神器持ちの魔法使い
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フェニックス
第15話
爆音が鳴り響く。
同時にライザーの戦車である雪蘭が撃破を知らせるアナウンスが流れる。
「悪魔初心者である一誠がミラ達を追いやったことを凄いと褒めるべきなのか、最低な技を編み出し実行したことに軽蔑するべきか……」
会長と副会長を見る……ドン引きしながらノーコメント。
レイヴェルを見る……会長たちと同じく。
映像に映る小猫も同様の雰囲気を出しているように見える。
まあ、シメるのは確定なんだけどな。
「それはともかく」
体育館での戦闘を切っ掛けに戦場が動き始めた。
小猫と一誠が体育館を脱出すると準備をしていたであろう姫島さんが巨大な雷で体育館を破壊したかと思うとその隙を狙ってユーベルーナが奇襲。
運よくギリギリで気付いた小猫が一誠を突き飛ばして撃破は免れたけど負傷した。
「こっちの方は……木場はうまく立ち回っているようだ」
別の映像を見るとそこにはグレモリー眷属『騎士』の木場がライザーの『兵士』三人を相手にしている。
シュリヤー、マリオン、ビュレントの連携を『騎士』のスピードと魔剣創造で対応しながら。
とはいえ、決定打が未だ極まっていない。
ここまではグレモリー眷属が優勢。
勢いそのままにライザー眷属の戦力を削いでいくようだけどおそらくここまでだろう。
グレモリー眷属のツートップである女王と騎士を封じられ、まともに動けているのは戦車の小猫と宝の持ち腐れな未昇格の一誠。
王自信が動く、という選択肢もなくはないがグレモリーさんが行って何ができると問われれば強いて女王の援護だろうか。
騎士は一応ライザーの兵士三人を撃破できるだろうし、近くには小猫と一誠がいるから最悪は免れるだろう。
女王を救助し、中央に戦力を集めて一点突破……って、これはダメだな、キャスリングでライザーが出てくる。
ならば戦車を避けて短期決戦が望ましいか。
「ま、それができるほどの力があればだけどな」
王としても、個人としても。
「秋人さま?」
グレモリー眷属は負傷しながらも未だ全員健在。
しかし、残っているライザー眷属の大半はプロでも活躍できるほどの実力者。
「はてさて、どこまで善戦するのかね」
「もしかすると、そう思ってた時期もありました。これってどうなの、会長さん」
「……わからなくもないですが、リアス……」
「一応、プロの中でも舌戦っていうのはあるはずなんだけど……安い挑発に耐え切れなくなってキレて単身で特攻かますとかバカなの?」
王が取られたらそこで負けなのにな。
グレモリー眷属はアーシアさんからの通信を聞いて驚愕している。
女王は未だ善戦して……あ、撃破された。
木場と小猫が運動場の敵を引き受けると、一誠をグレモリーさんの許へ向かわせた。
「流石にこれは予想外ですわ。挑発した本人が頭を抱えてるんですもの」
「だな。運がいいのか悪いのか、このゲームが非公式で身内+αにしか公開されなくて」
ただでさえ先日のアーシアさんの件、堕天使の侵入で評価を落としているのに……これは本当に小猫を連れ戻さないといけないな。
「まあ、どんな結果になろうが関係ないか。元々が出来レースだったんだ、これで少しでも一誠たち眷属が成長できれば重畳だな。さてと」
「来ヶ谷君、どちらへ?」
「ちょっとルシファー様んとこに。いろいろ伝えることがあるから」
「あ、私も!」
席を立って生徒会室を出る時、ゲームが終盤に差し掛かろうとしていた。
木場や小猫ちゃんのサポートもあってここまで来れた。
部長たちがいるという校舎の屋上に着くとそこにはボロボロになった部長とそれを治療するアーシアの姿、そしてそれを見下ろすアイツ!
「部長ォォォ! 兵藤一誠、救援に参上しました!」
「一誠!」
「一誠さん!」
「赤龍帝、ようやくたどり着いたか。ユーベルーナ手を出すなよ」
いつの間にか女王がヤローの隣に降り立った。
ヤローの言葉にイラッと来たが俺が叫ぶ前に言葉を続けた。
「お前を信頼していないわけではないが、さすがにミラ達のように衣服を消し飛ばされるお前を見たくない。それに、赤龍帝のあの技はどうせ俺には効かん。なあ、赤龍帝?」
くそっ、俺の洋服崩壊の能力を理解してやがる。
誰が野郎の裸なんて見たくもないし考えたくもない!
