普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ゼロの使い魔】編
007 選択肢を間違えた……
SIDE 平賀 才人
「来たか…っ」
ハルケギニアと地球を時間を跨いで往き来する日々。ある日地球の我が家で寝転がっていると、目の前に銀色の鏡の様な物が現れた。
「“ディティクト・マジック”──“サモン・サーヴァント”によるものだと…? 一応ハルケギニアに繋がっているみたいだが…」
一応ながら“ディティクト・マジック”を掛けてみれば、その〝鏡〟は“サモン・サーヴァント”によるものだと判明して、ならびにハルケギニアに繋がっている事も判明する。
……しかし、どこに繋がっているかは不明なので…
「ドライグ、がどこに召喚されるか判ったもんじゃない。〝外套〟を纏うぞ」
<応!>
「ぼちぼちと往くか。……〝禁手化(バランス・ブレイク)〟!」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!』
俺はドライグに作り足してもらった新しい〝禁手(バランス・ブレイカー)〟──“赤龍帝の道化の外套(ブーステッド・ギア・クラウンコート)”を纏い、鏡の中に入る。
……ちなみに、“別魅”で地球側にも分身を作っておく事も忘れていない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(これは一体……)
召喚された先はなぜだか土煙が舞っていた。……とりあえず、色々と警戒して周辺に“絶霧(ディメンション・ロスト)”の〝霧〟を撒いておき、杖に手を掛ける。
……煙が晴れる。すると、目の前に居た綺麗なピンクブロンドの長い髪を持つ少女がポツリ、と呟く。
「人…間…?」
(……〝外套〟のフードは被ってないはずなんだけどな。人間以外に何に見えるんだ? ……まぁ、“ドラゴラム”でなドラゴンに成ることは出来るが)
俺は頭の中でどうでも良いことを考えていると、ピンクブロンドの少女と頭の生え際が危うい男性が何かやり取りしているのが聞こえる。
「コルベール先生! 人間を使い魔にするなんて、前代未聞です! やり直しの許可を!」
「ミス・ヴァリエール。使い魔召喚の儀は神聖な儀式です。よって、やり直しは認められません」
(えー、勝手に召喚しといてそれは無いだろうに)
内心呆れて居るとピンクブロンドな少女がつかつかと歩いて来る。
「貴方、見たところメイジのようだけど公爵家の令嬢とキスが出来るんだから光栄に思いなさいよね! ……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ──きゃっ、何よこの霧!?」
ルイズと名乗ったピンクブロンドの少女は、俺に“コントラクト・サーヴァント”を行おうとしたが、“絶霧(ディメンション・ロスト)”によって生み出された〝霧〟に阻まれる。
「この霧、あんたが出してるの?」
「そうだ──て言ったら、どうかするのか?」
「今から“コントラクト・サーヴァント”をするから消しなさい──って言うわ」
俺はルイズとそらで会話をしながらもマルチタスクの要領で頭での思考を平行させる。
(……うーん、どうしたモンか?)
――「≪ゼロのルイズ≫が人間を召喚したぞ!」
――「いくら魔法が成功しないからって、お金を積んでまで人を呼んでくるとはな!」
(カットカット)
「“サイレント”」
周りのガヤが五月蝿かったので、腰元にマウントしている杖を周りに見えない様に手を掛けて“サイレント”の魔法でルイズと付き添いの教師っぽい男以外の音を遮断する。
「まぁ、その辺の話は追々するか。……そろそろ〝外套〟も解除しようか」
使い魔になるメリットが少ない気がするので後回しにし、周りを〝見聞色〟で探った結果、不意討ち等の危険性は少ないと判断して〝外套〟を解除する。
「これは“サイレント”ね? ……貴方、やっぱりメイジだったの?」
「……俺は〝望まれて〟生まれてきた訳では無いらしくてな」
勿論のことながら嘘八百、口から出任せも良いところである。〝設定〟としては、俺の母親は貴族に襲われてデキて、その母親も既に亡くなっている。……と云う事になっている。
……それくらい黒髪は目立つのだ。
「……それは悪い事を聞いたわね。……それよりも、“コントラクト・サーヴァント”を執り行うからこの霧を消しなさい!」
「判った判った。判ったからそんなに金切り声で叫ばないでくれ。……そこの先生と呼ばれていた方、少し訊ねたい事があります」
「私ですかな? いきなりの召喚にさぞや驚かされている事でしょう。私に答えらる事なら聞いて下され」
俺はコルベールと呼ばれていた男性に一旦この場を治めてもらおうと、そしてこの場所がどこか訊こうとして声を掛ける。
「まず、この場所はどこですか?」
「ここはトリステイン王国に在るトリステイン魔法学院です」
(学院、か…)
