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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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水龍と戦略

戦闘開始直後に放たれた一閃の矢はオベイロン側の軍勢の約1/4を削り、その効果は大きかった。

「どうだ状況は?」

シオンは下で待機していたレプラコーンのプレイヤーに尋ねる。

「はい、向こうの軍勢にも乱れが出てきました」

「随分と早いな、キリト、アスナ、リーファ、聞こえたか?」

『ああ、ここからでも確認できる』

『ちょうど3つに分断したよ!』

『一つはシオンくんの方へ行ったよ!』

シオンは再び空へ飛び、索敵を展開する。
すると正面に複数と反応を捉えた。

「アリシャさん、聞こえますか?敵が接近してきてる、やれますか?」

『りょーかイ、数ハ?』

「反応では300弱ですが、おそらく隠密スキルを何体か使ってきます。注意して」

『OK、それじゃあ~・・・』

「アリシャさん」

『なに?』

「テストも兼ねてアレ(・・)を使ってみてください」

『使うかナ~・・・』

「別に、最初から使ってもいいんですよ?」

その言葉にアリシャはニヤッとし、

『りょーかーイ♪』

そこで通信は切れた、シオンは先ほど敵を発見した方向の空を見る。

「念のため警戒しておくか・・・」

シオンは容姿をverウンディーネに切り替える。水色の長い髪が特徴的な姿である。

「アックア、《リンク》」

「キュウ!」

シオンの肩に現れたのはウンディーネの神龍《アックア》、その特性は───

「“プロテクション”」

シオンが錫杖を振るとアリシャの部隊のプレイヤーのステータスに防御力強化のアイコンが出た。

「おお、これは随分と警戒してるネ?」

『落ちるとは思いませんが、念のためです』

「ふーん・・・っと、来たヨ!」

アリシャの視線の先には接近する複数のプレイヤーがいた。シオンの予想通り、数は300よりも遥かに多い1500、シオン討伐に数を入れてきたようだ。

「ドラゴンブレス用意!!」

相手はまだこちら側に気づいていない。シオンがケットシー部隊に派遣したスプリガンの幻惑魔法のお陰だろう。なにも幻惑というだけで相手に違う姿を見せるだけではない、こうして姿を隠すことも立派な幻惑なのだ。
相手との距離が徐々に縮まる、そして・・・。

「放て!!」

アリシャの合図の直後に放たれたブレスは空中を飛行するプレイヤーたちに見事命中した。

「な、何ッ!?」

「まだまだ!!第二部隊、放て!!」

アリシャがそう言うと、次は一撃目とは違う方向からブレスが放たれた。

「違う方向からだと!?」

これに完全に意表を突かれた相手はまた戦力を削がれてしまう。
しかしそれでもまだ数は向こうのほうが上、多少の犠牲を払ってもここは突破できる。

「強行突破だ!!」

相手側も強行突破に乗り出した、いくら奇襲をかけようとも数には勝てない。それは誰もが思っていた。
だがしかし───

「知ってたよ、そんなことくらい」

シオンは遠くで繰り広げられている戦いを思いながら言う。
そしていつもの笑みを浮かべ、

「だからそうさせた♪」

そう、全てはシオンの掌の中。言わばここは彼の戦場(テリトリー)なのである。

「貰ったヨ♪」

相手プレイヤーが気づいた頃には既にアリシャは上空にいた。そして手に握られていたのはボウガン。

「なッ!!」

「飛んでケー!!」

アリシャが放ったボウガンの矢は雨となり相手プレイヤーを貫いていった。

「クッ!!」

一部のプレイヤーが無数の矢の雨から脱出し、離脱する。しかし───。

「逃がさないヨ!!」

光の矢は屈曲すると離脱したプレイヤーに向かって一直線に飛んでいった。

「なッ、何だと!?」

離脱したプレイヤーはその言葉を最後に光の矢に貫かれエフェクトとなって消えた。
ボウガンを肩に担いだアリシャは一息ついて辺りを確認する。

「ふ~、一丁あがリ!!」

アリシャはシオンに通信を繋ぐ。

「シオンく~ん、こっちは終わったヨ~♪」

「お疲れさまです、少し進軍した位置で待機してください。戦況が代わり次第伝えます」

「りょーかーい♪」

シオンは通信を切ると交戦中のサクヤとユージーンのところへと向かった。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「ユージーン!サクヤさん!!」

