魔法少女リリカルなのは~転生してうちは一族になりました~
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第三話「悪役は難しい」
「ふぁ~……ああー眠ぃ……」
昼休み。学校の屋上でいつもどおり、昼食をなのは達3人と済ませそのまま一緒に過ごしている。
昨日の化物が破壊した動物病院周辺の話を振られたが、あくびを優先し応えることはしない。
「大丈夫、アオグ君?凄く眠そうにしてるけど……」
「大丈夫じゃない。もう永眠したくて仕方ないんだよ」
「ダ、ダメだよ!」
眠気に負け欠伸をするとすずかが心配して声をかけてくる。
昨夜の騒ぎの後、俺は寝間着に着替えると速攻でベッドにダイブし、眠りにつこうとした。
だが俺の安眠を邪魔する奴が現れた。
『はぁーい♪アオグクンクン!貴方のお母さん女神ことカグヤさんだよぉ』
そう…あの五月蝿い女神から電話が来たのだ。
天界に戻った女神は寂しくなったとかなんとかで、俺の声を聞きたくなり連絡を入れたらしい。
普段なら直ぐ電話をブチルところだが俺も女神から昨夜の騒ぎのことについて聞いておきたかった。
そして俺の知りたいことをやはり女神は知っていた。
どうやらこの世界には魔法という力が存在し、昨日のあの石ころは魔法の力を宿したジュエルシードと呼ばれ、生き物の願いを叶える力を持っているとか。それだけなら特に害はなさそうに見えるが、ほとんど場合が暴走しこの前のようなことに発展してしまう。しかもそれが計21個もあるらしく、いつ発動するかがわからない、危険な状況だということだ。あの頭に響いていたユーノの声も念話と呼ばれる魔法の一種だとか。他にも色々聞きたかったのだが、俺の声を遮るように女神がワンワン泣き始め、会いたいだの抱き締めたいなど喚き始めた。聞くに耐えなかったので電話を切ると、今度は俺がでるまで一晩中電話を鳴らし続けるという迷惑行為を始め、軽くノイローゼになりかけた。
色んな意味であの駄女神には勝てる気がしないぞ、まったく。
「心配しすぎよすずか。どうせ夜更かしして、寝不足になっただけよ」
隣に座るアリサが呆れた様子で話す。コイツ…俺の苦労を知らないで……
「ああ…そうなんだよ。アリサのことを考えてハァハァしてたら、眠れなくなったんだよ」
「ちょ!アオグ、アンタ……!」
「なんてな。誰がそんな貧相な身体に欲情するか」
「アオグ……ア、アンタねぇ……」
よし八つ当たり終了。後は適当に逃げ回れば食後の運動完了だな。
「待ちなさいー!アオグ!」
追い掛けくるアリサを上手くあしらいながら、すずかの隣にいるなのはを横目で見る。
俺達の戯れ合いを見て苦笑いしているが、何か別のことに意識が向いているような、今のアイツからはそう感じられる。多分だがあのフェレットモドキと念話で話しているのだろう。ちなみにあのフェレットモドキは現在高町家で家族公認で飼われることになったようだ。話の内容からおそらく昨夜のことと魔法のことは打ち明けてはいないはず。
「待ちなさ~い!」
学校も終わり放課後、習い事があるとすずかとアリサと別に帰る。今はなのはと一緒に帰っている。
さり気なく昨日の事件のことを尋ねどれほどボロがでないか確かめてみると思いの外上手く肝心な所を躱している。こいつ意外と嘘をつくのが上手いかもしれん。
などと考えていると急になのはの足が止まった。
何かを感じているような顔をしている。
そして突然、別の方向へと駆け出した。
「おい、どうした!」
「ごめん!えっと…お母さんからスーパーでお使い頼まれてたのー!だから今日はここでさよなら!」
「っておい、スーパーはここだろうが……って聞いてないし」
スーパーのある場所を指差した時には既になのはの耳に俺の声は届いておらず、そのまま走り去っていった。
「仕方ない……」
