戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十四章 幕間劇
武器の手入れ
「あ、どうもです。一真様」
「やあ、こんにちは。ここは森一家の陣か」
「ええ。お頭やお嬢にご用ですか?」
ふむ。小谷城のあちこちに色んな部隊が間借りさせてもらっているようだけど。この辺りは、森一家に割り当てられてるのか。
「特に用はないけど、小夜叉たちはいんの?」
森一家といえば、騒がしいしな。ちなみに森衆の者たちは、俺のことは様付で敬語になっている。初めて会ったときに、小夜叉や桐琴に勝ってしまったからなのか、それとも俺が神なのか。俺以外の一真隊の者とかは、語尾に「っす」とからしいけどね。
「やけに静かだが、出かけてるのか?」
大戦の前に、肩慣らしとしてこの辺りにいる鬼の巣をぶっ潰してるとか。あり得そうだけど、今のところそういう報告はもらっていない。トレミーに反応があれば行くけど。しかも評定とかはすっぽかして、鬼退治に行くような人たちだし。隊の実務的なところは全部各務に丸投げしてるし。
「いえ。お嬢でしたら、お頭と一緒に奥にいるはずですが」
「あ、いるんだ」
しばらく歩いていると、ここらへんにいるとさっきの森の者が言ってたが。もしかして、あの中かな。小屋というより、小さめの邸宅のようなのだけど。ここにいるのかな。明かり取りの窓から中を覗けば、そこには何か作業をしている小夜叉と桐琴の姿が。
「おーい。いるかー?」
「お、なんだ。一真じゃねえか、どうしたんだ?」
「暇だから遊びに来た」
「そうかそうか。なら、入れ入れ」
と言って入ったけどな、普通ならこの二人を見たら悪い顔をしながら何かをしているからと二度見をするんだったか。
「声で分かったけど、一真が来たぞ。母」
「おう、よく来たな。まあ座れや」
「で、二人は何してんだ?手入れか」
「そうだぜ、一真。こいつの手入れをしていた」
「手入れは自分でやるものだもんな。あれか、武具は武士の魂だから、日頃から手入れをしないといけないとか」
「当たり前だ」
まあ、俺のは聖剣エクスカリバーだしな。今は擬態で刀にしているけど、手入れなんて一度もしたことないな。
「兵の身体をぶった切る時に首の骨や背骨で止まってもつまらんしな」
「そうそう!」
「だなぁ」
「っつーか。穂先だってちゃんと手入れしてやらねえと、すぐ血糊で錆びちまうしな」
「うむ。まったくだ」
まあ、森一家はいつも帰ってくる時は返り血浴びながらだったもんな。だからか、常に日頃から手入れをしないとダメということなのか。
「で、一真のはちゃんと手入れしてあるのか?」
「俺の?いやしてない。手入れしなくても、いいように出来ているから」
「ほう。それはそれで便利だな。見せてもらってもいいか?」
「まあいいけど。俺以外の者が触ると俺の手に戻ってくるようにしてあるからな」
言って、空間から出したけどね。で、鞘から抜くといつでも準備OKみたいな感じで、光輝いていたけど。
「光輝くとはさすがは神といったところか」
「持ち手を選ぶからな。こいつは。手入れといえばこれの手入れをするんだったから、ここでしていいか?」
「んー?ああ、鉄砲か。構わんぞ」
と言ったので、さっそく手入れを開始したけど。
「母。ちょっとそこの布取ってくれ」
「布くらい手元に置いておけ。ほらよ」
「うっせーな。あんがと」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
やり取りする口調は相変わらずだけど、手入れをする動作は真剣だ。まあ、俺も事故らないように、丁寧にやってるけどね。いつもは部下に任せるがたまには自分でやらなければな。全力投球で敵をぶっ殺す事しか考えてないような二人だが、武器の手入れをしてるときのほうが少し怖いという者もいる。特に姿勢とかがね、普通ならビビるところだけど俺はあまりビビらないね。自分より上の覇気と殺気があればの話だけどね。
「二人とも。この先の戦い、生き残れよ」
