Element Magic Trinity
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叶わない夢、割れない氷
「ウルの蘇生の僅かな可能性を―――――己の手で握り潰したんだ!」
パラゴーネの、怒りの叫び。
紅蓮の瞳は怒りと憎しみに輝いて、拳は痛いほどに握りしめられている。
淡い桃色の光が髪やコート、マントを天へと逆立たせていく。
「蘇生・・・ウルを生き返らせるだと!?」
「肯定する。シグリット様は蘇生の術を生み出した。Rシステムとは違う、誰かの犠牲の上に立つ幸ではない、光の禁忌術を」
ふわり、と淡い桃色の光が消える。
逆立っていた髪がゆっくりと下り、グレイのコートとパラゴーネのマントが風に揺れた。
「シグリット様は我らがマスターであり、魔法学に長けている。かつては魔法開発局にいたと聞いた。人1人蘇生させる魔法を生み出すなど、難解な事ではない」
「で、それをテメェは習得した。それでウルを生き返らせようとした、と」
こくり、とパラゴーネが頷く。
それを見た瞬間、グレイの表情が一気に怒りへと変わった。
「っが!」
駆け、殴る。
一瞬と言っても間違っていない出来事にパラゴーネは対応出来ず、殴り飛ばされ壁に激突した。
口元の血を拭い、手の甲についた己の血を舐める。
「そんなの幸でも何でもねぇよ!テメェはただテメェの為に有り得ちゃいけねぇ蘇生を使おうとした!死んだ人間が生き返るなんてのはおかしいんだよ!そんなのテメェのワガママだろ!」
「・・・それの何が悪い」
怒りに任せて叫ぶグレイに、冷水を浴びせるかのような冷たい声を投げつける。
殴られたダメージを消し去るかのように数回首を横に振ると、パラゴーネは顔を上げた。
「生存を願う事の何が間違っている!世界の理などという目視不可能なモノに、何故従わなければいけない!従う理由など皆無だろう!」
「生きてる事を信じて願うのは間違っちゃいねぇ!だけどお前は違う、途中で道間違えてんだよ!」
氷のハンマーを重力操作が壊し、重力の銃弾を氷の槍が撃ち落とす。
お互いに睨み合い、その両手は造形魔法の構えを取る。
「誰を憎もうとテメェの勝手だ。だけどオレからすりゃ、やってる事ァアイツと何にも変わらねぇ!」
「あの男と同類にするな!私の所望はあの男が原因で叶わなかった!あの男があの氷を溶かしたりしなければ、ウルは人間として蘇れたんだ!」
パラゴーネの怒りに反応するかのように、その後ろで重力の大砲が造られていく。
巨大だからか今までよりはゆっくりなペース(それでも十分速い方)で、砲撃が造形される。
そして、同時に両手から重力の三つ又の矛が生まれた。
「グラビティメイク “三又矛”!」
「っ・・・アイスメイク “盾”!」
空気を裂くような音を響かせながら振り下ろされた矛を防ぐべく、グレイは氷の盾を瞬時に造り出す。
が、パラゴーネは全く動じず、左手を矛の柄から離して握りしめた。
「重力操作、圧迫!」
誰にでも出来るような、単純な動き。
だが、その単純な動きで重力を操り、エルザの剣を曲げたのが天秤宮を司る彼女であり。
今もたったそれだけの動きで、グレイの氷の盾を―――――粉砕した。
「なっ・・・」
「私は天秤宮のパラゴーネ!何であろうと、我が支配下に置かれた重力の前では全て粉砕する!」
「がああああっ!」
続けてパラゴーネは右腕を薙ぎ払う。
それに合わせて淡い桃色の光が舞い、グレイを包む。
そのまま先ほどの動きに合わせてギュイン!と右に引っ張られ、その光に包まれるグレイも引っ張られるように壁に叩きつけられた。
「って・・・」
「グラビティメイク “雷神鎚”!」
「うおっ」
痛みに顔を顰めている間にも、パラゴーネはその手からハンマーに比べると柄の短い鎚を生み出し、グレイ目掛けて振り下ろす。
