ファイアーエムブレム ~神々の系譜~
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第二章 終わらせし者と月の女神
第七話
セレーネという少女は、呪文の才能があった。それも天才的なと言ってもいいほどの物だった。マージ、プリーストという魔法を司る者たちは、本が主で杖が補助もしくは逆のパターンで魔法というものを扱かった。つまりどちらかが欠けている状態ということもとこのセレーネという少女は少し気色が違った。両方ともが得意にして、どのようなものでも取り扱うことができていた。勿論彼女が最高ランクの物を扱ったことはなかったため、全てかどうかでは定かではないが。
「ブラギの塔には、私の護衛の中でも腕の立つ者達を連れて行きなさい。あとこれ、これだけあればブラギの塔ぐらいまでなら余裕でもつわ」
そういって手渡されたのは、一庶民の5ヶ月分の給金より少し多いくらいのお金。それを、渡されたセレーネは心苦しい表情をそのお金を手渡した少女に向けた。
「そんな顔はやめなさい。あなたは、私が認める数少ない友人の一人よ。そのくらいどうってことないわ。ほら、早く行きなさい。そして、とにかく無事に帰ってくるのよ。部下にも命懸けで守らせるから」
「本当にありがとう。この恩は絶対に忘れない」
「はいはい、困った時は助けてもらうことにするわ」
別れの挨拶を交わし、セレーネは友の元から去っていった。
「でも、よろしかったのですか? きっと彼女に纏わりつく因縁は、深い暗闇。お嬢様も巻き込まれてしまうのではないでしょうか、わたくしめは、心配でなりません」
「いいのよ、モウヒル。いずれ私はその暗闇と関わることになる。それが少し早まるかもしれないってことだけよ」
「お嬢様、それはいつもの感というものですか?」
「それもあるわ。でも、私は本当に彼女のことを友人だと思ってるからね。どちらかと言えばそっちの方が比重は高いわ」
それは、セレーネの父が殺され、早二日。少しでも早く行きたいというセレーネの希望を叶えるために一人の少女が手伝った。
所代わり、エルトシャンが治めることとなったノディオンにてロキもまた、旅立ちの準備を進めていた。
剣、魔道書、杖、傷薬、お金。必要なものは自分で全て調達することができた。しかし、まぁ問題があるとすれば、お供の者を決めていないという所だ。兄の兵士となるクロスナイツから腕の立つ者を連れて行けと言われたけれども、それは丁重に断った。
主な理由としては、まずこんな時こそ国の内外に向けての一種の威嚇として、兵士は一人でも多く必要だということ。それに、今回の旅はなるべく隠密且つ穏便にことを進めたかったのだ。クロスナイツの者達のほとんどは精強であるし、身を守るための護衛には申し分もないが、隠密となると少し難しい所があったためだった。
こんな時は、嫌でも自分の無力さを感じる。既に何回も転生したけれど、自分のスペックさえ良ければすべてがうまく通るなんてことはほぼなかった。如何にして、世を渡っていくのかやはり欠かせないのはお金に間違いはない。しかも、他人からのお金ではなく、自分で考えて自分で行動して得た自分のためだけのお金。しかも莫大なというのも付け加えておこう。
お金さえあればある程度人間は雇うことができる。でもどの人生でもそのお金を得るということは簡単ではなく地道に働いても目標の金額に達成するのに相当の期間を費やした。そこで近年俺がよく使っていたのは賭博の元請けというなんともおいしい所だった。元手となる資金を集めるのは苦労するがそれさえ終わればあとは、きちんとした計画を立て実行。それだけで莫大なお金が動き、元請けの俺は儲かるという算段だ。
では、この場において何が最も相応しい賭け事の対象なのかそれは闘技場に他ならなかった。仕組みは簡単、戦わせて勝ったほうにかけていた者が儲かり、負けた方にかけていた者がお金を奪われる。ただそれだけのことだ。
しかし、これを行うのは少し様子を見ることも必要だし、計画が十二分に用意出来ていない。これは、帰ってきてからの課題というわけだ。