「ふっ・・・・」
「こんなところで死んじまったら、それ以上殺せねえし」
「うむ。まあ、一真は死んでも蘇ると思うが」
「そーだな、たとえ瀕死の状態になっても生き返ると思うぞ」
「まあな。瀕死になったらこれを飲めば回復するし」
言って内ポケットからエリクサーを出した。錬金術の粋を集めた奇跡の霊薬。別名「生命の水」。製法はおろか、実在さえ確認されていない伝説級の秘薬。死者さえも蘇えらせるとされる。これは創造の力で創ったものだしな、あとはフェニックスの涙改もあるけど。
「その前に小夜叉が俺の背中を守ってくれるんだろう?」
「たりめーだ。鬼なんぞに指一本でも触れさせるかよ」
「うむ。ゆくゆくは小夜叉の恋人にもなってもらわねばならんからな。がはははは」
「ば・・・・っ!何言ってんだ、母ぁ!」
今日は珍しく小夜叉が赤くなってるな。
「ははは。このガキ、この間の殿の話を聞いてから色気付きおってな。事あるごとに、オレは一真の恋人になれるのかなどと聞いてくるのだぞ?」
「へえー、そうなんだ」
「テメ、そんなこと一言も言ってねーっ!死なすぞコラ!」
「でも、この前は子供増やすのなんか犬でも虫でもやってるからと」
「い、犬や虫はガキは作っても祝言挙げたりはしねえだろうが!」
「・・・・祝言か」
「・・・・・・・・ッ!」
小夜叉いらんこと言ったな。桐琴がなにをいうのやら。
「そうか。確かに森家に一真を迎えるなら、祝言の一つも挙げねば格好が付かんな」
「ば、ばばばばばばばばっ!」
「確かにそれは考えなんだな。ふむ」
「てめぇーっ!それ以上何か言ってみやがれ!どうなるか分かってンだろうな!」
「ほほぅ。祝言を挙げるかどうかは、森家棟梁たるワシの胸一つにかかっておるわけだが?」
「ぐ・・・・・・・っ!」
桐琴が珍しく権力使ったな。
「挙げたいのであろう、祝言」
「う、うぅ・・・・・・・」
「ワシがうんと言えば、一真との祝言、すぐにとりまとめてやっても構わんのだぞ・・・?」
「ぐぐぐ・・・・テメェ・・・・・っ!」
「桐琴、その辺にしてやれば?」
「ははは。恋人候補がそう言うなら仕方がないな。今日はこの位にしておくか」
「一真・・・・・」
やれやれだな。桐琴はからかっているようだけど、小夜叉はそこらへんに転がっている刃物に切られるぞ。
「祝言といえば、桐琴はどうなんだ?」
「ワシか。そうじゃのう、初めて会ったときから気が合う者同士だとは思っていたが、ワシもアリかの」
「アリなんじゃねえの。まあ、二人纏めて妻に迎えても俺はいいと思うが」
「ほう。ならば、ワシも進言しよう。ワシも一真の恋人になるとな。いずれは妻になっても良いがな。あとクソガキの事はどう思っておる?」
「ば・・・・っ!それ以上・・・・・」
「桐琴もだが、小夜叉もいいぞ。凄く嬉しいし」
「・・・・・っ!!!」
「はははそうか!ならば決まりだな!ワシもだがな」
「テ、テメェーーーーーーーーーーッ!」
とまあ、祝言の話で盛り上がってしまったけど。そうかぁ。小夜叉もだが桐琴もか。
「・・・・母。油・・・」
「・・・・・おう」
さっきの騒ぎのせいか、小夜叉が喋んなくなってしまったが。まあいいとして、俺の拳銃もやんねえとなと思いつつ銃身を拭くと真っ黒だなとな。
「でええええええええっ!」
「てやあああああああああああああっ!」
「ん?外で誰か戦ってるのか」
森親子の沈黙の時間を打ち破ったのは、鋭い掛け声とともに何かの金属音が聞こえた。俺はちょうど終えたハンドガンをホルスターにしまって、道具を空間にしまいゴミはゴミでトレミーのところに突っ込んだ。
「クソガキ!」
「おうよ!」
「俺も!」
三人で部屋を飛び出すと、誰かが仕合をしていた。
「やるじゃない!綾那!」
「お市様もなかなかなのです!」
「市に綾那か」
そこで拳と槍を交えていたのは、この二人だった。
「なら、いっくよーっ!」
「負けないのですよ!」
どっちも本気モードだな。二人とも小細工なしで正面からぶつかるタイプだったな。ところでなんでこの二人が戦っているんだろう?