それを床をゴロリと転がる事で回避し、グレイは立ち上がった。
パラゴーネの後ろの巨大砲台は、砲口に淡い桃色の光を集めている。
「つか、それならその術とやらを使えばいいじゃねーか。ウルは溶けちまったが、水になって海に流れてるんだからな」
「・・・愚かな事を」
先ほどの雷神鎚によって床に開いた穴にチラリと目を向け、グレイは言う。
が、パラゴーネはそれに対して「おお!その手があったか!」と驚く訳でも「そんなのとっくに試したわーっ!」とキレる訳でもなく、「何言ってんだコイツ」と言いたげに呆れた表情で首を横に振った。
「海は範囲が広すぎる」
「は?」
「水溜り・・・湖サイズならまだ問題は皆無だけれど」
意味が解らない、と眉を顰めるグレイに、パラゴーネは呟いた。
「この世界において海がどれほどの面積を誇るか、お前は解釈しているの?」
竜とライオン。
正確には飛竜と、派手に飾られたライオン。
飛竜の方は白地に赤い模様が走っており。
ライオンの方はサーカスにでも出るんじゃないか、と思う程に飾られていた。
「ヴェルハルト!」
飛竜を言葉と魔力で操る少女―――――サルディアは、己の魔法である祝福の導き手を用いて召喚した『デュプリケーター』と呼ばれる種族の飛竜、『ヴェルハルト』の名を叫んでいた。
「大丈夫、そのまま―――――今!」
何をしろ、とは言わない。
ただサルディアは、ヴェルハルトにタイミングを命じる。
否、本人は命じているつもりはない。
タイミングを“教えて”いるだけだ。
「グガアアアアアアッ!」
そして、ヴェルハルトと名付けられた飛竜は、主である少女の声に反応してその口を開く。
大きく開かれた口から放たれるのは、全てを焼き尽くすような紅蓮の咆哮。
その炎は床を焼き、壁を駆け、敵であるライオンへと向かう。
「レオヴィニラ、回避しなさい」
ライオンに命じているのは、サルディアとは別の召喚魔導士だった。
彼女の名はフラウ。
血塗れの欲望のギルドマスター直属部隊、暗黒の蝶に所属する、“処女宮”を司る少女だ。
「ガウッ!」
一声吼え、レオヴィニラと呼ばれたライオンは地を蹴る。
そしてそのままヴェルハルトを飛び越え、サルディアの目の前に着地した。
サルディアの目が見開かれる。
「グルアアアアアアッ!」
「ギャウッ!」
が、レオヴィニラの攻撃はサルディアに当たるどころか、攻撃する素振りさえ出来なかった。
ヴェルハルトの長い尻尾が思いっきりレオヴィニラの横っ腹に直撃したのだ。
尻尾攻撃とサルディアが呼ぶその攻撃法をモロに喰らったレオヴィニラは壁にその身を直撃させ、目を回す。
それを見たフラウは溜息をつき、魔法陣にレオヴィニラを吸い込ませる。
「さすが“オントス・オン”ってトコかしら。百獣の王も、飛竜の王と評されるデュプリケーターの前じゃ子猫同然ね」
「そこ、退いてもらえないかな?私は私の主のお姉さんを助けに行きたいの」
「それは無理な相談ね」
妖艶に微笑むフラウに、サルディアは腰に手を当てながら呟く。
その顔には微笑みこそあるものの、その笑みは普段ギルドで見せているような優しいモノではなく、どちらかといえば冷酷さを覚える笑みだった。
「私は血塗れの欲望の処女宮。貴女の敵なの。倒れでもしない限り、ここを退く気はないのよ?」
クスリ、と微笑む。
右太腿に刻まれた、美しい模様のようで見る者全てを戦慄させるその紋章は赤く染まり、長すぎるんじゃないかと思う程に長く伸ばしたワインレッドの髪は、膝裏辺りで毛先を揺らしている。
体のラインをくっきりとさせるミニの燕尾服調ワンピースを纏い、頭にやや大きめのシルクハットを被ったフラウは、シルクハットの鍔を右手で握り、芝居がかったお辞儀をした。
「本日は、我が三日月曲馬団にようこそ御出で下さいました」
頭を上げ、微笑む。
妖艶に、冷酷に。
