髑髏の山
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第三章
「そうした方がいい」
「?どういうことだ?」
「何でここまで止めるんだ?」
「まあともかくな」
「ゴサさんも来てくれるんならな」
ナム達はそれでよかった、それで老人の制止を聞かない形で肝試しを開催することにした、酒と料理、特に老人の為に精進ものを用意してそのうえで肝試しをはじめた。スタート地点は商店街の中央でそこから寺まで行って引き返してくるというものだ。
そこまで決めてからだった、くじ引きで行く順番を決めることにした。だがここで皆老人がまだ来ていないことに気付いた。
「あれっ、ゴサさん呼んだよな」
「ああ、呼んだよ」
「確かにな」
「何でも準備してるそうだぞ」
ここで一人が言った。既に場はすっかり暗くなっている。周りに日本からの輸入品である蚊取り線香を置いて火を点けている。
「だから後で来られるそうだ」
「準備?」
「準備って何だ?」
「そこまではわからないけれどな」
それでもだというのだ。
「あの人は後から来るぜ」
「とにかく来てくれるんだな」
「そうなんだな」
「ああ、それは間違いないからな」
こう話される、そしてだった。
老人が来てくれることは間違いないとわかってナム達は安心して肝試しをはじめることにした。その肝試しはというと。
一人ずつ行く、しかし。
最初の一人は帰って来なかった、三十分経っても。それで皆心配になりひそひそと話した。
「トイレか?」
「いや、強盗に襲われたのか?」
「それか警官に職務質問されてるとかな」
「そういうのか?」
こう話される、だがその話の間も最初の一人は戻って来ない。それでだった。
不安になった次の者がこう言った。
「今から俺が行くついでにな」
「ああ、あいつを探しに行ってくれるか」
「そうしてくれるか」
「そうしてくる、ちょっと待っていてくれよ」
「わかった、それじゃあな」
「頼むな」
ナム達もこう応えて彼を送り出す、彼はすぐに出発した。しかしその彼もだった。
三十分経っても戻って来ない、大人の男なら二十分あれば優に行き来出来る距離だというのにだ。それでだった。
また一人行った、しかしその彼も戻って来ない。一同はいい加減不安を感じだした。
「おい、おかしいよな」
「ああ、どう考えてもな」
「何で戻って来ないんだ?」
「どういうことなんだ?」
こう話すのだった。
「一体な」
「三人共どうなったんだ?」
「一人なら強盗とかあるけれどな」
「道に迷う様な場所じゃないしな」
誰もがよく知っている、子供の頃から行き来している場所だ。遊び場と言ってもいい。そんな場所で夜とはいえ迷う筈がなかった。
だからだ、皆首を傾げさせるのだった。
「これは尋常じゃないぞ」
「今いる全員で確かめるか」
「ああ、そうしようか」
「今からな」
「遅かったか」
ここでだ、老人の声がした。見れば。
老人は僧侶の服を着ていた、カンボジアの昔ながらの僧侶の服だ。そして多くの仏具をその手に持っていた。
その彼を見てだ、ナム達は驚いて言った。
「えっ、ゴサさんまさか」
「お坊さんだったんですか」
「縄売りじゃなくて」
「僧侶だったんですか」
「詳しい話は後だ、とにかくだ」
老人は深刻な顔で一同に言う。
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