「貴方がこの学院の最高責任者ですか?」
「いえ、この学院の院長はオールド・オスマンと云う方です」
「このままの状態での“コントラクト・サーヴァント”は問題がありましょう。……なので、そのオールド・オスマンと云う方のところへ案内してもらえますか?」
「……一理ありますな。判りました、案内致しましょう」
「あっ! ちょっと! 私も行きます!」
俺とコルベール先生は、俺の召喚主であるルイズを伴って学院長が居る部屋へと案内してもらった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……つまり、君──サイト・ヒラガ君はトリスタニアにある薬屋に居たと言いたいのじゃな?」
「はい。その通りです」
目の前に居るのは、白くて長い髭を指で遊ばせている老人。俺の第六感が、この目の前の老人──オールド・オスマンはかなり〝できる〟傑物だと言っている。
「……で、これから俺はどうすればいいでしょうか?」
オールド・オスマンはむぅ、と唸るとおもむろに口を開いた。
「一番カドが立たないのはこのまま、ミス・ヴァリエールの使い魔に成ることじゃろう」
「うーん、使い魔かぁ……」
「何よ、アンタ私の使い魔になるのがそんなに嫌なの!?」
「いや、ルイズ嬢みたいな美少女と“コントラクト・サーヴァント”としての理解有りきとは云え、キスが出来るんだ。男児たる者なら誰でも嬉しいだろう」
「ふぇっ? 美少女……? 誰が?」
「この場に美少女に該当するのは君しか居ないさ」
「~~~っ!?」
(おいおい、何でそんなに赤面するんだ? これくらいのリップサービス、公爵家三女なら嫌と言うほど聞いてるだろうに。……選択肢ミスったか?)
バレッタさんならこれくらい素で流してくれるが、ルイズには早かった様でルイズは顔を茹でダコの様に真っ赤に染めている。
……ルイズが美少女であるのは純然たる事実だが。
SIDE END
SIDE ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
「いや、ルイズ嬢みたいな美少女と“コントラクト・サーヴァント”、理解有りきとは云え、キスが出来るんだ。男児たる者なら誰でも嬉しいだろう」
「ふぇっ? 美少女……? 誰が?」
私が召喚した1つ、2つほど年上の少年、サイト・ヒラガ──サイトの言葉に私はついつい聞き返してしまった。
「この場に〝美少女〟に該当するのは君しか居ないさ」
「~~~っ!?」
ダメだ、顔を赤くするのを抑えられない。顔が熱くなり、体温が上昇するのが判る。
勿論、パーティー等で今のサイトの様な甘いセリフなら聞いた事はごまんとある。でも、それは私が〝ヴァリエール〟だからだ。サイトはメイジのようだけれど貴族社会との関わりは薄そうだ。……つまり、さっきの言葉は全部──とまではいかなくても、本音も混じってるのだろう。
「ふん! 私が美少女なんて判りきってる事なんだから!」
つい、いつも通りキツ目の──エレオノール姉さまみたいな態度で反応しちゃうけど、サイトは許してくれるだろうか?
SIDE END
SIDE 平賀 才人
「あの~、イチャイチャするのは別に構いはせんが、サイト君にはこれからどうするのか決めて欲しいんじゃが」
「べっ! 別にイチャイチャなんてしてません!」
「……他にどんな選択肢があるんですか?」
オールド・オスマンにおちょくられたルイズはとりあえず置いといて、オールド・オスマンに話を進める様に促す。……ルイズの恨みがましい視線はスルーする。
「他には“コントラクト・サーヴァント”をせずにミス・ヴァリエールの仮の使い魔になるなどがあるがのぅ。……どっちにするかはサイト君次第じゃ」
「サイトぉ……」
(何この娘、滅茶苦茶可愛いじゃねーか。……それに、何故かいつの間にか呼び捨てになってるし)
目を潤ませながらのルイズのすがる様な上目遣い。……多分だが、俺がこのままこの学院から去ると云う選択肢をオールド・オスマンが提示しないのは、俺が居なくなったらルイズの立場が何かと拙い事になるのだろう。……それか、可能性は低いだろうが──
(俺が断らないのを見越して? だとしたら──)
「俺は──」
ルイズの上目遣いに軽くドギマギしながらも俺は口を開く。
オールド・オスマンが使い魔にならないと云う選択肢を提示しなかったのは、俺が断らないのを見越してのことだったらかなりの生徒思いの老人だし、妥協案も提案する辺り俺への気遣いも垣間見える。それに人を見る目も確かだろう。何故なら──
「仮の使い魔としてなら引き受けましょう」
「サイト…ありがとっ!」
何故なら、召喚された時に見た──何かに押し潰されそうなルイズの表情を見た瞬間から、俺には断る気など露ほども無かったのだから。
SIDE END
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