美しき異形達
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第十話 風の令嬢その四
「わからないですね」
「そうだよな」
「何故でしょうか」
「それと怪人のこともな」
「あの烏の人ですね」
「あたし達あいつ等のことを怪人って呼んでるんだけれどな」
「怪人、ですか」
怪人という呼び名を聞いてだ、桜は納得した顔で言った。
「そういえばそうですね」
「そうだろ、そのままだろ」
「あの人達はまさに怪人ですね」
「何で他の生きものと合いの子か、それで何であたし達を襲うのか」
「一切がわかりませんから」
「まあ緑な理由じゃないだろうけれどな」
それでもだというのだ。
「何もかもがわからないからな」
「本当に謎ですね」
「謎しかないからな」
それでだというのだ。
「あいつ等は怪人だよ」
「まさにそうですね」
「じゃあちょっとお互いのことを話すか」
「はい、お友達として」
桜はまた薊の言葉に応えた、そしてだった。
裕香も入れて五人で親しくお互いのことを話した、その結果薊は桜に対してこう言ったのだった。
「そうか、桜ちゃんの親御さんっていい人達だな」
「私を養子ではなくです」
「実の子として育ててくれてるんだな」
「最初の子供だからと」
「跡継ぎにも決めてくれてか」
「最初からです。そして妹達も」
彼女達もだというのだ。
「私を実の姉として慕ってくれています」
「いい家庭なんだな」
「ただ」
「ただ?」
「いつもお婿さんは選べと言われています」
このことは少し苦笑いになって話す桜だった。
「いい人を」
「結婚相手はか」
「はい、選べと」
そう言われているというのだ。
「言われています」
「そうか、将来の旦那さんなあ」
「生涯の伴侶ですしお店を切り盛りしていく方ですから」
それ故にというのだ。
「いい人を選んでくれと」
「そう言われてるんだな」
「いつも」
「やっぱりそれか」
「そうです、そして強くあれと」
「いや、桜ちゃんも強いだろ」
「女として強くなれと」
そうした意味での強さを身に着けろと言われているというのだ。
「その様に」
「ああ、そういうことか」
「はい、そうなのです」
「身体の強さと心の強さって違うからな」
薊は腕を組み考える顔で述べた。観れば薊は座布団の上に胡座をかいて座っている、菖蒲と菊、裕香は女の子座りで桜は正座である。
「そこはな」
「心が強くあれと言われています」
実際にというのだ、親達から。
「ですから私はいつもです」
「心の鍛錬もなのね」
「しているつもりです」
こう菖蒲に答える。
「この店を継いでよき伴侶を迎える為に」
「若し駄目男だったら」
菊はこう言った、そうした相手ならとだ。
「鍛えなおすとかね」
「そうすればいいの?」
「いや、性根が腐った奴は徹底的にその性根を叩きなおす」
菊は裕香の問いに答えた。
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