オズのモジャボロ
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第六幕その一
第六幕 兎の王様
兎の王様は立派なローブと服を着ています、頭には黄金と宝石で飾られた見事な王冠が耳と耳の間にあります。その王様はドロシー達を見てまずは笑顔でこう言いました。
「ようこそ、我が王宮へ」
「王様、お元気そうね」
「うん、明るく楽しく暮らせているよ」
王様はドロシーの笑顔に同じ笑顔で応えます。
「ドロシー王女のお陰でね」
「それは何よりね」
「うん、それでだけれど」
ここで王様は言うのでした。
「まずは音楽隊の音楽を聴いてくれるかな」
「兎の国のですか」
「音楽隊ですね」
「そうだよ。ああ、君達は」
ここで、です、王様は恵梨香達を見ました。そのうえでドロシーに尋ねました。
「この子達は」
「ええ、私のお友達でね」
「見たところオズの国の住人ではないね、生まれついての」
「私と一緒よ」
「つまりあちらの世界から来たんだね」
「ええ、そうよ」
ドロシーは王様に五人のことを細かくお話しました。そのうえで王様に対してあらためて尋ねたのでした。
「これでわかってくれたかしら」
「成程、そうなのか」
「ええ、オズの国の名誉市民よ」
「それは何よりだ、私もオズの国の市民だよ」
王様はにこりと笑ってこう言いました。
「同じだね」
「そうね、皆ね」
「そうだね。ではまずは音楽を聴こう」
王様は明るく言ってでした、そうして。
皆を音楽隊、兎の軍隊のグラスバンドが控えている大広間に案内しました、もう席もちゃんと用意されています。
そこにそれぞれ座ってでした、見事な音楽を聴くのでした。
カルロスはその素晴らしい音楽を聴いて王様に尋ねました。
「あの、この曲のタイトルは」
「素晴らしくオズというのだよ」
「オズの国の音楽ですか」
「そう、オズの国そのものを讃えた音楽だよ」
それがこの曲のタイトルだというのです。
「いい曲だね」
「はい、確かに」
「最近この曲が気に入っているんだ」
王様はにこりとしてカルロスにお話します。
「他にもかかし殿の歌、木樵殿の歌もあって」
「あの人達のことを音楽にしたのですか」
「勿論ドロシー王女の曲もあるよ」
ドロシーを見ながらの言葉です。
「オズマ姫もモジャボロ殿の曲も」
「皆あるんですね」
「そうだよ、オズの国のどの人の音楽もね」
「そうなんですね」
「音楽は素晴らしいものだよ」
こうも言う王様でした。
「聴いているとそれだけで心が楽しくなるよ」
「あの、確か」
ここで、です、ナターシャが王様に尋ねました。
「王様は以前はかなり塞ぎ込んでおられたんですね」
「うん、そうだよ」
その通りだとです、王様もナターシャに答えます。
「以前の私はね」
「そうでしたよね」
「けれどそれはね」
「それは?」
「過去のことだよ」
今のことではないというのです。
「もうね」
「過去だからですか」
「そう、だからね」
「今の王様はですね」
「明るく暮らしているよ、兎の国の王様としてね」
「もう森に帰りたいとは」
「思わないよ」
全く、という口調での言葉でした。
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