ソードアート・オンライン~十一番目のユニークスキル~
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唯一無二の不確定因子
第十二話 白い背中
前書き
えー本当に申し訳ないです。はい。言い訳させてもらいますと、テストとサークルのイベントやらでとても書く暇がなかったのです。二か月も間を開けてしまってすいません。
皆様どうか寛大な目でお許しください・・・・・・
アリスの世界から音が消えた。
直後、爆音と震動と粉塵が炸裂した。
どどどどどどどどどどどどど、という轟音が、部屋にいつまでもいつまでも鳴り響く。
それはアリスに刃を振り下ろそうとしていたPoHに向かって、ある男が放った一撃によって引き起こされたものである。
「ぐっ・・・・・・がはっ・・・・・・」
その一撃を受けたPoHは壁に叩き付けられていた。
攻撃自体はすんでのところで受け止めたものの、その衝突時の余波はその場にとどまることを許さず、そのまま壁まで一気に吹き飛ばした。
それだけの力を先の一撃は秘めていた。先ほどまで彼が立っていた場所にクレーターを作るほどの。
その中心に一つの影が浮かび上がった。最初、粉塵によって輪郭がぼやけていたが、それが晴れるにしたがって鮮明になり、そして人影をとっていく。
晴れた煙、そして顕になった人影は、裾が膝下まである白のコートをなびかせながら、PoHを真っ直ぐ睨み、そして彼とアリスの間に隔たるようにして立っていた。
◆
アリスには最初何が起きたのか判らなかった。
刀がゆっくり私に向け、落ちてくる。
死を覚悟したその時、アリスは一番の親友のアスナでも、小さい頃からの付き合いであるユージオでもなく、何故かリオンのことを思い出した。リオンとこのデスゲームで出会い、過ごしてきた思い出が走馬灯のように駆け巡る。
アリスの目から綺麗な大粒の涙が溢れ上がり、緩やかに頬へ流れた。
リオンは、食いしん坊で、うるさくて、めちゃくちゃバカだ。でも、一度決めたことは絶対に曲げないし、大事な時は頼りになる。なにより、彼といると時間を忘れるくらい楽しかった。
死にたく、なかった。
そこまできて、気づいた。
――――ああ。私はリオンが好きなんだ。
もう一度、リオンと会いたかった。そして、バカみたいなやりとりをしたかった。
だが、それは叶わない。ここで、アリスは死ぬ。ポリゴンのかけらを振りまき、脳をナーブギアで焼かれて死ぬ。
そう思っていた
直後、爆音が炸裂した。
その音にアリスはいつの間にか閉じられていた瞼を開けた。
そして、唇から、かすかな吐息を漏らした。
「ああ・・・・・・」
もう一度。
「ああ」
溢れた涙は、数十秒前のそれとは、まったく意味合いを異にしていた。
そこには、大量に舞い上がる粉塵の中でこちらに白い背を向けて立つ男がいた。
「リオ・・・・・・ン・・・・・・」
また助けてくれた。私を助けるために、来てくれた。
「アリス、悪かったな」
彼はそう言って、ゆっくりと肩越しに振り向くと、まっすぐにアリスを見る。
「遅くなった」
アリスの心がなにか温かいもので包まれていく。同時に喉の奥から堪えきれない嗚咽を漏らしていた。
「遅いです・・・・・・本当に遅いですよ・・・・・・どれだけ恰好をつければ気が済むんですか・・・・・・」
その声は涙で掠れていた。彼女の瞳からは涙があとからあとから溢れ出ている。
「悪かったよ。ま、もうちょっと、かっこつけさせてもらうぜ」
いつもの力強く、ふてぶてしくも、子供のような笑みを、にっと浮かべた。それにつられてアリスも涙を流しながらもクスッと笑う。
「・・・・・・早くしてくださいね」
「まかせとけ」
リオンは左手を少し上げ、サムズアップすると、こちらに向けていた首をもとに戻した。
その時、アリスはあることに気付いた。
「リオン。あなた武器は? まさか・・・・・・」
いつも腰に下げている小太刀がなかった。
ここは圏外である。武器を身に着けないなどありえない。そして、先ほどの現象から導き出されたのはあるスキルだった。
「ああ。さっき『代償』を使ったからな」
その言葉を聞いて、息を飲んだ。
リオンの口から出たのは、アリスが予想していたものと同じスキルだったからだ。
「・・・・・・あのスキルは『なるほどな。だからか』ッ!!」
アリスの言葉は聞き覚えのある声によって遮られた。
そちらに目を向けると、ゆらりと死神のように立ち上がるPoHがいた。
「もう麻痺が解けたか」
その声は先ほどまでとは打って変わり、氷のような冷たさを帯びていた。
「てめぇらが胸糞わりぃラブシーンをやってたおかげでなぁ」
「そうか。で、お祈りはもうすんだか?」
リオンはPoHの挑発も気にせず、ただ淡々と話していた。その態度が気に入らなかったのかPoHは声を荒げた。
「ああ? お前勝てると思ってんのか!? 武器を失った状態で、そこの足手まといも連れながらよぉ!!」
「リオン! 麻痺を解いて下さい! 私も―――『大丈夫』え?」
アリスの声を遮った、リオンの一言はPoHの時とは違い、温かかった。同時に力強く、不思議と安心ができるそんな声だった。
そして再びリオンの唇が動き、静かな声が流れた。
「PoH。どうして俺が『代償』を使ったかわかるか?」
「ハッ、知るかよ」
「理由は二つ。一つは、痛みがないこの世界に唯一ある不快感を与えるため。このスキルは、武器を失う代わりに状態異常とともに、一撃の威力を武器の価値分引き上げる。壁に叩きつけて不快感をお前に与える方法としては手っ取り早いだろ。そして二つ目は簡単だ。俺に武器は必要ない」
最後の言葉とともに風が突然、対峙する二人のあいだを鋭い音を立てて吹き抜けた。
「頼むから死ぬなよ。お前は殺すよりもこのゲームが終わるまで黒鉄宮に叩き込んだ方が薬になりそうだからな」
リオンの瞼が、すうっと閉じられた。これまで無表情を貫いていた口元に、かすかな笑みが滲ませながら。そして、ゆっくりと目を開けると一言、静かに発音した。
「アルキミア・アーマメント」
後書き
十三話目です! いや、ホントにすいません。今回表現の方が難しく手こずったのもあります。
次の話はできるだけ早くだすように頑張りますのでどうかご勘弁をwww(やばいハードルあげちゃった)
とりあえず失踪はしないのでどうかこれからもよろしくお願いします。
誤字・脱字・感想等々お待ちしております!!
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