アイドル ハイスクール!
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ホラーとアイドル
あなたは私のアイドルよ…2
「んで…人に見られちゃマズイよーな能力をさぁ…なぁんであんな朝っぱらから使ってんだよ…?
てゆーか…なぁんで俺は……
拘束されてるんだよ!!」
経緯を説明しよう…それは数十分前に遡る……
目の前で牛の怪物を消し炭にしてのけたスケボー女子…名前を
水面 陰媛(ミナモ カゲヒメ)
彼女は、南啼が現場に遭遇していたと知るや否や
南啼を拘束
偶然か知っての行動か……南啼の通う高校、私立天明高校(てんめいこうこう)の旧校舎に入った
そして、わけのわからない南啼に対して怪物の事と自分の事を話しだした…
「まず自己紹介よ。私は水面 陰媛。
あなたがさっき見た怪物を倒すのが私の使命なの」
「そんな突飛な事を信じろってのか?」
「信じるも信じないも自由だけど…目の当たりにしながら信じないってのもどうかと思うわよ?」
それ言われると……
「私のようにあの怪物を倒す人間を《オーディエンス》、そしてあの怪物の事を…《ホラー》と言うわ」
「オーディエンス…って、観客?」
「直訳するとそうかもね。理由はあるわ。ホラーを生み出すのは人間の不安…そしてホラーを生み出す人間を《ファン》と言う!」
「………。」
「……あれ?」
「…なにが、あれ?だ」
やたらドヤ顔で言うから何かと思えば…
「え?もしかしてわかってないの!!!」
「何が…?」
「いや、だから!!
ホラーのを生み出す”不安”と”ファン”をかけてるのよ!!」
「……あ、そうゆうこと」
すこぶる……どうでもよかった。
「ちょぉっと!!ここ笑うとこよぉぉ!?」
「…ホラーだかなんだか知らないけど…俺にはそんなことで笑ってる程、脳内に余裕はないんだけど…」
なんでそんなわけの分からないところで、笑いを狙ってくるんだよ…
「はぁ……その不安がファンにホラーを生みださせるかを見守り、対処する…
だからオーディエンス!」
「はいはい、わかりましたよ…」
「ったく…仕方ないわね…
話の続きだけど…ファンには二つのパターンがあるわ。
一つが、不安に呑まれ自らがホラーになる者。それが《B級ホラー》
もう一つが、他者に不安を煽られホラーを創り出す者。そのパターンで生まれたホラーは生みの親であるファンとは無関係に行動を始める。
B級ホラーよりも知能が高く、言葉を話す。私たちは《A級ホラー》と区別している。
そしてA級ホラーのファンは、その体から何体もホラーを生み出せるの。
ま、限界までホラーを生んだら、最後はB級になっちゃうけどね。
ここまでは分かった?」
「えっと…怪物ってのがホラーで、それを生むのがファン。で、ホラーにはA級とB級があって、そのホラーを倒すのがオーディエンス…
ってことでいいのか?」
「そーゆーこと」
……この非日常の状態に、俺の脳はなかなかの柔軟性を見せてくれてるな
陰媛は話を続けた…
「次はオーディエンスの話よ。
オーディエンスには特殊な能力があるわ。
その一つが、さっきあなたも見たでしょ?対ホラー用武装《オトギ》を召喚・使用すること。
さっき私が召喚したのが《桃太郎乃砲筒》よ。B級なら一撃、A級でもそれなりの攻撃力をもつけど、毎回あの威力なのよ…
ま…ほんとは、この能力って人に見られちゃダメなのよねぇ…」
ここで時間は冒頭に戻る……
「んで…人に見られちゃマズイよーな能力をさぁ…なぁんであんな朝っぱらから使ってんだよ…?
てゆーか…なぁんで俺は……
拘束されてるんだよ!!」
「察しなさいよバカ!
私はあなたに能力を見られた!それに能力を使ったのはホラーがいたからよ!!
考えたら分かるでしょまったく…」
「ま…まさか…!」
「はぁ……この能力を見られたからには仕方がないわ……」
俺は……どうなる?
わけのわからないことに巻き込まれて…ホラーだかオーディエンスだか説明されて…
なんてわけのわからない日なんだ…!
俺は何をされるんだ?
一度着いた不安の火種は、みるみる内にその大きさを増す…
俺は…こいつに……
その火が頂点に達した時………
こいつに殺される………!?
