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『ある転生者の奮闘記』

作者:零戦
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TURN5






 第四戦隊が日本星域に帰還してから一ヶ月が経った。

「……漸くア・バオワ重慶を占領したんやな」

 俺は新聞を見ながらそう呟いた。

「でもこれで資源も日本に大分入るけどね」

 図面とにらめっこしている茂が呟いた。

 実は今、茂の研究室にいたりする。

「まぁな。これで戦力は日本に戻って……」

「ガメリカやエイリスとの戦いだね」

 俺の言葉を茂が繋ぐように言う。

「……勝てるやろか……」

「ゲームではリセットが出来るけど、現実には無いからね」

「まぁな……ところで何の図面やそれは?」

「新型戦艦と第四戦隊の改良図面だよ。見るかい?」

「拝見するわ」

 俺は茂から図面を受け取る。

「……成る程な」

 新型戦艦は今まで通りの船をモチーフにした戦艦やった。

 三連装ビーム砲を四基も搭載している。

 防御は段ボール装甲やなくて二重装甲になっている。

第四戦隊の高雄型は対空兵器の増設をしている。

 特にパルスレーザー等やな。

 更に実体弾は九〇式対艦ミサイル連装発射菅が搭載され、鉄鋼魚雷もある。

「……第四戦隊でミサイルと鉄鋼魚雷戦をするんか?」

「むしろ旧軍の水雷戦隊の軽巡だね」

 茂が笑う。

「改装は何時までや?」

「三ヶ月くらいだろうね。東郷長官も第四戦隊がいないとガメリカとは戦えないとか言ってるらしいからね」

「まぁ数が少ないからな」

 日本海軍の艦隊は少ない。

 一応艦艇は新型の60式に更新はされている。

 東郷長官の第一艦隊は60式戦艦を主力にし、山本中将の第二艦隊は60式巡洋艦を主力にしている。

 ヤンキーの田中少将の第三艦隊は60式駆逐艦や63式特雷型駆逐艦等を配備させている。

 南雲の第四艦隊は空母四隻を主力にして第四戦隊と駆逐艦のほぼ輸送艦隊。

 小澤の第一航空艦隊は空母六隻を主力にして巡洋艦、駆逐艦を配備している。

「ゲームみたいに他の提督はおらんのか?」

「いるみたいだけど、主力はこの五人だね」

「……早く艦艇を配備してぇや」

「資源があればね」

 茂は俺の文句にそう言った。

「ガメリカと戦えば必ず誰かの艦隊は壊滅するだろうね」

「……予想的には?」

「小澤の第一航空艦隊かな。東郷長官が航空主義にすれば史実の結果となるね」

「まぁそれは俺も警戒している。史実のアメリカも十分にチートやからな」

 エセックス級空母が二十隻以上ってどういう事やねん。

「だから第四戦隊の改装や防空艦の建造を急がせているんだ。これでも精一杯なんだ」

「民間の造船所の徴用は?」

「全て徴用している。新しく造船所を建築しているのは全部で九ヵ所ある」

「……それでもガメリカには追いつけない……か」

「まぁね。日本は星域は元から一つなのに対してガメリカはマイクロネシア等も入れたら八ヵ所もあるからね」

 茂が溜め息を吐いた。

「それに大量のベテランが戦死したのも頭痛の悩みだよ。乗組員はヒヨコだからね」

「やから俺が訓練目的で第四戦隊の乗組員を練習艦隊に派遣したんやろが……」

 満州会戦で大量のベテラン乗組員を失った日本海軍は立て直しに追われていた。

 第四戦隊がドック入りしたのを受けて、俺は第四戦隊の乗組員を期間限定で練習艦隊に派遣させたんやな。

「それでも足りないよ。満州会戦前の状態に戻すなら全艦隊を練習艦隊にさせる必要があるよ」

 茂はそう言う。

「……まず無理やろな。ガメリカやエイリスの事もあるしな」

「だろうね。一応退役した50式艦艇を練習艦隊に回しているけど、いやはや困ったもんだよ」

 茂は深い溜め息を吐いた。

「……お茶に砂糖でも入れたろか?」

「リンディ茶はヤバい気がするよ」

「ならハチミツでも差し入れたろか? ハチミツを津波に塗ってそれをペロペロ……」

「雪風、君が言おうとする事は非常に自分にとっては有りがたいと思うよ」

 茂がにこやかに微笑む。

「なら今度の差し入れはハチミツやな」

「フフフ、今からワクワクしてきたよ」

 茂がニヤリと笑う……けど茂は知らないやろな。

 後ろにスパナを構えた津波がいる事を……。

 勿論茂はスパナで撃沈した。





 後に研究室に訪れて茂にハチミツの事を聞いたら「大丈夫。毎日ペロペロしてるからね」とニヤリと笑ってた。

 良い子の読者はそんな事をしたらあかんで?

 そしてア・バオワ重慶を占領してから四ヶ月後、ガメリカが日本に対して安全保障条約――安保条約を提案した。

 勿論こんなクソみたいな条約は誰も呑む気はしない。

 御前会議で山下長官が大激怒したほどやな。

 まぁその安保条約前にドクツとイタリンと三国軍事同盟を結んでいるからその影響やろな。

 また三国同盟の一環でデーニッツ少将のUボート艦隊が日本に来ている。

 ガメリカは明らかに日本と戦争をしたがっている。

 日本陸海軍はそう共感した。

 日本の選択は降伏か戦いかの二つの選択しか無かった。








 
 

 
後書き
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