「沈黙は肯定と取るぞ。秋人に昔幼馴染が変態で困っていると言いたことがあった上に、この試合を見たらな容易にわかる。あとはハンデだ。リアス、この俺を失望させてくれた礼だ」
「ふざけないで頂戴!」
部長が消滅の魔力を勢いよく放った!
全てを消し去る部長の必殺技が迫っていくというのにヤローは溜息を吐きながら腕を横に薙ぎ払った。
「うそ、でしょ……ッ」
「それが全力か?生ぬるいな。才能頼りのそんなもの、俺には効かん」
自慢の炎を使うわけでもなくただ腕を振っただけで部長の攻撃を打ち消したのかよ!?
「ユーベルーナ、リアスと僧侶を閉じ込めておけ」
部長とアーシアが炎の牢に閉じ込められた!?
「テメェ!ブーステッド・ギア!」
エクスプロードの音声とともに身体強化が施される!
ブースト6回分が今の俺にギリギリな倍加。
これ以上は体の方が持たねぇ。
けどな!
「うおおおおおっ!」
それでもやってやる!
「カハッ……ッ」
あれから強くなった。
合宿を経て、ここまで来るのに成長を実感していた。
なのにここまで遠いのか、浮かれすぎてたのか?
「どうした、赤龍帝。お前の意地も覚悟もこの程度なのか?」
「なん……だと……?」
「ま、それが今の限界だ。たかが10日で劇的に強くなる訳がないとはいえ、少し前まで一般人だったことを考えればマシな方か」
「……限界? そん、なのっ、勝手にテメェがきめるのんじゃねえよ」
口に溜まった治を吐き捨て叫ぶ。
何度も拳を蹴りを炎を受け続けた体に喝を入れる。
正直言ってきついし怖い。
あの時、部室で浴びせられた感覚がずっと続いている。
それでも、勝たなきゃいけないんだ。
「俺は、まだ立っている。脚だって動く。拳だって握れる。俺は、俺はッ」
「ほぉ……」
ヤローが唇を釣り上げる。
その眼に見下したような様子はなく、ただただ俺を称賛するようなそんな眼を向けてきた。
「……でも、本当に覚悟が足りなかったのかもしれねぇ。―――ドライグ!」
『―――本当にいいんだな?』
「ああ、部長を守ることができるのなら、こいつを―――ライザーを倒せることができるのならなんだってしてやるッ!」
『良く咆えた相棒! いいだろう、存分に俺の力を使いこなしてみろ!!』
「応ッ! 行くぞライザァァァアアアアアアアア!!」
『Welsh Dragon over booster!!!』
籠手の宝玉から赤い光が漏れだし、一帯を覆った。
真紅のオーラがまとわり、ドライグの力が体中に駆け巡っていく!
「赤い鎧・・・・・・まさか禁手、ではないのか。一時的に引き出したのか」
余裕の顔をぶん殴るために左拳を握り、さっきまでとは比じゃないスピードで一気に距離を詰める。
「速くなったがこの程度!」
炎が迫って来るけど関係ねぇえ!
鎧のお陰でいままで程の熱も痛みもない。
そのまま炎を突き抜けた。
「ぐッ」
「ついでにコイツもくれてやらぁ!」
左拳の中にあったソレを握りつぶしてそのまま押し付ける。
『Transfer!!!』
ソレに『赤龍帝の贈物《ブーステッド・ギフト》』で一気に効力を倍加させる。
「ガアアアアッ! まさか、聖水、か!?」
「ああそうだ! 試合の前日にアージアにもらった聖水に倍化をかけた。悪魔にはかなり効くだろうな!」
「だがッ、貴様も悪魔だ、タダで済むわけが……まさかその腕は!?」
「テメェを倒し、部長を守るためなら腕の一本ぐらいくれてやらぁ!」
左腕は対価にくれてやった。
ゲーム前に渋っていたがここで、それも敵のライザーの言葉で決意が付いた。
聖水を浴びても竜の腕だからなんてことはねえ!
絶対に負けたくねえ!!
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