永遠の空~失色の君~
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EPISODE4 クラス代表選抜戦~その3~
「随分とやってくれたな蒼月」
気絶したセシリアを抱えて戻ってきた僕を迎えたのは織斑先生のその一言だった。
「見せてもらったぞ。その上で一つ聞きたいことがある」
「なんでしょう?」
「あの動き。普通の人間、ましてやIS搭乗時間が24時間未満の人間ができることじゃない。蒼月、おまえはいったい・・・・」
「・・・・ただの転校生ですよ。織斑先生」
◇
クラス代表決定戦、セシリアと一夏の喧嘩から始まったこの決闘は僕を巻き込んでの三つ巴の戦いとなったが初戦で僕が撃ったハドロンブラスターによりセシリアが気絶したため一夏との戦いはブルーティアーズの修理と整備も含めさらに一週間後となった。
そしてこれにより、今まであまり目立たなかった僕の存在が学園じゅうに広まり今じゃ学年を飛び越えて教室に生徒たちが詰めかけてくるまでになってしまった。その度に織斑先生が頭を悩ませているのは言うまでもなだろう。
「あなたも大変ですわね。そんなことに見舞われながらもこうして私のところに来るんですもの」
メディカルルームに設けられたベッドに腰掛けるセシリアの横で椅子に座ってリンゴを剥く僕を見てそうつぶやいた。
「好きでやってることだからそんなことはない。・・・・リンゴ、いるかい?」
「いただきます」
果物ナイフでリンゴを一口サイズに切り楊枝をさしてセシリアに差し出す。
「な、自分で食べれます!」
「きみはけが人なんだ。無理はよくない。それに僕にはこうする義務がある」
「義務なんて・・・・」
「・・・・僕がもっと機体をうまく扱えてたらこんなことにはならなかった。本当にすまない」
最後のハドロンブラスターの威力を見誤ったがために彼女は怪我をした。山田先生は「ライ君がうまい具合に出力を調整してくれたおかげで軽いかすり傷ですみました」と言ってはくれたが、それでも僕が怪我をさせたことに変わりない。
というか、なんで顔が赤いんだ?
「謝る必要は・・・・」
「だから、せめてこれくらいは許してくれ。気に入らないのなら、咎めはあとでいくらでも受ける」
「ううう・・・・わ、わかりました」
「ありがとう」
(なっ・・・・!そ、そそそんな笑顔、反則ですわ・・・・っ!)
皿にあったリンゴはあっという間になくなった。どうやらよほどお腹がすいていたらしい。まあさすがにあれだけのことがあったあとにはそれは腹もすくだろう。
「ライさんはたしか記憶がないとおっしゃっていましたわね」
「ああ。だが不思議なもので日常生活に不自由ない程度のことは覚えているんだ」
束さんによるものがほとんどだと思うがなんとも都合のいい記憶喪失だな。
「その・・・・記憶がないというのは、どんな感覚なんでしょうか?」
「・・・・一言でいうなら、無色だ」
「無色?」
「どんなに綺麗な景色を見ても。どんなにいい映画を見たとしても、その全てが色あせて見えるんだ。まるで世界が色を持たないように」
別に色覚異常がるわけではない。色はちゃんと判別できるし、今セシリアの髪だって綺麗な金髪をしているのがわかる。
無色に見えるのは僕に記憶がないから。自分という存在がごっそり抜けおちていてこの世界にその存在を見出すことができないため。ISに乗っていても、これは思い出すということはなさそうだ。
「・・・・なら、私にあなたの記憶探しを手伝わせていただけませんか?」
「いいのか?」
「はい。ここまで聞いたら、引きさがれませんもの」
たのもしいまでの笑顔。その笑顔が、今がまぶしく見えた。
「・・・・ありがとう。セシリア」
彼女の笑顔に僕も笑顔で返した。
◇
「お疲れさまですライ君」
その日の夜。自室――――といっても山田先生と同室なのだが――――にもどった僕はクラブの調整をPCでしながら彼女の帰りを待っていた。
「先生こそお疲れさまです。ココア、飲みますか?」
「いただきます」と返答を聞いてキッチンの棚からカップを二つ取り出して粉末を入れてからお湯を注ぐ。甘い香りが部屋中に広がりその日の疲れを癒してくれる。
「はぁ~・・・・癒されますねぇ~・・・・」
リラックスしている彼女の様子を言葉で表せと言われたらはにゃ~んという言葉が似合うだろう。その様子がおかしくて思わず吹き出してしまった。
「すみません、その・・・・なんだかかわいかったもので」
「か、かわ・・・・!?おおお、大人をからかっちゃきけましぇんよ!?」
噛んだ。そしてまたすこし笑う。山田先生赤面。
「んんッ!わ、私は先にシャワーをつかわせてもらいます!」
「わかりました。では、終わったら連絡してください。屋上にいるので」
「え、どうしてですか?」
「・・・・さすがにタオル一枚でしかもお風呂あがりの山田先生の姿を何度も見るわけにはいきませんので」
今度は二人して赤面。「それでは」と部屋をでて屋上へと向かった
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