何かあったのはまず間違いない。このまま放っておいて取り返しのつかないことになるよりは、後を着けた方がマシだろう。人気のない路地裏に入り、周りを確認すると右親指を軽く噛み、血を流すと即座に印を組み右手を地面に叩きつける。
「口寄せの術!」
路地裏に白い煙が広がる。
口寄せや忍術を使うと起こる煙だが、これだけ狭い路地裏で使うと軽い霧隠れの術だな。
「呼んだ、アオグ兄貴?」
煙が晴れ、その中心には全長4メートルはあろう巨大な青い翼の鳥がアオグを見下ろしている。
「ああ、久しぶりだな風空(フウスケ)。少し見ない内にまた大きくなったな」
「まぁね、成長期だから」
この青い鳥の名は風空。俺の口寄せ動物だ。
大分鋭い姿で肉食の鷹のように見えるのだが、種類はペットとして飼われていることが多いセキセイインコ。生前の俺が弟のように育てていた、セキセイインコのフウスケを女神がこの世界に転生させたのがこの風空のようだ。俺は当時のことをまだおぼろ気にしか思い出せていないの対し、この風空は前世で俺に育てられていたことを憶えているようで、また俺と一緒に生きることができることが嬉しいらしく本当にペットのようによく甘えてくる。
「それよりも頼みがある」
「なにかな?」
「空に飛んでなのはを追ってくれ」
「なのはを?」
「そうだ。走って追うつもりだったが、たまにはお前の背中に乗って飛ぶのも悪くないと思ってな」
気配を消してなのはの後をつけることは朝飯前。どうせ追うならなかなか味わうことのできない空の空気を楽しむのも悪くないと思い、わざわざ口寄せして風空を呼び出したのだ。
変化して体格を大人ほどのものに変え、巻物を鞄から取出し、中に封印してある暁の衣を纏う。
「本当そのお面不気味だよね」
「同感だな。まぁ顔を隠すには問題ない」
手に持つトビの面を見た印象を正直に話す風空。確かにそうだ。だが戦いになれば、この不気味さは相手を威圧することもできれば、表情を隠すことができ読まれることもない万能装備にもなる……とはいえ昔試着した時、あまりにイタイ格好だと感じて、二度と着るかと心中叫んだことは語るまい。
「行け、風空」
「行っくぞー!」
先に飛んだ風空に、左右の建物を足場にして交互に跳び、待っていた風空の背中に着地すると、風空は海鳴の大空をその翼で飛翔する。
「さて……探すとするか」
両目を写輪眼に切り替え、なのはを探す。白眼ほどではないがこの視力なら十分人探しに写輪眼も使える。
「……見つけた」
予想より早くなのはを見つけたしまったが、特に困ることはない。背中の髪を後頭部までまとめ、面を付ければもう完璧に怪しさ全開なトビの出来上がり。
「もういいぞ風空、消えてろ」
「ちょ、僕の出番これだけ!?」
風空の背中から飛び降り、宙を舞う。大した高度でもないのだが衣越しでも感じる肌を刺すような寒さに一緒ぶるっとしたが直ぐに慣れた。
「神威!」
右目の写輪眼を中心に空間が歪み始め、体はその中へ吸い込まれ時空間に移動すした。
「なのは!レイジングハートの起動を!」
「ふぇ!?起動ってなんだっけ!?」
神威で移動した先は神社の境内の木の上だった。
まず最初に目に入った光景は鋭い眼光で唸り声をあげるモンスターのよう外見の黒い犬だった。近くで一般人も倒れているが見た感じ外傷はなく、気絶しているだけだろう。
というか案の定厄介ごとに首を突っ込んだいるようだなアイツは。
昨日のあのフェレットも居るな……包帯だらけだったはずだがあれだけの傷が短期間で癒えると並外れた治癒力だ。まぁ今は関係ないことか。
「えぇ!?あんな長いの覚えてないよぉ!」
「もう一回言うから、繰り返して!」
フェレット……いや、ユーノだったか?ユーノが昨日のあの長ったらしい呪文らしいセリフをなのはに復唱させようとするが、化け犬は待ってはくれない。なのは目がけて一直線に駆け出した。