それが己の目的の為なら手段を択ばない人間が浮かべる笑みだという事を、サルディアは知っていた。
自分の知るとある少女も、それに似た笑みを浮かべていたから。
「お客様の命の最後まで、どうぞお楽しみくださいませ」
「海はこの星の約4分の3を占めると言われている。星竜は随分アンバランスに世界を創ったようだ」
やれやれ、と言いたげに首を横に振るパラゴーネ。
紅蓮の瞳が、真っ直ぐにグレイを見つめる。
「グレイ・フルバスター、お前に請問する。お前は“星の約4分の3を占める海から、とある成分だけを一定量だけ採取して来い、他の成分は皆無で”と言われて、それを達成可能か?」
「んなの出来る訳ねぇだろ!」
反射的に、ツッコむように答えていた。
パラゴーネの言う通り、海は星の約4分の3を占める。
その海から1つの成分だけを、しかも一定量だけ取ってくるなど、何年何十年かかるか解らない。
少なくても多くてもいけないだけでなく、他の成分が混じっててはいけない等とは。
一種の拷問か、とさえ思ってしまう。
「だろうな。これで可能だと言われれば、私はお前を本格的に変人として処理しなければならない所だった」
「本格的にって何だよ本格的にって!」
「今のお前は私にとっては変人の域に片足入れてる状態だ」
「何でだよ!?」
それはいつでもどこでも年がら年中、24時間365日、晴れの日も雨の日も曇りの日も雪の日も嵐の日も状況も環境も関係なく服を脱ぐ脱ぎ癖が影響しているのだが、グレイはそれに気付いていない。
それに思わずため息をつき、パラゴーネは「話が脱線した」と呟いた。
「それと同じだ」
「は?」
「ウルが海に流れた事は私も解釈している。が、氷だったウルの水は、永遠に同然の場所に、一滴の零れもなく存在するのか?」
つまり、パラゴーネが言いたい事はこうだ。
海は範囲が広すぎる。それでは蘇生の術を使えない。
何故なら、海は流れているからだ。
いつまでも同じところに同じ水がある訳ではなく、様々な所を漂っていく。
それは水となったウルも同じ。ずっと同じ場所にはいない。
「シグリット様の生み出した秘術は、代償が皆無である代わりにとある欠点を所持していた」
そこまで言われれば、グレイには解る。
元々勘が鋭いとは言われる方だ(が、ティアだけはそれを否定している。いい加減ジュビアの想いに気づけ、という事だがそれにもグレイは気づいていない)。
「“一か所に蘇生対象がいなければならない”、とかか?」
「肯定する。よく解釈したな、驚愕だ」
本当に驚いたのか、僅かに目を見開いてパラゴーネは素直にグレイを褒める。
が、その上からな口調に変わりはないのと、当たっても嬉しくない為、褒められた気はちっともしなかった。
「私が秘術を習得しガルナ島に訪れた時、月の遺跡にあったのは・・・デリオラの残骸だけだった」
静かな空間に、感情を押し殺したパラゴーネの声が響く。
無理にでも感情を押し殺さないと、怒りや憎しみを爆発させてしまうのだろう。
「もう出遅れだと知った時、意外にも私は冷静だった。島に唯一の村の者に話を聞き、何の情報も得られなかった私は裏のルートを駆使し、様々な闇ギルドの者に責問し・・・ようやく全てを知った」
ぐっ、と拳を握りしめる。
背後の砲台の砲口が、桃色の光を強くしていく。
「まずはお前を駆逐し、次に奴の仲間であるあの3人を駆逐する。アイツが怒りで冷静さを欠いた時―――――私の所望は達成される」
あの3人、はシェリーとユウカ、トビーの事だろう。
よくそこまで調べたな、と少し感心する一方で、傾いた遺跡を直したあの仮面の奴は含まれねぇのか?と疑問に思った。
「だから私はお前を駆逐する」
パラゴーネの瞳が輝いた。
それと同時に砲口の光が強くなり、魔法陣を展開する。
その眩しさに思わずグレイは腕で目元を覆い、顔を逸らした。
