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東方魔法録~Witches fell in love with him.

作者:枝瀬 景
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36 帰路~By degrees her friendship grew into love.

 
前書き
技名が○○「技名」の形になっていないのは幻想入りしてなくてスペルカードになってないから。ごっこ遊びの威力じゃないことを表現したかったです。 

 
「八白土星は山を司る…鬼門不動!」

俺は魔法で中国にあるような門の形をした結界を作りワールさんの爪から身を守った。

アリスはトウキさんの爪を避けてから元々準備をしていた人形で攻撃を始めた。

「乙女文楽」

橙に光る大きな玉を俺と人狼達の間に飛ばしたした後、大玉が破裂してそこから人形が出てきてレーザーや弾幕をまき散らす。
人狼二体は弾幕に当たらないように跳躍して後ろに下がり距離を取った。
俺はそこに追撃を加えた。

「九紫火星は火を司る…太陽黒点!」

太陽でおこる現象を模した黒い球状の炎を発射した。
黒い球状の炎はアリスの人形から発射された弾幕を巻き込んで吸収してその大きさを大きくしながら人狼に向かって飛んでいく。しかし、

―バクン!

「いっ!?まじかよ!?」

人狼は口を開けて炎を食った。
俺が動揺した隙に、炎を食った人狼とは別の人狼が接近して爪で引っ掻こうとする。

「…!アーティフルサクリファイス!」

アリスは人狼目掛けて人形を投げた。そして人形が人狼の目の前まで来ると…

―ドカン!

「キャイン!」

と小さな爆発を起こした。目の前で爆発を起こされた人狼は堪らず仰け反った。ただ、あまり威力はなかったのか顔は軽く煤けているだけだった。まあ、威力が高かったら俺も巻き添えになってただろうからあえて威力を抑えたんだろう。
仰け反った人狼と入れ替わるように炎を食った人狼が猛進してきた。

「グルルルッ!」
「力任せかよ…!八白土星は山を司る…鬼門不動!」

俺は再び魔法で中国にあるような門の形をした結界を作って身を守った。でも、人狼の力と真正面からぶつかることで次第に押されていく。力比べは吸血鬼の力をもってしても、純粋な吸血鬼じゃない俺にとって不利だ。
さらに悪い事にさっきの爆発で仰け反った人狼が復活して俺に襲いかかる。

「明希!さがって!」

後ろで大技を準備していたアリスが声を上げた。
俺は結界をそのまま解かずに、すかさずバックステップで後ろにさがった。

「レミングスパレード!」

10、20体もの人形が現れて人狼二人に近付いて行く。さっきの爆発からしてこれも……

―ドドドドドドカーン!!

次々と人形が容赦なく爆発していく。さっきの爆発とは違い、威力は抑えられていなかった。
俺は爆発の光を眺めながらアリスに聞いた。

「なぁアリス。あんなに人形を爆発させていいの?」
「あれは未完成の人形達よ。ここの鉱石で新しい人形を作ろうと思って一応沢山持ってきたの」

簡単な質問をしている間に爆発が収まり、爆発の煙が晴れてきた。
人狼達は爆風で飛ばされて気絶していた。

「さてと、どう始末をつけようかな」
「待って下さい!!」

今まで戦闘に巻き込まれないように遠くに避難していたクレイ君が飛び出してきた。

「身勝手だとはわかってます!でも見逃してください!お願いします!!」

クレイ君は俺達の前でJapanese DoGeZaをした。
何で知ってるの?ここ日本じゃないのに。

「明希…あれはなにかしら…?」
「あれは極東に位置する日本と呼ばれる国で使われる男の最終形態の一つだよ。自らの尊厳をなげうって恭順したり相手にお願いを聞いてもらったりするエクストリームな礼のポーズさ」
「あ、あんまりわからなかったけど、一生懸命なのはわかったわ…」

この世界に生まれ変わって久しぶりに土下座を目にしたことで少し戸惑っていた。アリスも異国の文化に触れて唖然としていた。

そうこうしている内に気絶していた人狼が目覚めた。俺とアリスは一瞬身構えたが人狼達は地面に仰向けに寝そべって膝と腕を曲げていた。丁度、土下座をひっくり返したようなポーズに似ている。

