ジェネレーション=ミュージック
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第一章
第一章
ジェネレーション=ミュージック
室伏軍平は高校では軽音楽部に入っている。そこでいつもギターを弾いている。
それは家でも同じで時間があればギターを手に持っている。家族はそんな彼を見ていつも苦笑いを浮かべている。
「お兄ちゃんもね。そうやってギターばかりやって」
「ギターは友達っていうの?」
「友達?馬鹿を言えよ」
妹の美智代に対して口を尖らせて言い返すのだった。
「ギターは友達じゃねえよ」
「じゃあ何なのよ」
「俺の身体の一部なんだよ」
こう言い返すのであった。
「この俺のな」
「ギターが身体の一部なの」
「そうだよ」
また口を尖らせて言うのだった。
「俺にとっちゃな。身体の一部なんだよ」
「また随分と凝ってるのね」
「まあな。っていうかギターはいいもんだよ」
笑顔で美智代のその細面の白い可愛らしい顔を見てまた言う。
「奏でてるだけで、いや持ってるだけで気持ちが落ち着く」
「殆ど麻薬ね」
「だから身体の一部なんだよ」
今度の言葉はこうだった。
「俺にとっちゃな」
「ふうん。そうなの」
「何かねえ」
ここでその妹の美智代がそのまま歳を取ったような顔のお母さんの真野子が言った。
「そういう言葉ってあれね」
「あれって何だよ」
「お父さんの若い頃の言葉にそっくりね」
こう彼に言ってきたのだった。
「お父さんのね」
「親父に?おいおい」
軍平は今のお母さんの言葉に今度はかなり困った顔になったのだった。
「そんな言葉止めてくれよ。俺は親父とは全然違うじゃねえかよ」
「そっくりじゃない」
「ねえ」
しかし美智代はここでお母さんに声をかけて顔を見合わせて頷き合うのだった。
「青だってね」
「体型だって」
「顔も体型もかよ。まあそれはな」
それは軍平自身も否定できなかった。細い目で精悍な面長の顔である。そして体型はかなり細い。背も高くその体型がかなり目立って見えるのだった。
「確かにそっくりだけれどな」
「特に額」
美智代はさらに言ってきた。
「そこが一番似てるわよ」
「あんた禿げるわよ」
お母さんはもっと容赦がなかった。
「はっきり言って。前から来るわよ」
「前からって。おいお袋」
軍平は今のお母さんの言葉に今までで一番荒れた声を出した。
「俺の髪の毛そんなにやばいのかよ」
「やばいわね」
お母さんの返答は実に冷酷なものであった。
「今だってそうだし」
「そうそう」
「うう、それは」
美智代にもまた言われついつい目線を上にやる。実は自分でもわかっていた。その髪の毛が今の時点で額から結構危なくなってきていることに。髪を上にあげているからそれで余計に額が広く見えてしまっているのだった。彼にとっては悩みの種である。
「まあそうかもな」
「そうかもじゃなくて事実だから」
「お父さんの若い時だってそうだったから」
美智代とお母さんの追い討ちは続く。
「あんたもね。絶対にね」
「禿げるんだって」
「ちっ、あんな頭になるのかよ」
二人に言われてついついその父親の頭を思い浮かべた。
「ぞっとするぜ、ったくよお」
「けれどお兄ちゃん」
「何だよ、今度は」
「さっきのお母さんの言葉だけれど」
「もう禿げるのはわかったからいいだろ?」
「違うわよ。ギターの話」
彼女が今言うのはこのことだった。
「ギターだけれどね」
「あっ!?ああ」
その話を振られたのでそちらに顔を戻した。
「それかよ」
「お父さんもやってたって言ってたじゃない」
「そうよ」
お母さんもここでまたそのことの話題に合わせてきた。
「それだけれどね」
「親父ギターなんてやってたのかよ」
「やってたわよ」
実にあっさりとした返事だった。
「あんたみたいな歳にはね」
「マジかよ」
軍平はそれを効いても信じていない顔であった。
「あの親父がねえ」
「何か全然信じてない顔ね」
「まあな」
そしてそれを否定しないのであった。
「だってよ。あんなもう碌に髪の毛もねえ頭でよ」
「だからあんたも同じ頭してるんだけれど」
「うっ・・・・・・」
同じ頭という今の言葉には詰まってしまったのだった。
「ま、まあそれはいいとしてだよ」
「誰だって若い時はあるわよ」
お母さんの言葉は続く。
「だから。お父さんだってね」
「ギターやってたってわけか」
「そうよ。ただね」
「ただ?」
「あんたみたいな曲は奏でてなかったわ」
こう軍平に話したのであった。
「あんたみたいなのはね」
「っていうとどんな曲なんだよ」
「チェッカーズとかね。あとBOOWYとかTUBEとか」
「ああ、ああいうのね」
美智代はそれを聞いて考える顔になった。
「ああいう感じの曲ね」
「そうよ。てっきりフォークだとでも思った」
「ええ、まあ」
「感じでな」
美智代も軍平も実はそう思っていたのだった。このことは隠さなかった。
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