万華鏡
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第七十四話 冬化粧その五
「相当に強いんだよ」
「そうなのね、あそこね」
「さっきパ・リーグの状況みたらロッテ強いから」
「じゃあ去年みたいに?」
シリーズの相手はロッテかとだ、琴乃は弟に問うた。
「あのカードになるの?」
「かもね、まあロッテが出て来てもさ」
「その阪神なら勝てるわよね」
「絶対に大丈夫だよ」
勝てるというのだ。
「このダイナマイト打線は止められないから」
「最強の打線ね」
「控えも凄いし」
「どんな選手いるの?」
「藤村さん入れたよ」
初代ミスタータイガースである、背番号十は永久欠番だ。
「あの人も」
「ああ、伝説の」
「そう、物干し竿バットの」
藤村の持っていたバットだ、とにかく長かった。尚あぶさんのバットはこのバットがモデルになったという説がある。
「あの人も入れたから」
「その人レギュラーにしたらよかったんじゃないの?」
「いや、掛布さん好きだから俺」
その掛布の打席だった、左打席にいる。
「藤村さんは控えだよ」
「そうなのね」
「あと遠井さんもいるし」
「仏の吾郎さんね」
この選手も伝説の名選手だ、その人柄は今も伝えられてファン達の中で愛されている。
「あの人ね」
「平田さんに新庄さんもいるし。和田監督もね」
「あっ、現役時代の」
「そう、一杯入れたから」
「本当にドリームチームね」
「このチームに勝てるかよ」
にやりと笑って言った弟だった。
「全勝してやるよ」
「目指すものは高いわね」
「この阪神ならやれる、絶対にやるよ」
「まあ頑張ってね。さてと」
まだ飲んでいるがだ、その酒の残りを見てここではこう言った。
「飲み終わったらお昼まで寝ていようかしら」
「何だよ、ゲームしないのかよ」
「何か飲んでね」
そうしてだ、どうなったかというのだ。
「眠くなってきたわ」
「何だよ、お酒飲んでかよ」
「ちょっとね、お風呂も入ったから」
「それでか」
「そう、じゃあ飲み終わったらね」
「そう言ってももうすぐだぜお昼」
弟は試合にタイムをかけてから壁の時計を見て琴乃に言った。見れば時計の針は十二時になろうとしていた。
「あと少しでさ」
「お母さんがあがったら」
「お昼だよ」
「そうね、それじゃあね」
「寝るのはあれだろ」
「ええ、じゃあここにいるわ」
飲みつつ言う琴乃だった、既にその顔は真っ赤である。
「それじゃあね」
「しかし姉ちゃん本当に酒好きになったよな」
弟は姉に今度はこんなことを言った。
「高校に入ってから」
「まあそうね、確かに」
「ちょっと前までジュースとかお茶ばかり飲んでたのにな」
「変わるのよ、これが」
「お酒飲んだらかよ」
「そう、お酒って美味しいから」
だからだとだ、飲みつつ言う琴乃だった。酒の量はかなり減っているがそれでもコップに酒を注いで飲み続けている。
「あんたもわかるわよ」
「飲める様になったらか」
「そう、その時にね」
「そうなんだな。俺もか」
「お酒っていっても色々だけれどね」
今は日本酒を飲んでいるが他の酒もというのだ。
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