「…お願い。私達を見逃して」
「…えっと」
「これは人狼の服従のポーズだ。腹を見せるポーズをすることにより、抵抗や反抗をしないことを示す」
「…そう」

土下座に犬の服従のポーズ×2。妙な組み合わせの誠意の見せ方により弱冠気圧された。変な空気になりながらも俺は言った。

「いいよ。元々凝らしめる程度でやってたし、殺すまではしようと思ってなかったから」
「そ、それじゃあ!」
「ええ、許すわ。…ただし、今回殺した人達のお墓でちゃんと懺悔して今後、無闇に人間を殺さないこと。いいね?」
「「「ありがとうございます!!」」」

………………………………………
……………………………………
…………………………………

「お~い!」

人狼は人形(ひとがた)に戻り、俺達がちゃんとクレイ君達が懺悔したのを見届けた後、塞がれた出入り口が村の外から掘られて開いた。ソンチョさんが言っていた通り、この村に食材を売りにくる人や鉱石を買い求めにくる人がこの村が危機にあることに気付いて村の外から掘っていたようだ。

「お、無事だったか?」

村の外から入ってきた人が言った。

「はい、大丈夫です。ご心配をお掛けしました」

クレイ君が代表して言った。

「あれ?ソンチョさんは?」
「…ソンチョさん達は、出入り口を塞いだ落石で…」
「君のお父さんは?…まさか」
「はい…元々この村にいた3人とお客さまの2人以外は…」
「そうか…それは御愁傷様です」

今回の人狼事件の被害者は落石による事故死に偽装した。少し不自然だが他に理由が思い付かなかった。

クレイ君達はこの村でまた生活するみたいだ。クレイ君は色々な手伝いの中、ソンチョさんの手伝いとか、鉱石を売ったりしていた。今すぐソンチョさんの手際とまではいかないけど、ある程度はこの村を経営できるらしい。新しい村長の誕生だ。ワールさんとトウキさんも今まで通りの人間の生活にもどるようだ。

「さ、そろそろ俺達も帰るとするか」
「そうね、いい加減に帰りましょ」

これ以上、俺達がこの村に留まる理由はない。だから帰ることにした。

「そうですか。必用ないとは思いますが、お気を付けて」
「ああ、さようなら」
「さようなら」

新しく、何も知らない掟の対象になる人間が来たので、俺とアリスは復元されたばかりの出入り口から村を歩いて抜けていった。



















「さて、ここまで来れば人目は気にしないでいいだろ」

村から離れた場所に森の奥深くまで来ていた。ここならば人目を気にしないで空を飛べる。ハァ~…運動不足なのかな…。ちょっと歩いただけの筈が、心臓がバクバクして少し息があがってる。

「そう、ここでお別れね」
「今度紅魔館に、遊びに来なよ…。っていっても場所がわからないか。…アリス、人形を貸して、未完成のやつで」
「いいけど、何に使うのかしら」

アリスから人形を受け取って、人形に魔法を込める。

「三碧木星は直感力…四緑木星は伝達力…哥倫ころん放送」
「これは?」

ちょっとしたGPSような物だ。ってGPSって言ってもアリスにはわからないか。まだ発明されてないだろうし。

「人形に…紅魔館の位置情報……をいれたんだ。クッ…。紅魔館に来たい…ときは……この人形の向く方向に進めばいいっ……」

あ、あれ?段々動悸が激しくなって息するのが辛い…。

「ちょっと!だいじょうぶ!?」
「ハァ、ハァハァハァ…クッ」

俺はガクッと膝を付き付いた。
喉が…!熱い!!息が…苦しい!