「私の所望の為に死ね、グレイ・フルバスター!」
吼える。
桃色の髪を乱れるように靡かせて、紅蓮の瞳を炎のように煌めかせて。
砲口がグレイを向き、パラゴーネが高らかに指を鳴らす。
「重力砲!」
砲撃が、放たれた。
銀とも灰とも取れる色の砲撃が。
真っ直ぐに、文字通り真っ直ぐに進んでいく。
「アイスメイク・・・」
それを視界に入れながら、グレイは造形魔法の構えを取った。
その手から冷気が溢れ、術者が思い描いた形が生まれる。
「“盾”!」
造り出されたのは、氷の盾。
花のように広がった形の、広範囲を守る魔法。
バッ!と両腕を広げた状態で盾を維持するグレイの目に、盾に直撃する重力の砲撃が映った。
「愚かな事を。私の重力操作を前に、そんな盾が通用するとでも思った?」
そう―――――パラゴーネは天秤宮。
その手を横に振れば対象を壁に叩きつけ、握りしめれば圧迫させ砕き、時には重力操作で人間を押し潰して仕留める。
氷など、重力をある程度込めてしまえば一瞬で砕けていく。
「重力操作、圧迫」
手を、握る。
ただそれだけの動きで、氷の盾に重力をかけて―――――
「!」
気づいた。
パラゴーネの目が見開かれる。
「なっ・・・どういう事・・・!?」
今、自分は重力を込めている。
だから、5秒も立たずにあの氷の盾は砕ける―――ハズ。
先ほどだって三又矛を防いだ盾を、ほぼ一瞬で砕いた。
なのに、だとすれば。
「割れない・・・!?」
―――――――これは、一体どういう事だ?
これは後にパラゴーネが気づいた事だ。
あの時放った重力砲は、パラゴーネの最後の一撃になるハズだった。
グレイがそれを防ごうが防がず避けようが、パラゴーネの勝利は絶対だったと言えるだろう。
グレイが防げば、その盾を重力操作で壊す。
防がず避ければ、重力操作で位置を強制固定して砲撃のルートを変える。
どちらの行動をとられようと、勝利は確実だった。
相手は固体、しかもそれなりに割れやすい氷。
少しの重力で砕けてしまう氷が相手なら、パラゴーネに手こずる理由なんてなかった。
今回は少し特例―――――相手が自分の憧れる魔導士の弟子だったが、駆逐対象に手を抜く理由も、パラゴーネにはない。
が、パラゴーネの砲撃と重力操作は、グレイの盾を砕けなかった。
理由は至ってシンプル。
―――――パラゴーネに、力がなかったのだ。
先ほども言ったが、あの砲撃はパラゴーネの最後の一撃、トドメとなるはずのモノだった。
相手を立たせないべく、トドメには普通の攻撃より力を込める。
それが仇となった。
パラゴーネに残っていた魔力では。
――――――力の篭った砲撃と重力操作を、両立出来なかったのだ。
「何故・・・だけど、それなら重力砲で盾を圧砕する!」
今はそれに気付いていないパラゴーネは、重力砲に力を込める。
ピキピキ、パキパキと音を立て、氷の盾にヒビが入っていく。
「砕けろ!」
その声に応えるように、パリィン!と澄んだ音を立て、氷の盾が粉砕する。
氷の欠片をさらに細かく砕きながら、砲撃はグレイに向かって行く。
そして、重力砲はグレイの腹辺りに直撃し―――――
「!」
パリィン!と。
―――――グレイまでもが、砕けた。
冷たい欠片を、宙に舞わせて。
「氷雪砲!」
「なっ・・・」
パラゴーネが異変に気づいて目を向けた際には、時既に遅し。
どこからか現れたグレイは氷の大砲を担ぎ、その砲口から氷を砲撃を放った。
重力砲と氷雪砲が直撃し、音を立てて両方とも消え去る。
「身代わりか・・・!」
唇を噛みしめる。
あの盾を造ったのは本物だ。
だけど、その盾の後ろにいたグレイは偽者だった。
盾を造ったと同時に身代わりを置いて隠れ、チャンスを窺っていたのだろう。
パラゴーネは思惑通りに騙されたという事だ。
(・・・けど、まだ勝機はある。相手が氷を使うのに変更はない!)
