| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百二話 教会にてその五

「残念です」
「ですが命はです」
「はい、助かりました」
「今の一撃を受けていれば」
「終わっていました」
 闘いだけではない、大石の命もだというのだ。
「完全に」
「そうでしたね」
「そうでした、しかし」
「靴の裏をなくしただけで済みました」
 これで、というのだ。
「そう思って下さい」
「プラス思考ですね」80
「そうです、今の一撃でも助かりましたので」
「よしとすべきかと」
「そうですか」
「少なくともダメージも受けていません」 
 靴の裏、それを失っただけでというのだ。
「ですから」
「はい、闘います」
 大石もこう聡美に言葉を返した。
「そうさせてもらいます」
「それでは」
「さて、どうするべきか」
 大石は一旦後ろに戻った、着地して怪物と再び正対してだ、そのうえで怪物の攻撃がまた来たのを観た。
「ここは」
「それでもですね」
「はい、勝ちます」
 必ずという口調での言葉だった。
「そうします」
「それではですね」
「勝ちますので」
 こう言ってだ、そしてだった。 
 大石は再び怪物と対峙した、その彼に対して。
 エキドナは今度は自分からだった、一気に。 
 間合いを詰めてきた、そうして。
 まずはその蛇の尻尾を繰り出してきた、その一撃でだった。
 大石を吹き飛ばそうとする、その一撃に対して。
 大石はまた上に跳んだ、だが。
 エキドナはその大石に対して身体を伸ばしてきた、妖艶な美貌のその顔に凄みのある笑みを浮かべてだった。
 爪を立ててきた、今度は人間のそれでだった。
 空中の大石を引き裂こうとする、その右手の五本の爪が。
 大石の神父の服を左斜め下から右斜め上に切り裂いた、急所は身体をのけぞらしてかわした。だがその切り口とだ。
 切り口が瞬時に焦げていくのを見てだ、彼はわかった。
「毒、ですか」
「エキドナは蝮です」
 今度は声が言ってきた。
「蝮の女です」
「そうした意味の名前ですね」
「はい、ですから」
「だからですね」
「エキドナには毒があります」
 そうだというのだ。
「それも相当な毒が」
「ヒュドラーやケルベロスの毒も」
 ここでだ、大石はわかったのだった。
「遺伝ですか」
「そうです、テューポーンも然り」
 テューポーンの頭は普通の頭ではない、百の竜の頭が人間のものがある筈のそこに生えているのだ。その竜の頭もだというのだ。
「毒があります」
「つまりケルベロス達の毒は」
「親から受け継いだものです」
 テューポーン、そしてだった。
「エキドナからも」
「だからですね」
「そうです、エキドナにもまた毒があります」
「しかもこの毒は」
「ケルベロスやヒュドラーのもの以上です」
 母であるだけにだった、彼等の。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