IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~
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第三十六話『恋』
前書き
皆様、お久しぶりです。現在横浜に引越し色々と作業し更新遅れました。
申し訳ありません。
「さぁて、どういうことか説明してもらおうかな?」
「「……」」
スウェンの部屋にて、やや恐ろしい笑顔のシャルロット。そして前に座らされているスウェンと、男子制服を羽織り、何故かその雪のような白い肌を惜しげもなく晒しているラウラが居た。
何故彼らがこのような状況になったかと言うと、夕方の事である。
※
「凰、少しいいか?」
「なに?」
放課後、スウェンは教室から出てきた鈴音を引き留める。
「この後訓練をしたいのだが、相手が欲しい。模擬戦をしてはくれないか?」
「うーん、そうねぇ~……」
「一夏も居るぞ。あいつにも色々とつきやってくれ」
『一夏』という単語に鈴音はピクリと動いた。
「そ、そういうことなら仕方ないわね~付き合うわ。他に誰か来るの?」
「いや、呼ばない方が都合良いだろう。俺も一戦終えたら止める予定だ。その後は一夏と二人で訓練をすればいい」
スウェンの少なからずの気遣いに、鈴音は
「スウェン……あんた、いいやつね」
「どうかな……さて、行くとしよう。アリーナで一夏が待っている」
そうして二人はアリーナへ向かったが、その物影で二人……いや、スウェンを見ている少女が居る。
「……はぁ……隊長」
それはスウェンの後ろ姿を見て惚けているラウラであった。
「い、いかん。黒ウサギ隊、現隊長であるこの私がこのような……し、しかし……むぅ……」
ラウラはここ最近、スウェンを見るたびに何とも言えない胸の高鳴りに襲われていた。このままではいかんと一言言うと携帯を取りだし
「……私だ」
電話の相手はというと……
※
「これはラウラ隊長、いかがなされました?」
そう、ラウラの電話をかけたのはシュバルツェ・ハーゼ副隊長、クラリッサであった。
『う、うむ。実は相談があってな』
「ほう、ラウラ隊長が相談とは御珍しい、一体どのような相談で?」
『そ、それはここ最近ーーてーのだ』
「は? 隊長、よく聞こえませんでした」
肝心な後半の部分が聞き取れず、クラリッサはラウラに聞きなおす。
『だから……ここ最近、スウェン隊長の事を思ったり、お姿を見るたびにこう、胸が締め付けられるような感覚が襲ってくるのだ』
「……ふむふむ」
『クラリッサ、これは何かの病気なのだろうか?』
「ええ! これは重大な病です!」
『な、なっ!?』
電話の無効ではラウラは驚愕した声を出す。クラリッサは一息つき
「ラウラ隊長、その病はずばり!!」
『ず、ずばり……?』
「恋の病です!!」
傍から見れば背後から「どーん」という効果音がなりそうな勢いでそう言ったクラリッサ。勿論ラウラは呆然としていたが、すぐに我にかえる。
『こ、恋……こ、この私がスウェン隊長に!?』
「ええ、なるほど。まさかあのラウラ隊長に恋愛感情が芽生えるとは正直予想外でした」
『なぜかものすごく侮辱されたような気がするぞ。だ、だが恋か……言われてみれば、スウェン隊長に対しての感情が変化しているのは私自身感じていた。それがまさか恋……とは』
「ふむふむ、ラウラ隊長が恋をするのは非常に喜ばしい事です。ですが相手が悪い。なぜならラウラ隊長が恋をしている相手は、常に冷静沈着で任務を淡々とこなし、さらにそのクールなフェイスから時折見せる微笑が堪らない、我等がスウェン中尉なのですから!! 一筋縄では到底いかないでしょう」
『ッ!?……で、ではどうすればいいのだ!?』
「ふふふ、お任せください。このシュバルツェ・ハーゼ副隊長。クラリッサがラウラ隊長の恋を成就させるために一肌脱ぎましょう!! あ、ちなみにこれから伝えることは、私から聞いたということはスウェン隊長に御内密に」
『わかった』
「では……」
※
「ノワールの調子も悪くない、もう少し訓練の質を上げるべきか……」
放課後の訓練を終えたスウェンは自室へ戻っている途中であった。タッグ戦で負ったノワールのダメージは完全に修復しており、更なる訓練の向上をしようか考えているスウェン。
そうこうしているうちに自室の前にやってきた。そしてドアノブに手をかけたが
「……開いている?」
鍵が開いており、ドアノブが回る。スウェンは鍵はしっかりとかけており、さらにシャルロットも購買に行った。スウェンは警戒し、ゆっくりと部屋に入る。
「……」