「能力を見られたからには………な!?」
なんだか俺の身体が熱い……
「び…B級ホラー!」
南啼の身体がみるみる内に異形の物へと変わっていく…
それはさながら髑髏の鎧…いや、死神と言うほうが相応しいだろうか…
彼は失敗だ……
「まったく…B級ホラーだと話も通じなきゃファンもろとも倒さなきゃいけないから後味悪いのよね…」
陰媛は構えるとオトギを召喚した
「双角の前に平伏せ!斬撃すべし《双刀・鬼ヶ島 藍角(あいかく)と紅角(ぐかく)》!!」
陰媛の両手には得意な形をした刀が握られていた
「あなたも不運ね……斬らせてもらうわ、できるだけ楽にね!!」
陰媛が双刀を振りかぶった
『ま、待て!!!!』
「……え?なん…で?」
B級ホラーは本来、知能は低く言葉はおろかコミュニケーションの伝達方法をもたず、ただ本能のままに破壊活動を行う。
だが…
『そ…その刀を下ろせよ!!』
髑髏を模した死神のような姿となった南啼…通常のB級ホラーならこのまま暴れだすのがオチ……
しかし南啼は違った
「あなた…理性があるの…?」
『し、知らないよ!!!てか、やっぱ俺のこと殺すのかよ!!!』
この男…何をしたの…?
この男自身がホラーになった…ということは間違いなくB級……
なのに……理性がある…?
これまでに何度かホラーへの変化の瞬間には居合わせたことはある…
すぐ暴れださないにしても…言葉を話したB級はいない…!
「あなたは…いったい…」
陰媛は双刀の武装を解除した…
「私が求めていたものとは違うけど……でも、あなたなら…」
『な、なんだよ…!!て…てか俺は今どうなってるんだよ!!』
「落ち着いて。それがホラーよ。…あなたは今、ホラーになっている」
『な…!?俺が…ホラー!!??』
「そうよ、でも落ち着いて…ゆっくり呼吸して」
『いや落ち着けるわけないから!!わけわかんないんだけど!!!』
「いいから言う通りにして!!
今までで一番楽しかった時、リラックスしてた時のことを考えて」
『リラックス?……リラックス』
「そうよ…リラックスして」
『リラックス……』
「落ち着いてきたら、言われたとおりにイメージして」
南啼は静かにうなづいた
「イメージするのよ…
まず、あなたの中にある感情を白と黒にわけて」
南啼は黙ってそれに従った
「そして白の感情を体中に染み込ませるように、黒の感情は手のひらに集めるようにイメージして」
南啼がそれをイメージした途端、南啼の身体は静かに元の人間の姿になった
そして手のひらには光の塊が現れていた
「こ…これって」
「それがあなたの不安よ。……元の姿に戻れたようね」
「え?…おぉ!」
突然、陰媛が土下座した
「え!?なになに!!!!???」
「こんな危険な事をしてごめんなさい!!
本当は、最初からあなたをファンにするつもりだったわ…」
「え!?なんだって!?」
陰媛が頭を上げた
「オーディエンスは能力行使、あるいはホラーとの戦闘の場を見られてはいけない……
見られた場合3つの手段のどれかをしなくてはならないの…
目撃者の記憶を完全に抹消する…これはオーディエンスやホラーだけじゃない、その人の過去もすべて抹消するの。
次に、その人をオーディエンスにする。これが一番手っ取り早いわ。
そして私がしようとしたこと…
その人がファンであった場合、その不安を自らの武器に変える」
「不安を武器に…?」
「そう。
不安とは、云わばホラーとゆう異形の怪物を創り出すエネルギー。そのエネルギーを利用すれば、簡単にオトギが創れる」
「……待てよ、それは目撃者がファンだった時だろ!?
俺はファンじゃなかった!!なのになぜわざわざ…」
「最初に言ったはずよ!A級ホラーはファンが他者に不安を煽られて生まれるって…」
「……!?」
「結構容易いのよ…不安を煽るのって…」
「てめぇ…!!!!」
「でも聞いて!!!!
私たちオーディエンスは、不安の取り出し方を知っている。A級ホラーのファンならまだ救えるのよ!」
「つまり…お前はなにがしたかったんだ!」
陰媛は少しして口を開いた
「不安を集め、強いオトギを作ろうと思っているの。その考えは今も変わらないわ…近頃は、ホラーも力を増してきているから…」
「まだファンを増やして、ホラーを生みだす危険を犯す気かよ!!俺みたいに失敗して、B級になったらどーすんだよその人は!!
俺みたいに殺そうとするのか!?」
「いいえ…もうそんなリスクは背負わないわ」
「……え?」
陰媛は南啼をまっすぐ見つめると、ハッキリと
しかし理解に苦しむことを言った
「アイドルになりなさい!!」
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