ともあれ、お供をどうするかという事については、一つ俺には案があった。先ほどの話題に出ていた闘技場に今から行ってみるつもりだ。なんでも、凄腕の剣士がいるらしい。
「ソール、どうもお前にお客さんらしいぞ」
「誰だ?」
「なんでも、相当なお偉いさんだってよ」
赤い髪を長く伸ばし、長い片刃の剣を肩から背負いどこか憂いた表情を持つ青年。どこかこの暑くむさ苦しい闘技場とは似つかわしくない者ではあったが、その腕は本物で既にこのノディオン王国の闘技場では敵なし、連勝に次ぐ連勝。そろそろ、拠点を移すかとも考えていた。そんな中での来訪者だった。
「あなたが、ソールさんですか……」
「そういう、お前は子供だな」
どこか不思議な雰囲気を持つ子供だった。心の中で、妙にざわつく気配を感じた。
「単刀直入に言わせてもらいます。ぜひ、僕のお供として旅についてきていただきたい」
「俺に子供のお守をしろと?」
「そうです、僕の旅についてきて欲しい。それには、あなたのような実力者が欲しい」
「いくらか聞きたい」
対する子供も、顔をにこやかにしどうぞと答えた
「まず、目的地は?」
「ブラギの塔です。ここからだと、近からずとも遠からずといった所でしょうか」
「いくらだす?」
「うーん。いくらでもと言いたいところですけど、生憎と動かせるお金が大きくないものでできたら10000で手を打って頂きたい。もちろん、旅費等はこちらで出します」
うまい話しだ。高々、護衛程度で10000Gもくれ、旅費もでる。なかなかどうしてうますぎる。
「条件は満足だ。だが、裏があるんだろう?」
子供は、それを聞くと少しだけ微笑んだ気がした。
「裏……、まぁ得てしてそういうならきっと僕を狙う奴らは一筋縄では行かないものが多いというが理由の一つですが……」
「お前が高貴な身分だということも理由の一つか?」
「それもありますね」
「わかった。いいだろう、丁度この闘技場にも飽きていたところだ」
「ありがとう。では、改めて自己紹介を」
身に纏うマントを翻し、少年は少し大人びた表情を見せた。
「私はノディオン国王子ロキ。どうかよろしく」
こうして、俺とロキの奇妙な旅が始まることになった。
「という訳で、旅にでます!」
「何を言い出すのかと思えば、そんなのダメに決まってるじゃない。父上が亡くなったばかりで、お母様も深く滅入ってるのよ! 許さないわ!」
「しかし! 兄上からも許可ももらっていますし。それにある程度の準備も進めてます。これは既に決定事項です!」
「ふんっ! わかったわ、行きなさい! でも金輪際、姉弟とは思わないから!」
ラケシスは、表情を歪め部屋から出て行ってしまった。其処に残ったのは、ラケシスとロキの母とこの国の大臣であるメウス。それに話の中心人物たるロキその人だった。
「にわかには、信じがたい話しですが証拠たるものが複数あるのであれば信じないわけも……」
「ロキ……、よく聞きなさい。きっと貴方が旅に出るというのだからどんな理由があったとしても行かなければいけないと決めているのよね。貴方は、エルトシャンともラケシスとも似てない頭の良さがある。気をつけて行きなさい。母は帰りを待っていますよ」
メウスも母も、納得してくれたようだ。ロキはホッと胸をなで下ろすと部屋から退出した。
「国母様、よろしかったのでしょうか? ロキ様は才能有り余る方ですが旅に出るとは突飛なことです。普段のあの方からは考えられない」
「いいのです。きっとこれからこの国は困難に立たされます。そうなっていない今の内に我が儘の一つも叶えさせてあげましょう。それにラケシスも納得してくれているでしょう」
「そうは見えませんでしたが……」
「私には分かります。ラケシスは、根は優しい子だから態度は悪くても本心は心配してああなっているだけです」
目指すは、ブラギの塔。そこで何が起こるかロキにさえもまだわからなかった。
後書き
久々の更新です。聖戦の系譜を久々にプレイして、改めて思います。親世代の悲惨さってファイアーエムブレムシリーズの中でも断トツだと
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