「テメェら・・・・・くそっ、オレも人間無骨がありゃあ混ざるのに・・・・」
槍はまだ手入れ中だしな。流石の小夜叉も、使い慣れていない槍や素手じゃ100%力出せないだろうし。綾那と市が相手ではなおさらだな。
「放っておくか。ねえ桐琴?」
「そうだな。ガキがじゃれてるだけだ」
まあ、普通ならガチでやり合っているから止めるけどな。俺みたいだと、普通に放っておくか、介入するかのどちらかだな。で、決着はついたようだけどね。互いの目の前で拳が止まっていたから。
「あ、お母さん!」
「桐琴さん、小夜叉、久しぶりー!お兄ちゃんも来てたんだ!」
「まあな」
気付いていたら、やめてただろうが。綾那みたいな達人レベルとやると、周りが見えなくなるらしいが。俺は、周りにいたら止めるけど。怪我でもしたら、大変だし。
「久しぶりだな、お市様」
「やれやれ。遊び終わったのならお前らもさっさと入れ」
「はーい」
「わかったのです!」
まあ、俺からすれば遊びだけど。現代からすれば、銃刀法違反で逮捕になるが。
「二人とも、桐琴たちに会いに来たのか?」
「そうなのです」
「だって、桐琴さんと小夜叉が来てるって聞いたからさ。久しぶりにゆっくり話がしたいなーって思って」
市は織田家出身だから、桐琴とも面識あるもんな。
「で、なんで二人でやり合ってたの?」
「何か気になってたんだよねー。三河武士ってすっごく強いって聞いたからさ」
「何かいきなり殴りかかって来たから、応戦したのです」
どこかで聞いたことがあるパターンだ。
「お兄ちゃん以来だったから、けっこう楽しかったー!」
「綾那も楽しかったのですよ!近江武士にもなかなか骨のある奴がいるのです!」
俺以来ねー。確かにあの時からやってないけど。
「市はもともと織田家だぞ、綾那」
「え?尾張の兵は弱卒ばかりと聞いていたですが・・・」
「そんな事ないよ。だって小夜叉達も尾わ・・・・」
「オレ達は美濃出身だぞ。尾張の弱卒なんかと一緒にすんじゃねえよ。なあ母」
「うむ」
「・・・・・うーん。やっぱり弱いのかなぁ」
「弱いと思う。俺が相手しても、すぐ終わるし」
「確かにな。壬月はまあまあだけど、他はオレの相手にならねーし」
綾那が黙ってしまったな。どうしたのだろうかと聞くと市が結婚していることだったみたいだが。
「そうか・・・・お市様は祝言を挙げているのか・・・・」
「そりゃ挙げたよー。・・・・あれ?小夜叉、市の祝言に来てなかったっけ?」
「何かめんどくさそうだったからな。森家からは各務が行ってたはずだぞ。なあ母」
「ワシは行ったが?」
「ちょっ、マジか!?」
「そういえばそうだっけ・・・・?小夜叉も来ればよかったのに」
「うぅぅ・・・・・」
「参考になったやもしれんのにな」
「テ、テメェ・・・・!」
「にゃ?小夜叉も祝言挙げるですか?」
「挙げるわけねーだろバカか!」
市の祝言呼んでほしかったと言ってたが葵が来てたんだと。そのお供で来てたのではと聞かれると、覚えてないそうだと。
「で、小夜叉は綾那を祝言に呼んでくれるですか?」
「だからそんな予定ねーって言ってるだろ馬鹿か!」
「むぅ・・・。綾那が祝言を挙げる時には呼ぼうと思ってたのですが」
「・・・・い、いるのか!?相手」
「いないですよ。でも、綾那は本多家の当主ですから、いずれは婿取りもしなくちゃダメなのです。お母さんも呼んであげるですよ」
