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最終回

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第三章


第三章

 少し中年の背の高い男がだ。眼鏡の男に対して話していた。山の中であり緑の木々が周りにある。斜面は中々急な険しい山である。
 そこの木の一本に背をもたれさせかけてだ。彼は話していた。
「前半はよかったよ」
「前半は、ですか」
「ああ、前半はな」
 そこはだというのだ。
「よかったよ。けれどね」
「後半は、ですか」
「何かねえ」
 彼はここでだ。首を捻るのだった。
「不完全燃焼っていうかね」
「駄目でしたか」
「何か違うだろ。前半のプロデューサーさんはさ」
「役者さんの意見聞いてくれましたよね」
「よくね」
 そのことには満足しているというのだ。
「聞いてくれるどころかね」
「意見も作品に反映してくれて」
「会議にも参加させてくれたし」
 そこまでしたというのだ。
「凄くよかったよ」
「作品を丁寧に作っていましたよね」
「お金と時間をかけてね」
 彼のマネージャーへの言葉はここでは満足したものだった。
「よかったよ。けれどね」
「プロデューサーさんが交代してからは」
「予算も時間もかなり圧縮されて」
 口を尖らせて言う。
「しかも会議とか呼ばないしね」
「そうですよね」
「おまけに作風が全然変わって」
 不平は続く。
「何か別の作品に出ていたみたいだよ」
「そこまで、ですか」
「そこまでだよ。何か釈然としないね」
 彼はまた言った。
「最終回の脚本だってね」
「あれもですか」
「あれはないんじゃないかな」
 彼は脚本についても不平を述べた。
「どう思う?」
「どうと言われましても」
「だから違うんだよ。あの作品は前半でいくべきだった」
 これが彼の意見だ。
「本当にね」
「まあそれでももうすぐ終わりですね」
 マネージャーは不平が尽きない彼をさりげなく宥めた。
「打ち上げは楽しくやりましょうよ」
「二人だけでこっそりといきたいね」
 彼は明らかに不平を抱えていた。そうした中で最終回を迎えようとしていた。そしてネットにおいては。ファン達が延々と罵り合いを続けていた。
「だから仕方ないだろ」
「仕方ないっていうのかよ」
「予算と時間には限りがあるんだよ」
 このことが言われるのだった。
「だから仕方ないだろ」
「それにあれで一年で終わったのか?」
 こんな意見も出た。
「三年か五年はかかっただろ」
「あのシリーズは一年だしな」
 このことも話される。
「一年で終わらないと駄目なんだぞ」
「それであれだけ進まなくてどうするつもりだったんだ」
「だからあれでよかったんだよ」
 こうした意見が出される。しかしであった。
 もう一方はだ。あくまでこう主張するのだった。
「それでもあのままいけばよかったんだよ」
「絶対にそうするべきだったんだ」
「名作になれたんだぞ」
 これが一方の意見だ。しかもであった。
 彼等はさらにだ。こうまで主張した。
「あのプロデューサーと脚本家は許さないからな」
「殺してやる」
 過激どころではない言葉だ。
「というか死ね」
「地獄に落ちろ」
 無茶苦茶な状況になっていた。一方は完全に暴論だった。
 
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