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荒野のメガロポリス

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第二章


第二章

 そしてだ。周りはだ。道の他には何もなかった。
 赤い大地が広がっている。何処までも何処までも。それを見てだ。
 僕達はだ。何か途方もない場所に来た気がしてだ。それぞれ言うのだった。
「ここってな」
「何なんだろうな」
「メガロポリスの外ってな」
「こんな荒野だったんだな」
「意外だったな」
 正直なところ何があるかなんて考えちゃいなかった。ただ漠然と外に出たかっただけだ。しかし外に出てみるとだ。そこにあったものは赤い荒野だった。
 上を見上げると青い空が広がっている。これも何処までもだ。白い雲も見える。
 そして黒い道がある。他には何もない。
 その何もない荒野がだ。メガロポリスの外だったのだ。
 仲間の一人が言った。
「ここって人住めないよな」
「家、一軒もないぜ」
「ドライブインすらな」
 仲間達が彼に言い返す。本当にその通りだ。
「本当に見渡す限りな」
「荒野だな」
「何もないな」
 そしてだった。僕達の街も見た。するとだ。
 自然にこう思えてきたのだった。僕が言った。
「何かね」
「何か?」
「何かあるのか?」
「うん、メガロポリスも」
 そのメガロポリスについてだ。こう思った。
「あれだね。中にいたら物凄く大きく思えるけれど」
「実際に大きいじゃないか」
「なあ」
「中には何でもあるしな」
「人も多い」
「迷路みたいだしな」
 道も入り組んでいる。それも今じゃ地下だってそうだ。メガロポリスは縦も横も迷路みたいになってる。そしてその何処にも人が蟻みたいにいる。
 けれどそれでも。こうして見ると。実にだった。
「小さいね」
「小さいか」
「そうか」
「そう思うんだな」
「荒野の中に浮かんでるみたいだよ」
 街を一歩出れば荒野が広がっている。その中に浮かんでいるようだった。
 子供の頃大草原の小さな家って本を読んだ。それも思い出した。本当にそんな感じで荒野の中にぽつりとある。ここから見るメガロポリスはそんな感じだった。
 それでだ。僕はまた皆に言った。
「ねえ」
「ああ」
「今度は何だ?」
「僕達の世界って。こんなのかも知れないね」
 メガロポリスのその白い高層ビルの柱達を見ながら言った。
「こうしてさ。広いようで狭くてさ」
「そしてか」
「それでなんだな」
「うん、その狭い世界の中で暮らしてる」
 僕は皆に話し続ける。
「そうして生きてるんだね」
「ちっぽけなもんなんだな」
「俺達って」
「そうだよな」
「メガロポリスもね」
 その僕達がいるメガロポリスも。そうだと思った。
「ちっぽけなものだよ。小島みたいなものだよ」
「けれどその小島の中でな」
「俺達は生きてるんだよな」
「そうだよな」
「そうなるよな」
「そうだね。何か面白いね」
 急にだ。こう思えてだ。僕は微笑みながら話した。
「そう考えるとね」
「ったくな、でかいって思ってたんだけれどな」
「こうしてここから見るとな」
「小さいよな、本当に」
 白いメガロポリスは赤い荒野と青い空に挟まれてそこに浮かんでいる。黒い道が一条出ていて。その浮かんでいる街は本当に小さかった。僕達の住んでいる世界はそんなものだった。
 それを見てから。僕はまた皆に告げた。
「じゃあ今からね」
「帰るんだな」
「そうするか」
「うん、そうしよう」
 こう皆に告げた。
「街に帰ってそれでね」
「何する?」
「まだ時間あるし何処かに行くか?」
「ビリヤードでもするか?」
「いいね」
 仲間の一人のビリヤードという言葉に反応してみせた。
「じゃあ今日はそれやろうか」
「よし、今日は負けないからな」
「俺だってな」
「俺の上達した腕見せてやるぜ」
 僕達は車に乗り込んでそうして街に戻った。中に入るとメガロポリスは大きく見える。けれどそれはやっぱり浮かんでいるだけのものだとわかった。広い荒野の世界の中で。


荒野のメガロポリス   完


               2010・11・6
 
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