「ふむ。なら楽しみにしておいてやるか。・・・・負けておれんな、クソガキ」
「だ・・・・っ、誰が!!!」
言いながら市は綾那の祝言の時は行くそうだ。ところで、今更だが祝言ってなんだと思いスマホで調べたら結婚式だそうだ。で、綾那は小夜叉が祝言の時に呼ぶかと聞かれていたが、呼ぶそうだ。市は無論だと。
「ワシと一真はどうじゃ」
「・・・・・・っ!」
「桐琴は棟梁なんだから出なきゃダメでしょ」
分かっていて言ってるよな、絶対。
「そうじゃな。なら、一真はどうじゃ?」
小夜叉は予想通りキレたけどね。で、市は桐琴にやらないかと言ってたけど。ようやく脱線した話をもとに戻したけどね。もちろん武器の手入れは終わっていないと。で、四人で武器の手入れを始めてた。俺はもう終わったから、暇つぶしに刀を出していろいろと擬態で形を変えたけど。市の武器であるのは、ひよがお土産に買ってきた物らしいがお気に入りらしい。
「そういうの、手持ちの武器って不便だよねー。その点、市は殴るから安心だよ!」
「俺の武器もな。俺のは手入れしなくても一刀両断できる斬れ味を持っているからな。あとこの銃もな。近距離から中距離攻撃ならな」
「そういうのはうらやましいです」
すると、小夜叉は拳より槍の方がいいんだと。人間無骨で串刺しのほうが好きとか。十人纏めて串刺しか。俺のも出来るけどね。あと綾那も市も自然に森親子の会話についていけてるな。
「よし出来た!このくらい研げりゃ、五十匹は余裕だな!」
「小夜叉が五十匹なら、市は何匹にしよっかなー」
「オレは五十匹が余裕って言っただけだからな?本気だしゃ、もう二十匹や三十匹・・・」
「黙れクソガキ」
「お、おう・・・」
桐琴が怒るのはしゃあないことだ。それを言ってる時点で油断しているからな、せめて百匹くらい狩らないとな。
「十匹だの二十匹だのくだらん。せめて百は狩ってみせい!」
「あ、当たり前だ!百匹でも二百匹でも・・・・」
「綾那は千匹狩ってみせるですよ!」
「じゃあ市は一万匹!」
「ぐぬぬ・・・」
「ははは。クソガキもそのくらい吹いてみせい!」
まあ、これからの戦は鬼退治だしな。俺は本気を出したらこの国ごと破壊しちゃうから加減しないといけない。創造神だけど、創造から破壊と再生とかだし。で、何か知らんが三人の内どっちが一番強いか戦うようだけど。
「桐琴もいいが、ここは俺に任せろ。年長者の手本って奴を見せておくが、桐琴も参戦するか?」
「無論だ!一真と戦えるのも、あまりないからな」
と小夜叉と市と綾那は、俺を守ると言い出し始めたから、一番を決めないとか言い出し始めたが。
「おい!勝手に俺が弱いと思ってんじゃねえぞ!ガキども!!!」
「ははは。楽しくなりそうだな、一真」
とか言いながら乗り気だな、おい。
「とりあえず、市は眞琴を守らないとダメだろう。あと綾那もだ、お前は葵を守らなければダメだろう」
「ということは、やっぱしオレが一真を守る事か。いいよな、母」
「構わんぞ」
余裕ぶるのも今の内しかないと思うし。桐琴は、一乗谷の手柄は全部もらうとかいってたな。で、全員手入れが終わった所で実戦に行くんだと。俺はやることがあるから行かなかったけどな。それと、森一家の陣地が静かだったのは、偵察しに行った兵が出払っていたらしい。
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