部屋は暗く、閉められたカーテンの隙間から光が漏れているだけだ。静かに扉を閉じ、数歩前に進むと
「……誰だ」
背後に気配を感じ、スウェンはすぐさま振り向く。そこで姿を現したのは
「ラウラ……?」
どうやらラウラが扉の後ろに隠れていたようだ。ラウラはスウェンへと近づき
「なぜお前がここにーー」
「隊長!!」
突然ラウラは飛びつき、スウェンはそのまま体制を崩して倒れこむ。
「っ……ラウラ、一体何の真似だ?」
「隊長、突然のご無礼をお許しください。隊長、これから……」
そしてラウラは服を脱ぎ
「既成事実を作らせていただきます!!」
「……は?」
スウェンは思わず呆気にとられた表情をし、冷静に現在の状況を把握した。
「まてラウラ、お前は自分の言っている意味が……」
最後まで言葉をつなげようとしたが、ラウラの真剣な表情を見て
「(まずい、ラウラは本気だ……まて考えろ、あのラウラが突然このような行動をとるか? ありえない、裏に誰かがいると見た)」
頭で冷静に判断するが、ラウラは刻一刻とスウェンへと迫る。
「隊長……」
「(やるか……)」
スウェンは呼吸を整え
「ラウラ・ボーデヴィッヒ!!」
「!? は、はい!!」
急なスウェンの気迫のある一声に、ラウラはスウェンから離れ待機姿勢をとる。
「お前に既成事実などを教えた人物は誰だ!」
「はっ! クラリッサ副隊長であります!」
「なるほど、あいつか」
「……あっ!?」
ラウラは自分の口にしたことに気づき
「た、隊長……」
「すまんな、自分を守るためだ。色々とな。さて、さっさと服をきーー」
「スウェンもう戻ってたのー?……え?」
運が悪く、シャルロットが購買から戻って来、その光景を目にした。
そして冒頭に戻るのである。
「シャルロット、弁明の余地を与えて欲しい」
「何かな?」
「ラウラが一方的に襲ってきた」
「んなぁあ!?」
「すまんな、ラウラ。俺の威厳を守るためだ」
「そ、そんなぁ……」
するとシャルロットは何かを察したように
「……ねえスウェン、少し席はずしてもらえないかな?」
「?……ああ」
スウェンは立ち上がり、シャルロットに言われたとおりに部屋を出て行く。残されたのは気まずい雰囲気に呑まれたラウラとシャルロットだけ。
「ラウラ」
「な、なんだ!」
「もしかしてラウラってさ、スウェンの事好きなの?」
「え?」
その問いにラウラは戸惑いを隠せない。が、こくりとうなずき肯定を示した。
「そうなんだ、ラウラもなんだ」
「も、だと? デュノア、お前も隊長の事を?」
「うん。何でラウラはスウェンの事が好きなの?」
「それは……隊長は私にとって恩師で、私に全てを与えてくれた人だ。だが、あの時……私が暴走して助けてくれた時から、私の感情は変わっていた。私は隊長を異性としてみるようになり、更に隊長を思ったりしているとこみ上げて来るこの感情は、恋なのだと気づいた」
「そっか……お互い、スウェンに助けられて好きになっちゃったんだね」
シャルロットは笑顔になりながらラウラに言う。
「ってことは、僕とラウラは恋のライバルってわけだね♪」
ラウラはきょとんとしていたが、軽く笑い
「くくく……いいだろう、私と隊長の間にお前が入ることが出来ないということを知らしめてやろう!」
「負けないよ! 僕だってスウェンに対する気持ちならラウラに負けないから!」
※
「ふふふ、あのまじめなスウェン中尉だ。ラウラ隊長と既成事実が出来てしまえば責任を~と言って二人が結ばれることは間違いなし。今頃どうなっているかいるか楽しみだ」
さぞ上機嫌なクラリッサに隊員が
「そううまくいってますかねぇ……」
「問題ないだろう、あのラウラ隊長ならーーむ」
携帯がなり、クラリッサは手にとる。先ほどの上機嫌な表情から一変、凍りつくような表情に変わった。何故なら相手は……
「こ、これはこれは、スウェン隊長、い、いかがなされました?」
電話の相手は恐らく内面般若のような形相をしているスウェンであった。
「要件はひとつだ、クラリッサ」
電話の向こうのスウェンはまるで静かなる鬼の如くの声で
「ドイツに戻ったら覚えておけ」
そこで電話は切れた、隊員は恐る恐る
「スウェン隊長はなんと?」
クラリッサはゆっくりと隊員のほうを向き
「私、死ぬかもな」
「ええええええ!?」
爽やかな笑顔でそう言ったのであった。
後書き
しかし横浜の暑さは尋常じゃありませんねー干からびそうですw
次回、番外編「レーゲンscene1」お楽しみに!
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