「シオンか」

「状況は?」

「見ての通りだ」

サクヤさんが見た先には劣勢気味の自軍の姿があった。
寧ろここまでよくもった方だ。

「まあでも、当初の予定である分散した敵軍を再び一ヶ所に集めることには成功したからそれだけでも十分ですよ」

「あのビーム砲はもう射てないのか?」

「射てなくはないが、乱発は危険だ。いざというときに射てなくなる・・・。サクヤさん、ユージーン」

「なんだ?」

「俺に考えがある、そのまま聞いてくれ」

俺はサクヤさんとユージーンに作戦を通達する、その内容に二人は不敵な笑みを浮かべる。

「ほう・・・」

「なるほど・・・」

「俺が視界を塞ぐ、その間に頼む」

「別にアレを全部倒しても構わぬのだろ?」

サクヤさんは悪戯っぽい笑みを浮かべながら言った。

「別に構いませんがその台詞、死亡フラグですよ?」

「おっと、すまない。ならば、言葉を変えよう」

次の瞬間、サクヤさんが言ったことは衝撃の一言につきた。

「殲滅してこよう♪」

「女性がそんなこと言うんじゃありません」

「ハッハッハッ!!では、参ろうか!!」

「・・・ったく、行くぞ!!」

俺はスペルを詠唱し、煙幕を展開する。煙幕はたちまち広がり、やがて相手側の視界を妨げる。

「さて、ここからはお任せだな。頼むぜ二人とも・・・」

俺は煙幕の先に潜む二つの影を見る。
しかしそれは周りからは見えず、端から見れば真っ暗な状態である。

「クッ!、目眩ましか!!」

「奴等は何処だ!」

「ここだ、三流」

「何ッ!グァアッ!!」

ユージーンによって斬られたプレイヤーはエフェクトと共に燃え散った。
その声を聞いた他のプレイヤーは辺りを確認するも、目視にて確認できない。

「グァッ!」

「ギャアッ!!」

次々と倒されていくプレイヤーの声を聞きながら俺は思った。

「やはり、奴等は実戦慣れしていないな」

『ああ、こんな生ぬるい世界ではまあ当然だがな』

「奴等は魔法や目に頼りすぎている、五感をすべて使い、気配を感じ、相手を捉える。相手を捉えることに魔法ばかり使うやつは三流のやることだ」

「ハァアアアッ!!」

シオンの背後に煙幕から脱出したプレイヤーが斬りかかる。

「彼処から脱出したか。成る程、やはりいるみたいだな。しかし・・・」

「白の剣士!その首貰った!!」

敵プレイヤーの刃は最短距離でシオンの首を狙う、しかしシオンはそれを見ずに防ぐ。

「何ッ!?」

「後ろから首を獲るときは騒がないことをお勧めするよ」

「グァアッ!!」

シオンは刃を弾き、敵を斬る。
斬られたプレイヤーは断末魔と共に消え、シオンはverノームに切り替える。

「須郷、お前の試作使わせてもらうぞ!ハアッ!!」

シオンの手から小さな黒い球体が放たれると、その球体に敵プレイヤーが集まりはじめた。

「な、何だ!?」

「体が、引き寄せられていく!?」

「今だ!!」

「ウォオオオッ!!」

「ハァアアアッ!!」

引き寄せられ、塊となったプレイヤーたちをユージーンとサクヤが切り裂く。切り裂かれたプレイヤーたちは大きな炎となり消えていった。

「よしッ!!」

「ふう・・・」

ユージーンは拳を握り締め、サクヤは一息つく。短時間でこれだけの連携が出来るなんて、正直頭が上がらない。

「これで数は・・・やっと五割弱か」

「これからが本番だな」

「ああ」

そう、いつまでも喜びに浸ってはいられない。相手の数はまだ半分、こちらの戦力もじわじわと減ってきている。

「ウチの戦力の減少は今のところ20%、少し押されているな・・・」

「それは不味いのか?」

「近代戦闘において自軍の損失が大体30%なら撤退可能だが、それが50%になれば事実上の壊滅状態を意味する。だが、生憎この戦闘に撤退は出来ないんだよね~・・・」

「ならば、やることは一つだな」

「ああ、なるべく速く向こうの戦力を削ぎ落とす必要がある」

「分かった、では急ぐとしよう」

「ユージーンたちは西から、サクヤさんたちは東から攻めてくれ!俺は他を回る!!」

「「了解!!」」

サクヤたちは東へ、そしてユージーンたちが西へ移動しようとしたときのことだった。シオンに通信が入った。

「アリシャさんから?」

「どうした、ルー?」

『シオンくん大変!!敵側からエネミー反応が出てる!!』

「何だって!?」

その言葉にサクヤ、ユージーンが移動を中止する。

「数は?」

『分からない!反応が多すぎて・・・たぶん、千は超えてる』

「ッ!!」

「やっぱり来たか・・・」

シオンの発言に二人は疑問の表情を浮かべる。

「やっぱり、とは?」

「言葉通りの意味だ、奴は必ずエネミーを飛ばしてくると思っていた。別に戦力がプレイヤーでいいとは言ってないからな。おそらく空と地上、両方を攻めてくるだろうな」

「なら、どうすれば・・・」

「さっきも言ったでしょ?なるべく速く向こうの戦力を削ぎ落とすって。少し早いが、アレ(・・)を使うか・・・」

シオンはある人物に通信を繋いだ。

「聞こえるか?シュタイナー?」

「ああ、聞こえるよ♪」

シオンが今繋いでいるのはSAO時代カフェを経営していたシュタイナー。現在はプーカとして音楽魔法を得意とし、ついた二つ名が“旋律の奏者”。以前シオンが奏龍《クラウンドラゴン》をテイムしに行った際に協力もしている。

「少し早いがアレ(・・)を使う。いけるか?」

「OK、OK。僕を誰だと思ってるの?」

「ふっ、愚問だったか。任せたぞ」

「りょうか~い♪」

シュタイナーは通信を切ると、話にあったエネミーを確認する。

「おーおー、これまた随分と多いね~」

シュタイナーは指揮棒のような杖を取り出す。

「それじゃあ、行きますか」

そして、シュタイナーが杖を構えるとそこには異様なほどにも空気の変動が感じられた。

「ここから先へは、ウチの大将の所へは、行かせないよ♪」

 
 

 
後書き
どもども、久しぶりの投稿です!
テスト期間がようやく終わったので投稿させていただきました♪
シオン君の相変わらずの暴れっぷりに皆さん安心(?)していることでしょう。
最後には懐かしのプレイヤー、シュタイナーを出せて嬉しいかぎりです♪

コメントお待ちしてます!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ 
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