大阪の魅力
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5部分:第五章
第五章
「そこまではな」
「まあ真田丸二十周年記念やで」
ここで店の名前が出た。
「ようさん食べてや」
「真田丸か」
「それがこの店の名前やけれどな」
「いい名前だな」
彼はその名前を聞いて思わず言った。
「その名前は」
「ええ名前やろ」
「ああ、本当にな」
話を聞いて微笑む。長野人の彼には実にいい名前であった。
「それじゃあこの一枚とな」
「あいよ」
「それとビール貰えるか」
「ビールやねんな」
「それをくれ」
こう店の兄ちゃんに話す。
「何か機嫌がよくなってきたよ」
「ええでええで、じゃあ楽しんでや」
「ああ、そうさせてもらう」
また言う猛久だった。そうしてである。
店でお好み焼きを食べてビールを飲んでいるとだ。店の客達が賑やかになった。さらに賑やかになったがここで、であった。
「おう、やったで!」
「兄貴復活や!」
「打った打った!」
「よおやった!」
「野球か」
「ああ、そや!」
近くにいた客の一人がすぐに彼の言葉に応えてきた。
「阪神勝ったで!」
「巨人に勝ったで!」
「兄貴のサヨナラホームランでや」
「そうか、巨人が負けたか」
客達がこう笑顔で話すのだった。猛久もそれを聞いていた。
「それはいいな」
「おっ、あんたもかいな」
「虎キチやな」
「そやったんやな」
「いや、俺は」
彼はそのお好み焼きを食べながら彼等に話す。
「ベイスターズなんだけれどな」
「何や、横浜か」
「星かいな」
彼等はそれを聞いてまずは拍子抜けしたように返してきた。
「そりゃまた珍しいな」
「大阪でな」
「まあええけれどな」
しかしすぐにこう言うのであった。
「巨人やないしな」
「横浜はええわ」
「そやそや」
「試合の時はよろしゅうな」
「横浜はいいんだよな」
猛久も大阪のこの考えがわかってきていた。
「巨人でないとか」
「巨人はあかん」
「あんなとこ応援したらあかん」
「絶対にあかん」
誰もが巨人には駄目出しであった。
「あそこ以外やったらええから」
「そや、今日横浜負けたけれどな」
「気を落とさんことや」
優しい声までかけてきてくれた。
「さあ、これでも飲んでや」
「明日があるからな」
「あんじょうな」
「ああ、悪いな」
ビールをもう一本受け取ってだ。猛久は礼を述べた。
「それじゃあな」
「ぐっといきや、ぐっと」
「横浜かて何時か日の目見るで」
「だからそれを待つんや」
「そうなって欲しいな」
彼は苦笑いと共に話した。
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