「ぐおぉぉぉ!」
「きゃっ!!」
呪文を唱える余裕もなく、化け犬がなのはを襲おうとし、なのはは目尻に涙を溜め恐怖のあまり目を瞑った。
だが……
「がぁっ!?」
「えっ?」
閉じた目を開けると自分に飛び掛かろうとした化け犬が真逆の方向に飛んでいく姿と、昨夜なのはが出会った謎
の仮面の男が右足を上げて立っていた。
「あ、あなたは昨日の!」
「グルグルお面さん!?」
仮面の男、トビは思わずなのはの自分の呼び名に転けそうなる。
「……トビだ。まぁ名前なんてどうでもいいが……」
「ガルルルル……ガアッ!」
「五月蝿いヤツだ。同じ畜生でも風空のヤツとは大違いだな」
襲いかかる化け犬の爪を境内で悠々と躱し続ける。やはり獣だな。動きが速いだけで単調な攻撃しかやってこない。洞察眼である写輪眼を使うまでもないな。
「おい、やることがあるんだったら今の内だぞ」
「え?」
「手順は昨日と同じだ。お前達がメインで俺はサポート。奴が俺に気を取られている内に準備しろ」
「わかりました!なのは!」
こちらの意図が理解できたユーノがなのはに準備を促す。
これで後は向こうの準備が整うまでの間俺が時間稼ぎを続ければ問題解決。呆気ないが仕方ない。
取り敢えず修業がてら化け犬の攻撃を躱すことでも続けようか。
神威を使えばそれで済むがそれではせっかく俺に引き付けた化け犬の注意が外れ、またなのはに行くことを考慮すれば、たまに蹴りを入れて適度に挑発し俺だけしか目に入らないようにすればいいだけだ。
「レイジングハート!セッ~トアップ!」
<Stand by reaey>
あの時と同じ桜色の光が周囲に広がり、その中から白いドレス風の衣装を纏ったなのはが現れた。
「あれ?今、起動パスワードいわかなったんじゃ……」
「ふぇ?あ、そういえば……」
なにやら変身手順が一部おかしかったようだが、見たところ問題はなさそうだ。
「トビさん!準備ができました!」
後ろを振り替えると杖を構えたなのはがいた。あとは奴の動きを止めるだけだ。
こちらに突っ込んでくる化け犬へ接近し、右手を当てる。
「水牢の術!」
「ガルッア!?」
化け犬は水玉の中に閉じ込められ、もがいている。
「今だやれ」
「はい!」
俺の合図で目を閉じ、前回唱えた呪文を唱える。
「リリカルマジカル!ジュエルシード、封印!」
……ああ、なんて恥ずかしい呪文なんだ。もし唱えるよう強要されたら、舌を噛んで自害した方がましだな。
杖から伸びるリボンが水牢に捕らわれる化け犬に向かってくる。
水に触れていた手を離し、その場から離れる。
水牢が崩れ、解放された化け犬は今度はリボンに拘束される。
そして今度こそ化け犬の中のジュエルシードは封印される。器となった犬は特にケガはなさそうだ。
「さて……化け犬退治は終わったわけだ」
「あの!アナタはどうして僕達を助けてくれるんですか?」
立ち去ろうとするとユーノが声をかけてきた。なのはの身を守るためと答えるのもいいが、それでは俺がアイツに気があるようでバレた時が色々面倒だ。
「そうだな……言うなら気まぐれであり、計画であり、平和のためである」
「け、計画?」
計画という言葉を聞いて警戒の色を強めるユーノ。少しやらかしたか……。
まぁ物は言い様だ。
「安心しろ。ジュエルシードとやらを利用する気は更々ない。俺はお前達、魔法を使う人間に興味があるだけ……興味が冷めない内に死なれるのはつまらないからな」
まぁこれくらいでいいだろう。
はぁ、ガラじゃない性格を演じるのは疲れるな。
「またな」
右目の神威を使い、俺はその場から去った。
空間移動の途中ユーノが神威で起こる現象に驚いているのが見えたが、正体がわかるはずもない。
後書き
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