パラゴーネは天秤宮。
重力さえあれば、何だって砕き、押し潰す。
だから、まだ終わった訳ではない。
――――――そう、思っていた。
「アイスメイク 牢獄!」
行動が早かったのは、グレイの方だった。
地を蹴ってパラゴーネの頭上、天井近くまで飛んだグレイの両手から造られた氷の牢獄がパラゴーネを閉じ込める。
一瞬目を見開いたパラゴーネだったが、すぐに何でもないように溜息をつく。
「全く、正規ギルドはこれだから困る。いくらやっても、私の重力の前じゃ・・・」
「砕けるモンなら砕いてみろよ」
呆れたように呟くパラゴーネの言葉を遮って、グレイが言った。
紅蓮の瞳が開かれ、グレイを見つめ、目を見開く。
グレイの顔には―――――笑みが、浮かんでいた。
「オレの魔法は、お前が憧れた魔導士直伝だ」
たった一言。
関係ない人間が聞いたら、「だから何?」で終わってしまう言葉。
でも、パラゴーネにとっては違う。
(ウル直伝の・・・魔法)
そして、その一言は。
パラゴーネの動きを止めるには、十分すぎる言葉だった。
そして、パラゴーネが動きを止めた約十数秒は。
グレイが魔法を発動するには、十分すぎる時間だった。
パラゴーネはハッとしたように目を見開き、グレイに目を向け、呟く。
「・・・本気」
その呟きは、届かなかった。
「氷欠泉!!!!」
片膝を立て、手を床に当てる。
もう片方の手を握りしめ、床を殴るように押し当てた。
その瞬間、床から氷が立ち上る。
「うあああああああっ!」
立ち上る氷に巻き込まれるように天に近づき、氷が砕ける音と共に床に落下する。
ドサッと落ちたパラゴーネは信じられないモノを見るような目で天井を見上げていた。
「私が、負けた・・・正規ギルドに・・・」
「正規ギルドじゃねぇ」
「は?」
パラゴーネの呟きを、グレイは何故か否定した。
ますます意味が解らなくなったパラゴーネは、痛む体を無理矢理起こして眉を顰める。
「お前は、妖精の尻尾に負けたんだ」
その言葉に、パラゴーネは少し不服そうに目を細め、「ん」とある方向を指さす。
「ん?」とグレイは指さす方向に目を向け、それから自分の上半身に目を向け、ぎょっとしたように目を見開いた。
「どわっ!いつの間に脱いでんだ!?」
「私に聞くな。氷欠泉を使用している時は既に脱衣していたけど」
「気づいてたなら言えよ!」
「何で私がお前の脱衣に関して発言しなければいけない」
服を着ながら喚くグレイに、パラゴーネは呆れたように溜息をつく。
ゴロリと床に寝転がり、天井を見つめた。
ふっ、とその顔に薄い笑みが浮かぶ。
「こんな奴に敗北したのか、私は・・・我ながら情けない」
「こんな奴って何だこんな奴って!」
「こんな奴はこんな奴だ」
グレイの言葉に適当に返し、パラゴーネはワンピースのポケットをゴソゴソ漁り始める。
首を傾げるグレイに、パラゴーネはポケットから取り出した『それ』を差し出した。
「・・・何だこれ」
「見れば解るだろう、鍵だ」
「いや、そりゃ解るけど・・・」
何の鍵かが解らない。
星霊の鍵ではないだろうし(金でも銀でもなく、アンティーク雑貨にありそうな感じの鍵だった)、家の鍵でもなさそうだ(家の鍵には古代文字なんて書かないだろう)。
頭に?を浮かべるグレイの手に無理矢理鍵を握らせ、パラゴーネはグレイを見上げた。
そして、言う。
「その時が来れば、この鍵の使用法は嫌でも解釈する事になる。絶対に失するな」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
前回の更新から約1週間・・・。
長い、長いよ・・・長くしてるのは私だけど・・・。
感想・批評、お待ちしてます。
今更ですけど、ライアーが使った魔海閃撃はティアをイメージした名前です。
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