ、三人共だというのだ。
「それでどうして」
「そうだよね、じゃあ」
「けれど私は」
「傷つくのは君だよ」
セレネー、彼女自身だというのだ。
「君の心が」
「私が・・・・・・」
「君にとって、彼女達は大切な人達だね」
「それは」
「僕と同じだけ」
こう言うのだった、その彼女に。
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