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万華鏡

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第七十六話 節分ライブその七

「適度なカロリーでしかも食べて元気が出る」
「そうそう、牛丼ってね」
「そこがいいのよね」
 このことについては琴乃と彩夏だけではない、景子と美優も牛丼を食べながらそのうえで二人の言葉に頷いていた。
 その二人も見つつだ、琴乃と彩夏は里香に言うのだった。
「力が出て」
「明日にも備えられてね」
「だからいいのよね」
「牛丼っていうのは」
「高校に入るまでね」
 ここでだ、こうも言った里香だった。
「私吉野家には行っても」
「行っても?」
「っていうと?」
「学校帰りとかには行かなかったのよ」
 そうだったというのだ、かつての里香は。
「そもそも部活していなかったから」
「中学校だと買い食いにも五月蝿かったりするしね」
「どうしてもね」
「そのこともあって。塾の行き帰りでもね」
 そうした時もだったというのだ。
「特にね」
「行かなかったのね」
「吉野家には」
「そうだったの、けれどね」
 今はというのだ。
「こうして普通に食べているけれど」
「いいわよね」
「部活帰りの醍醐味の一つよね」
「そう思うわ」
 まさに、という口調での言葉だった。
「これもね」
「さて、これ食って」
 美優も当然牛丼を食べている、そのうえでの言葉だった。
「節分ライブ頑張るか」
「それで節分は節分でね」
「お豆ね」
「それも食べようね」
「あの日は」
「そうしような、楽しみだよ」
 美優は今は節分の豆を食べることも楽しみにしていた。もう年齢の分だけとかいう考えはなくなっていた。
 そしてだった、そうした話をしてだった。五人はこの日の牛丼も楽しんだのだった。
 そのうえでだ、遂にだった。
 節分の日になった、授業が終わるとすぐに校内放送がかかった。
「女子軽音楽部は全員神社に集合して下さい」
「琴乃ちゃん、放送よ」
「ええ、わかってるわ」
 琴乃は丁度クラスを出ようとしていたところだ、そこでクラスメイトに声をかけられてそれに応えてこう返したのだ。
「今から行くから」
「それじゃあね」
「さて、いよいよね」
 笑みを浮かべて言う琴乃だった。
「ライブね」
「この時が来たって感じね」
「この時の為に練習してきたしね」
 笑顔でだ、琴乃は言ってくれたクラスメイトに言葉を返した。
「だからね」
「期待していいかしら」
「いや、それはね」
 期待という言葉にはだった、琴乃は苦笑いになってクラスメイトに言った。
「ちょっとね」
「困るの?」
「期待されたら若しも失敗した時がね」
「あっ、確かにね」
「そうでしょ、だからね」
 それでだというのだ。
「期待されると困るわ」
「じゃあ期待しないとか?」
「普通に聴いてくれたらね」
「それでいいのね」
「そう、そうしてくれたらね」
「わかったわ、じゃあ普通に聴きに行くから」
「そうしてね」
 これが琴乃がクラスメイトに頼むことだった。とはいっても期待ではないところは彼女も同じだと言うべきだろうか。 
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