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大阪の魅力

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2部分:第二章


第二章

「普通喜ぶぞ」
「こんな暑い街なのにか?」
 猛久は今度はうんざりとした顔になった。
「おまけに凄い湿気じゃないか。人も多いし騒がしいしな」
「寒くて静かな大阪があるか」
 相手の返答はこんなものだった。
「大阪はいつも暑くて騒がしいんだよ」
「冬でもか」
「冬でも雪は滅多に降らないぞ」
「長野じゃ道が凍るのが普通だぞ」
「大阪でそれは絶対にない」
 断定そのものの言葉だった。
「それで食い物はな」
「蕎麦は?」
「あることはあるがメインはうどんだ」
 こう来た。
「それとデザートはな」
「林檎だよな」
「あることはあるがデザートはアイスキャンデーか」
「北極のか」
「蓬莱に自由軒に金龍ラーメンにづぼら屋にかに道楽。あの食い倒れ親父も生き残っているぞ」
 語るその言葉は誇らしげである。そんな話をしながらある場所に向かっていた。その先には。
「そら、あれも見えるな」
「あれか」
 二人の目の前にあるのは塔だった。それこそは。
「通天閣だよ。いいもんだろ」
「大阪か」
「それと大阪城、大阪のシンボルだよ」
「大阪城か」
「長野人は大阪城好きだろ」
「まあな」
 猛久はその言葉には素直に頷いた。
「それはな」
「真田幸村だからな」
「戦国最高の武将だからな」
「ああ、それに異論はないぞ」
 相手もそれは認めた。納得した顔で頷いてみせる。
「もうすぐで狸親父の首を取れたのにな」
「徳川家康か」
「あの名古屋弁の爺の首を取れればな」
「面白かっただろうな」
「ああ。広島人として悔しい限りじゃけえ」
 何気に方言が出ていた。
「全くじゃ」
「ってあんた広島人だったのか」
「ああ、時々方言が出るんだ」
 その方言は今は消えていた。
「気にしないでくれ」
「じゃあそうするけれどな」
「ああ。とにかくまずは串カツ食うぞ」
 通天閣を前にしての言葉だ。
「いいな」
「串カツか。はじめて食うな」
「安くて美味い。キャベツは食い放題だ」
 その広島人は笑って話す。
「ただしソースは二度漬け禁止だからな」
「それは駄目なのか」
「わかったら食うぞ。いいな」
「ああ、わかった」
「腹一杯食おうな」
 こんな話をしながら猛久は大阪に入ったのだった。彼は最初この街が嫌だった。それは一ヶ月経っても変わらなかった。
 夜だ。難波をその広島人の同僚と一緒に歩いている。繁華街の中だ。そこの居酒屋で飲みながら話すのだった。
「なあ」
「何だ?」
 カウンターで飲んでいる。飲んでいるのは日本酒だった。彼はそれを飲みながら相手に話す。
「この酒な」
「大阪の酒だけれどどうした?」
「酒の味が濃くないか?」
 こう言うのである。
「それにつまみの味もな。濃いな」
「御前長野じゃ何と一緒に飲んでるんだ?」
「決まってるだろ。そばだよ」
 ここでもそばが話に出る。
 
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