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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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卑怯な強さ

<ゾーマの城>

「ぐはぁ………」
辺りには大魔王ゾーマの呻きが響き渡る…
凡そ3時間にわたり、リュカとゾーマの戦いが続いた…いや、戦いではなく一方的な拷問だろう。

ゾーマの身体は何度と無く回復し、その都度リュカに対して反撃を試みるのだが、その圧倒的なパワー・スピード…そしてスキルを駆使し、掠り傷一つ負うことなく攻撃され続けて来たのだ。
後方で見ているアルル達も、思わず『リュカさん…もうトドメを刺してあげてください…もう十分でしょう!』と、大魔王に同情してしまっている…

ゾ-マも初めのうちは『見くびるな人間が!こんな攻撃はなんでもないわ!!』と、同情された事に怒りを表していたが、次第に文句を言う気力も無くなってしまい、今はただ苦痛に叫び耐えるのみ…

だが、この永遠に続くかと思われた一方的な戦闘を終わりへと導いたのは大魔王ゾーマだった。
リュカドラゴンにやられた傷を闇の衣が塞ぐ中ヨロヨロと立ち上がると、懐から先程リュカから掠め取った光の玉を天高く掲げ叫び出す。

「光の玉よ…闇の衣を消し去りたまえ…」
ゾーマの言葉と共に光の玉は眩く輝きを増す。
そして本人の纏っていた闇の衣が消え去っていった!

「………お前………何やってんの?」
「うるさい…もう、嬲られるのはたくさんだ………」
呆然と見下ろすリュカの言葉に、心底疲れた表情で呟くゾーマ…
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ…………………」
そして後方で見ていたアルル等の方を向くと、最後の気力を振り絞り突撃して行く!

突然の特攻に、殆どの者が反応出来なかった…
だが勇者オルテガと勇者ティミーの2人は即座に剣を抜き放ち、襲い来る大魔王ゾーマを一瞬で切り裂いた!
「リュカちんと戦っていたのだから、いきなりこっちに来んじゃねーよ!」
「まったくです…折角楽してたのに…」

2人の勇者が息絶えるゾーマを見ながら不本意な戦闘に文句を言う…
もう1人の勇者であるアルルでさえも、いきなりの事態に呆然とする中、人間の姿へ戻ったリュカが近付き、気の抜けた声で話しかけてきた。
「僕は約束通り、ゾーマと戦っていたよ。そっちに向かったのは僕の所為じゃ無いからね。つか、戦闘しないからって気を抜きすぎだったんだよ!もっと緊張感を維持しなきゃ…ねぇ、オルテガっち!」

倒れ息絶えたゾーマの手から光の玉を奪い返し、何事もなかったかの様に妻へ口吻をすると、仲間達の話の中へとけ込んで行く。
「な、何が『僕の所為じゃ無い』よ!さっさとトドメを刺してれば、こんな事にはなったんでしょ!」
リュカの態度に反発するのは勿論アルル…

「しょうがないじゃんか…ダメージを与えても回復しちゃうんだよ!精神的に追い詰めるしかないじゃん!そこんとこ解ってないなぁ…」
「あんだけ圧倒的な強さだったんだから、その気になればトドメの一つくらい刺せたでしょ!」
アルルの文句は止まらない…
大魔王を討伐したのに、全くその感動に浸る事の出来ない勇者一行。
その後も両親と彼氏に宥められるまで、アルルの文句はリュカに降り注いだという…






「と、ところで………遂に大魔王ゾーマを倒しましたね!(汗)」
何時まで経ってもブツブツ言っているアルルの気を逸らす為に、ルビスが出来る限り明るい口調で現状を喜ぼうと導いた。

「そ、そう言えばそうよね…リュカさんの所為でその事にも気付かなかったわ!」
「アルルは何でも僕の所為にするなぁ…」
まだリュカに文句を付けながらも、表情は明るくティミーに抱き付き喜びを噛み締める。

「リュカ…これで私達もグランバニアへ帰れるわね」
ビアンカも夫が何時までも面倒事を起こさない様に、全てが解決した事を喜ぶ様に見せかけて、リュカの意識を自分に向けさせた。
「そうだね…ビアンカまで巻き込んじゃって本当にゴメンね。絶対ビアンカだけは危険な目に遭わせたくなかったのに…あのヒゲメガネめ!」

事態が解決し、元の世界の神に対し怒りが湧いてきたリュカ…
「あ、あの…ともかくはラダトームに帰りましょう。皆さんを送り返すのはその後でもよろしいですよね?」
リュカの怒りが怖いルビスは、恐る恐る尋ねてみる。

「勿論大丈夫だよ。つか、ラダトームではオルテガっちの楽しい一悶着があるはずだから、それを見ないで帰るつもりは毛頭無いよ!」
リュカはビアンカと抱き合いながら、やはり抱き合っているオルテガ夫妻へ顔を向けて、ニヤケながら言い切った。

だがオルテガは狼狽えることなく言い返した。
「ふっ…世界を救った勇者様に対し『娘を孕ませたから責任取れ!』とか言う奴は居ない!だってルビスちゃんが助けてくれるもん!ラルスのアホが何を言ってきたって、世界を救った英雄に対しては何も出来ないもん!」
完全にティミーの言った作戦を実行する気の勇者オルテガ。

「このオッサンは…」「懲りない男だ…」等々…
其処彼処から罵声が飛ぶが全く気にしない男。
そんな連中を呆れた様に眺めつつ、ルビスは魔法でラダトームまで全員を連れて転移した。まだまだ続く騒動を予感しながら…



 
 

 
後書き
感動が薄いまま世界を救った勇者一行…
しかし彼等にとって最大の難関はこれからなのかもしれない。
特にオルテガにとってだけどね… 
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