そんなとき、ふと、アリスの首筋に赤いものがつ…い…て…ぃ…

「明希?……きゃ!」

ガバッとアリスを抱き寄せて赤いものを舐めた。何故かそうしたくて堪らなかった。

「ひゃ!ちょ、ちょっと!」

赤いものを舐めると途端に俺の中が満たされていくのを感じた。でも足りない。全然、これっぽっちも足りない。もっともっともっともっともっともっともっと


































         血
        血
  血血血血血血血血血血血血血血血
  血    血   血    血
  血    血   血    血
  血    血   血    血
  血    血   血    血
  血    血   血    血
  血    血   血    血
  血    血   血    血
血血血血血血血血血血血血血血血血血血血


        血
      血    血 血 血
    血血血血血血血血 血 血 血
       血    血  血
       血     血
     血     血
     血      血
     血      血
     


    血  血血血血血
    血    血
    血  血血血血血
    血    血
    血    血
    血   血血血
    血  血 血 血
    血   血血  血



      血
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      血
      血     血
      血    血
       血血血血血



     血       血
    血        血
    血         血
    血         血
    血         血
    血         血
    血  血      血
     血血      


俺は抵抗出来ないようにアリスの手首を掴んでから首筋に噛みついて血を吸い始めた。

「ちゅる…ちゅぱ…ごくっ…ちゅる…ちゅぱ…ごくっ…」
「うっ…くっ…」

初めは牙をいきなり突き立てられてアリスは痛がっていた。
お構い無しに血を激しく吸う。

「じゅる、じゅるるるる…ゴクッ、じゅる、じゅるるるる…」
「はぁっ…ふぁ…んっ…!」

吸血鬼の吸血は気持ちがいい。それは身をもって体験したことだ。アリスも段々気持ちが良くなってきたようだ。
森の中では血を吸う音と口から漏れる艶めいた声だけが聞こえる。

「ちゅる…じゅるる、ちゅちゅ…」
「あっひっ…!ん~~っ!ふぁあっ!」

アリスの血を吸う度に喉の渇きが無くなって身が、心が、満たされていく。
無心に血を吸いながらボーっとした頭で今まで感じてた喉の渇きは血を吸ってなかったからかと思った。所謂、禁断症状ってやつだ。

「ごくっ…ぷはぁ、はぁ…」

人心地ついて首筋から牙を抜いたところでようやく理性を取り戻した。

「……あ、う、ごめんアリス。いきなり血を飲んで」
「あう…ちょっと貧血でくらくらする…」

アリスは自力では立っていられないのか体重を俺に預けた。

「でも助かったよアリス…。アリスがいなかったらどうなっていたか…」

吸血鬼が血を飲まなかったらどうなるかは俺は知らない。死ぬか暴走するか…。どちらにしろ今ここで血を飲まなかったら本当にマズかったことは確かだ。

「俺、初めて血を飲んだから…加減が効かなくて」
「私が…初めて…」
「ん?何か言った?」
「何も」

アリスにはあの村で紅茶を飲んでいた時に暇だったから俺が吸血鬼になった経緯を話している。だから始めはいきなり噛みつかれてびっくりしたようだけど、俺が吸血鬼だと知っていたから抵抗しないで血をくれた。

「ごめん、いきなり噛みついて」
「いいのよ。友達だから当然でしょ?」
「そっか…ありがとう」
「……代わりといっては何だけど、もうちょっとこのままでいて」

貧血にした原因は俺だからアリスの言う通り、少しだけ寄り掛かられたままにした。




















貧血が収まったアリスと別れて俺は超特急で紅魔館に帰った。が……

「うわっ!なんじゃこりゃ!」

死体死体死体死体。見渡す限り、人狼の死体がそこらへんに転がっていて、元々紅かった紅魔館は血の色でさらに紅くなっていた。
せっせと人狼の死体の片付けをしていた美鈴がいたから声をかけた。

「美鈴、何があったの?」
「あ!明希様!大変です!!」

そりゃあ、見ればわかる。こんなに人狼の死体があるのだから。
でも、美鈴の口からは予想の遥か上をいく言葉が発せられた。


「パチュリー様が拉致されました!!」 
 

 
後書き
あれ?血を吸われたからアリス吸血鬼になるの?←なりません。

この作品では吸血鬼を便利解釈しています。吸血行為は食事と仲間を増やすで二種類を使い分けています。今回は食事の方なのでアリスは吸血鬼になりません。

血で書いた『血がほしい』は僕が使っているスマホと暁のフォントが違うのか、結構ずれちゃってます。修正をしてみたんですが何故かスペースが適応されず諦めて放置。読めればいいんです 
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