剣の丘に花は咲く
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第三章 始祖の祈祷書
エピローグ 白い少女
前書き
すみません、エピローグと第七話がくっついていたので分けました。
第七話を読んだ人は飛ばしてください。
すみません。
ルイズは夢を見ていた。
―――だ、れ……?
雲一つなく晴れ渡る空から降りそそぐ陽光に照らされ、青々茂る草原の中、いつも通りの赤い外套に黒の甲冑を着た男が仰向けに寝転がっている。時折吹く穏やかな風は、柔らかく男の灰色の髪を揺らす。
空から刺す太陽光と風で顔にかかった髪に顔を顰める男の様子に、傍に座っていた少女が優しげに微笑むと、優しく男の頭を持ち上げ自身の膝に乗せた。
太陽光を自身の体で遮った少女は、慈愛に満ちた顔で男の顔にかかった髪を白く細い指先で摘み払っていく。
見る者の胸を暖かくさせる光景に、ルイズの頬が自然と緩む。
あった、かい……な――
柔らかな風に、少女は乱れる長い銀色に輝く髪を片手で押させえると、目を細め残った片手で膝に乗せた男の頭を撫でる。
男の頭を撫でる手は優しく、愛おしげに。
男を見つめる瞳は慈愛に満ち、庇護するように。
明らかに男よりも女の子の方が歳が下であるにもかかわらず。まるで男を見つめる少女が、男の母親の様にも見える。
暖かく、優しい情景である。しかし、見つめるルイズはその光景に、何か言葉に出来ない寂しさを感じていた。
どう、して……かな――
少女は男の頭を撫で続けている。
ずっと変わらず。
不意に少女が膝に乗せた男に声をかけた。
「……シロウったら……こんなに一杯傷付いて……本当に馬鹿……何だから」
少女の声も、やはり優しく、暖かく……そして悲しげであった……。
「これからも……シロウはいっぱい傷付くんでしょ……」
ザアッと強い風が吹いた。少女は風に髪が嬲られるのに任せ、空を見上げた。
―――えっ?
一瞬、少女とルイズの視線が交わった。ルイズが疑問の声を上げると、それに応えるかのように少女が口を開いた。
「シロウ……あなたの未来に幸多からんことを……」
空を見上げ祈る少女の顔には、少女の雰囲気そのままの、雪の様な淡く美しい笑みを浮かんでいた。
後書き
次から――誓約の水精霊編――なんですが……あ~……ちょっとある意味やばい……どうしよう……
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